応接室にて③
玲子に連れられて2階の応接室に入った。私と玲子はソファーに座った。
「有沙、お疲れ様。これで一段落よ。あとは、5時半まで待機して、カップを下げにいって、キッチンで洗って、バイト代をもらって完了よ」
2時間のバイトのうち、1時間近くが待機ということになる。もちろん待機も時給は発生するようだ。
「そうなんだ。なんかすっごくおいしいバイトだね。このバイトって、文藝部の人が引き継いできたバイトなの」
登美子さんの反応が気になっていたので、有沙に聞いて見ることにした。
「そうよ。代々文藝部で引き継がれていたバイトのようよ。毎年OBとの懇親会の時、このバイト誰が引き継いでいるのか、という話題はでてくるわ」
「文藝部って歴史古そうだから、OBもたくさんいそうだね。どれくらい前からあるバイトなの」
「30年以上前のはずよ。30年前の文藝部の文集の中にこのバイトのことを題材にした作品があったし。その作品の中でも、代々引き継がれている、という記載があったから、もっと前からこのバイトはあったと思うわ」
私や有沙が生まれる前からあったようだ。
「そんな昔からあるバイトなんだ。あと、気になったんだけど、どうして紅茶とコーヒーを用意するの。大木さんがコーヒーを飲むのだろうなってことは分かったんだけど、机の反対側に紅茶を置くってことは、もう一人だれかがいるってことだよね」
「そうなのよ。あと1人、誰かいないと辻褄が合わないのよね。でも、あの紅茶が飲まれることはないらしいわ。少なくとも、私がこのバイトをしている間に、紅茶が飲まれているということは一度もなかったわ。その文藝部の文集にあった小説でも、その紅茶は飲まれないということになっていたわ」
「それってすごく不思議なことじゃない。その小説の中で紅茶が飲まれないのは、どうしてだったの」
「その小説では、狼人間の一族に伝わる古い儀式というのだったわ」
狼人間の儀式。それは突飛すぎるだろう。
「あと、文藝部ではその後も、このバイトを題材にしたものはあるわ。この屋敷を乗っ取る際に殺したイギリス人の魂を鎮めるために、その人が好んだ紅茶を毎日、供養の為に出しているとか」
館もののサスペンスなのかい。
雑談をしながら、時間が過ぎた。玲子がそろそろコップを下げに行きましょうと言ったので、私たちは席を立った。
1人で、待機するのは、暇を持て余しそうだ。明日からは、小説でも持ってこよう。
最後まで読んでくださってありがとうございます。




