1 人が死ぬことは大きな終わりである」
「人が生まれることは大きな始まりであり、人が死ぬことは大きな終わりである」
私の大好きな人が、いつか私にそう言いました。彼の口元は、いつものようにうっすらと笑っていました。私はその口元を見て、少しだけ自分の体温が上昇したのを覚えています。
「私たちはね、ヨーちゃん、この大きな始まりや、大きな終わりに、深く関わってしまったのです。ですから、生死をただの始まり、ただの終わりのひとつとして、受け入れてしまうでしょう? みんなそうだと思ったら、大間違いですよ。
大概の人は、人の生死を普段は忘れてしまっているのです。死を意識することは困難なのです。ですから、人の生死はとんでもなく大きな、ショッキングな出来事なのですよ」
彼、イチサンに言われて初めて、私はそうだったのか、と知ったのです。
あなたも、普段は死を意識せずに生きているのですか?
そうだ、というのなら、きっとその方が生きやすいと思います。
違う、死を常に意識している、というのなら、これはスカウトになってしまいますが、私と共に働きませんか。あなたにぴったりの職場があります。黒路映画館、という会社です。
黒路映画館は、あなたの能力を最大限に生かした仕事を提供してくれます。加えて、報酬もお金だけでなく、あなたが望むものをくれるのです。
少しでも興味を持ったのなら、今すぐ入社試験を受けてみてください。入社試験までたどりつく方法は、以下の通りです。
あなたの知っている駅の中で、大きなデパートがある駅に、いつでもかまいませんので行ってください。
そして、デパートの入り口の前で、黄色い花束を抱えて、最長で二時間ほど待っていてください。
あなたの運が良ければ、誰かに「待ち合わせですか」と話しかけられるはずです。話しかけられなければ、その駅はハズレです。
話しかけられたら、「映画を見る約束があるのです」と答えてください。
黒路映画館に案内されると思います。
あとは、案内人に任せてください。面接が始まります。
補足ですが、自分のしたいことが見つかっていない人や、自分の信念、つまりは正義が無い人は、働くことができません。ご注意ください。
多分、死を常に意識しているような人は、きっと自分のしたいことがあって、自分の正義もはっきりしていると思います。
イチサンが、そう言っていました。
ですから、私もそう思います。




