6 君と同じような境遇なのかもしれないね。
駆け足で、私たちは学校を出ました。一言も喋らないまま、私たちは駅に着きました。デパートの前につくと、私は困惑している彼の手を離しました。
「二十分後までに、花屋で黄色い花を買ってここにきて。買える分だけ。代金は後でもらえるから、できるだけ綺麗な花束をね。しばらく待ってて、着替えて迎えに来るから」
「着替えて?」
「そう、いろいろ質問はあると思うけど、もう何も聞かないで。上崎君の願いを叶えたいのならね」
そういうと、彼はだまって静かに頷きました。私も頷きかえすと、急いで本社に赴きました。さっさと着替えて、五分ほどで伝達室に着きました。いつものように、にこにこと七十二番さんが出迎えてくれましたが、私の真剣な表情に、さっと微笑みを消しました。
「こんにちは、七十二番さん。スカウトしてきたんです、館長にお会いできますか」
七十二番さんは「連絡をします」とだけ言い、すぐに部屋の奥の電話に向かいました。二言三言話すと、彼女は戻ってきて頷きました。
「大丈夫だそうです。迎えには四番さんが行きますか?」
「ありがとうございます。今、外に待たせているんです」
「無事、スカウト成功するといいですね」
私は「はい」と元気よく返事をすると、広間へと走りました。私が入ると、すでに館長室の扉は開いていました。スポットライトが追えないほどの早さで走り抜け、館長の前に行きました。
「いい人が見つかったの」
機械を介した館長の声が響きました。今日は、少女のような声でした。あがる息を懸命におさえつけながら、私は端的に述べました。
「私の同級生です。名前は上崎優斗、男性です。彼は勉強家です。頭がいいために、スカウトできるのではないかと接触を続けましたところ、彼が殺人を企てていることが判明し、連れてきた次第です」
「なるほど。殺人をする意思は固いんだね」
確認するように、館長は言いました。
「今のところは」
「そう」
館長はそう言うと、少し苦笑したようでした。機械を介した声が苦笑し、目の前の館長が小さく顔を左に傾けます。
「君と同じような境遇なのかもしれないね。詳細は私から説明すればいいんだね」
「はい、お願いします」
「了解。連れておいで」
「すぐに」
私は頭を思いきり下げると、すぐに来た道を戻りました。ジャージにゴーグルという不可思議な恰好のまま、デパートを出て、彼を迎えに行きました。
上崎君は、しっかりと黄色い花束を抱えて待っていました。後ろから声をかけると、彼はびくっと大げさなほどに肩を揺らしました。
「お待たせ」
話しかけると、彼は私が誰だかすぐには分からないようでした。眉間にめいっぱいしわを寄せたまま、こちらを凝視してきます。髪型も、恰好も違う上に目元が見えないのですから、仕方の無い反応です。
「行こう。社長が待ってる」
社長という言葉に、彼は少しだけ表情を硬くしました。エスカレーターで最上階に上がり、壁をすり抜けて入社する際、彼は何も質問をしてきませんでした。とても助かります。やはり彼は頭がいいのだと思いました。




