3 その人こそ、黒路映画館の館長様です。
古い映画に出てきそうな音を立てて開いた扉の入り口に、私とイチサンは向かいました。
部屋は、真っ暗で何も見えません。足を踏み入れた瞬間、私たちをまばゆいスポットライトが照らしました。ゴーグルをつけていてもなおまぶしいその光に、私は目を細めます。
イチサンは、私の隣で、私の歩幅に合わせてゆっくりと進んでくれました。私も、いつもより少しだけ大股で前に進みます。
照らされた足元には赤いカーペットがひいてあります。広間の床よりも鮮やかな、赤い道を歩いていきます。
大股で十五歩ほどまっすぐ進むと、階段が見えました。三段しかないその階段の上に、大きな椅子が置かれています。スポットライトが、その椅子に座っている人を照らしました。
その人こそ、黒路映画館の館長様です。名前は知りません。番号もありません。社員は皆、館長、と呼んでいます。
館長は、黒い布を体中に巻いています。足先から指先まですっぽりと黒い服で覆っているため、体型はおろか、手の大きさや足の大きさも推測することができません。噂によると、毎日微妙に大きさが異なっているそうです。
頭にも、シスターのように布をかぶせているため、髪の毛の色も不明です。
館長は、徹底して正体を隠しているのです。私は、館長が男なのか女なのかも知りません。
顔全体を隠す仮面が、スポットライトに照らされていました。
仮面の右目は、私の持っている仮面と同様、眠っているような目をしています。
左目には、大きな金色の花が埋め込まれており、花の左上にみっつ、右下にふたつ、ピンク色の丸い宝石が埋め込まれています。その宝石が花をつなぐ糸のようで、私はそのデザインがとても好きでした。まるで花の眼帯をしているように見えるのです。
口は、目と同じ形です。Uの字は、目元にあると眠っているように見えるのに、口元にあると笑っているように見えるため、不思議です。
綺麗な五枚花びらの下には、涙のペイントが施されていました。そのペイントは黒色です。
館長の仮面は、眠っているようでもあり、笑っているようでもあり、泣いているようでもあるのです。
表情が混在しているその仮面の向こうには、どのような人がいるのでしょうか。おそらく、私にとっては永遠の謎です。
館長の向こう側から、機械を介した女性の声が響き渡りました。先ほど、私たちに話しかけてきた声です。
「早い集合、感謝するよ」




