第八夜
二人に琥珀が長くないことが伝わってからも二人は琥珀の傍に変わらずにいた。
千優の編み物が琥珀宛になり御影が不器用ながらも林檎をむいてくれたりしていた。
そして御影が本を買ってきてくれるようになっていた。
今日の本のタイトルは「結婚式の落とし方」と書かれていた。
内容は以外にもまともで結婚式をどのようにすればいいかなどが書かれていた。
何時もこんな本を御影は読んでいるのかと不思議に思いながらページを捲っていた。
そんななか琥珀は吐血した。御影はナースコールを素早く押して千優が琥珀の背をさすってくれていた。
琥珀の意識はぶつりと途絶えた。次目覚めたときあたりは暗く夜なのだとわかった。
自分の意識が途切れそうになりながらも琥珀はあたりを見回した。
そこにはやはり御影と千優が心配そうにこちらを見ていた。
ああ終わるのだ。琥珀はそう感じた。ピッピッ。
琥珀の心臓を伝える機械が琥珀がまだ生きていることをつたえていた。
二人に琥珀は手を伸ばした。その手を二人は大事そうに握った。
琥珀は微笑んだ。そしてとぎれとぎれに二人に囁きかける。
「ずっと一緒だよずっと想いはここに」
その言葉に二人は頷き返した。千優の目は潤んでいた。そして琥珀の意識はそこで途切れた。
ピィーー。
琥珀が死んだのだと二人は気づいていた。それでも二人は琥珀の手をはなさなかった。
千優は泣いていた。御影は片手で千優を抱きしめた。
琥珀は春をこえることなくその命を終えた。二人は動くことができなかった。