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第九夜 最終話
二人は病院から琥珀が自分たちに宛てた手紙を受け取っていた。
その手紙には出会えて嬉しかった。有難う。そしてさようなら。そう書かれていた。
二人はその手紙を大事そうに抱えた。琥珀の両親は琥珀の遺体を引き取ることを拒否していた。
御影と千優は二人で話し合い両親も説得して
琥珀の遺体を引き取ると火葬して琥珀の墓をつくりそこに収めた。
二人は琥珀を忘れることはできないとそう囁きあった。
あんなにも穏やかで幸福に満ちた日々はなかったから。
ずっと一緒だよ。琥珀は最後にそう言った。
あの言葉を二人は大事に抱えて今を生きていく。
そして二人は結婚することを決めた。
二人の間には子供ができていた。
その妊娠がわかったのは琥珀が死んでから一年後の琥珀の命日だった。
二人は涙した。嬉しくて。そして囁く。その小さき命に
「おかえり」
それは琥珀が祈った祈りが届いた瞬間だった。
春はもうすぐそこに来ていた。