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3  「正義に例外は認めない。例外ができたとき、今までの行いは全て、エゴイズムになりさがる」

 この会社では、自分の信念や正義が無いといけない、という話をしたと思います。


 館長は、正義という言葉が大好きです。そしてその意味は多様だと、私が入社したときにおっしゃっていました。


「正義の形は決まっていない。おかしな正義など存在しない。だから、君の正義も、私は否定をしない」


 その時の声は、今日の館長の声よりもさらに凛とした女性の声でした。


「私はたくさんの正義を見たい。君の正義を私に見せてくれ。

 私の望みはそれだけだ。その始まりを、その経過を、その最後を、私は見たい。そのためになら何を費やしてもかまわない。

 私は、君たちが望む正義を貫けるよう、手助けをしてあげる。邪魔なものから、守ってあげる」


 法律や、年齢や、そういうものを意識せに、私は私の正義を実行することができます。それは、全て館長のおかげなのです。


「正義に例外は認めない。例外ができたとき、今までの行いは全て、エゴイズムになりさがる」


 館長は私にそう警告しましたが、当時十歳の私には、エゴイズムという言葉を理解することができませんでした。

 眉をひそめて黙っていると、ああ、と凛とした声は少し笑い、ごめんごめんと謝りました。


「難しい言葉だったね。エゴイズム……そうだな、自分勝手、という意味だよ」


 エゴイズム。私は口の中でもごもごと呟きました。


「犯人を殺したい、というのはエゴイズムではありませんか」


 泣きながら、十歳の私は言いました。館長はうーん、と困ったようにうなりました。今考えれば、館長があのように言い淀むのは、とても珍しいことです。


「その答えを、私も探しているような気がする。雅あんず。

 この世界にはね、答えの出ない問題がごろごろと転がっているんだ。そういう問題にこそ、面と向かってつきあわなければならない。

 私は日々、正義と自分勝手の関係性について考えている。今、私が持っている答えでしかないが」


 仮面が、右に傾きました。


「自分勝手を貫けば正義になるんだ。その自分勝手がぶれるのだとしたら、それは私の理想とする正義ではない。自分の信念を持って、命をかけて、君自身の自分勝手を貫いてほしいんだ」


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