応接室にて②
登美子さんに履歴書を渡したが、特にバイトの面談らしきものはなかった。私は、卒業旅行で沖縄に行くことなどを話した。登美子さんは、北海道を出たことが1回しかなく、若いときに青森に観光に行ったことがあるだけだそうだ。しかもその当時は青函トンネルも開通しておらず、船で津軽海峡を越えたそうだ。
登美子さんからも、バイトの内容についての説明があった。内容は、玲子から聞いていたものとほぼ同じだった。本当に紅茶とコーヒーを淹れて、本当に時給2500円だった。
「さて、そろそろ準備を始めましょうか」
登美子さんが、そういって立ち上がりドアの方に向かった。
「私たちもいくわよ」
玲子がそう言って、立ち上がった。登美子さんは、ドアを開けて、私たちを待ってくれている。
キッチンは、1階にあるようで登美子さんは階段を降りていき、私と玲子もその後を着いていく。私は、階段を降りながらまたシャンデリアを見上げた。何度見ても大きいものは大きい。
「玲子、上のシャンデリア大きくてすっごく高そうだよね」
「アンピール様式だからね。豪華を競うものなの」
「なにそれ?吸血鬼と人間のハーフ?」
「それは、ダンピールよ。あなたの頭とかけまして、ビスマルク海海戦と解く、その心は?
「なぞなぞ?その心はなんなのよ!」
「どちらも悲劇よ」
「ごめん。もう意味が分からないんだけど。このシャンデリアはなんなの?」
「簡単にいうとフランスのナポレオンの時代のデザインよ。ナポレオンは分かるわよね?」
「当たり前でしょ。「余の辞書に不可能はない」っていった人でしょ」
「そうよ。あなたの辞書にも、常識の二文字はあったようね」
階段を降りたところで、登美子さんが振り返った。
「とても仲がよろしいのね。うらやましいわ」
どうやら会話の内容はすべて聞こえていたらしい。
キッチンに入ると、既にカップやポットが用意されていた。
「私が、引き継ぎを兼ねて、有沙に説明します」
玲子はそう言って、腕まくりをした。
「玲子さん、ありがとう。じゃあ、お願いしますね」
登美子さんは、そう言うとキッチンから出て行った。
「有沙、まずは手を洗いましょう。その後、お湯を沸かしましょう」
玲子が手を洗った後私も手を洗い準備にとりかかった。やかんに水を入れて、沸騰させる。そしてまずは、ポットやカップを温めておく。暖めたポットに紅茶はティースプーン一杯を入れる。
同時並行で、冷凍庫に保存してあるコーヒーの粉をメジャーカップに入れてコーヒーの準備もする。どちらも一杯分の用意でいいようだ。
沸騰したお湯を入れて、すぐにポットのふたをする。コーヒーは、カップについで運び、紅茶はポットに入れて運ぶのだそうだ。
紅茶とコーヒーの準備ができた。
「じゃあこのお盆にティーカップ、ポット、コーヒーを持ってね。ちなみにこの紅茶のカップとポットは、ウェッジウッドの特注品よ。卒業旅行2回分以上の値段だから、気をつけてね」
玲子は心配そうに私をのぞき込む。
明らかに私の緊張を誘うために言っているとしか思えなかった。こんな時にも私をからかう玲子か。この小悪魔め。
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