六本目/擬人化貯金ちゃん
活動報告で出た貯金を擬人化キャラのショートコント。完全単発
「ほらっ! タンスちゃん! 外に出る!」
「嫌です! 私家の中に居たいのですぅ」
銀行ちゃんは、タンスちゃんを外に出そうとしています。何時も何時も、家の中に居るタンスちゃんを見かねた銀行ちゃんがお洋服を買いに行こうと誘ったのです。
「何時も同じ服ばかりだと、女の子としての魅力が減っちゃうよ!」
「減らないです! お金の方が減っちゃうですぅ!」
タンスちゃんは、頑固な子です。そんな時、他のみんなも集まってきました。
メガネを掛けた定期ちゃん、算盤を片手に気怠そうな為替ちゃん、元気いっぱいのゆうちょちゃん。扇を片手に今日も金髪ドリルが栄える純金ちゃんです。
「何をしてるんだ。君たちは……」
「聞いてよ、定期ちゃんたち。タンスちゃん、今日も同じ服ばかりでお洋服を買いに行こう。って話したんだけど……」
「ああ、彼女は、重度の引きこもりさんだからね。でも洋服か。タンスちゃんの意見はどうなんだ?」
冷静に話に入って来る定期ちゃんに、泣き付かんばかりの勢いで詰め寄るタンスちゃん。
「お洋服は、必要な分で良いんですよ! デザインとかも流行り廃りで着なくなるよりも汎用的なデザインの方が長く着れるんです。それに派手なのは趣味じゃないんです」
「ふむ。一利あるな」
「定期ちゃんまで!」
裏切られた。と言った風な銀行ちゃんだが、まあ待て。と押し留める定期ちゃん。
「確かに長期的に見れば、デザインに左右されて購入するのは計画的じゃない。だが、だからと言って財布の紐をきつく締めるんじゃなくて、ちょっと良い物を買えばいいんじゃないかな? 少し高くて質の良い物を長く使う。安い物はそれなりの質だから、どうしても一日単位の消費だと高くついてしまう。『安物買いの銭失い』と言う言葉がある様に」
「はわぁっ……分かりました。皆さんも買い物に行きますか?」
買い物に行くことに説得されされたタンスちゃんは、他の皆にも声を掛ける。
「ボクも良くですよ! ちょっと郵便局からお金卸してきますよ」
「買い物は、銀行のクレジットカードでも出来るのに、そう言う所は不便ですね」
ゆうちょちゃんと銀行ちゃんは、互いに睨みあいます。互いに利点があるのですけど……。
「なぁ、服買いに行くなら、この店にせぇへん?」
そうしてモバイルパソコンをみんなに見せるように掲げる為替ちゃん。いつもの為替ちゃんには珍しく、彼女からの提案だ。
「へぇ、あなたはこういった服が好みなんですの? 中々良いセンスですわね」
服の値段とデザインを見て、そういう純金ちゃんに対して、為替ちゃんは、すぐに否定する。
「ちゃうちゃう。為替の他にも少し株とかやってるんよ。それで、うちの持ち株の服飾系の企業がこれなの。だから、うちの株のために貢献してぇや」
「相変わらずだね。君は……」
「また、そんな物に手を出して……怖いじゃない」
定期ちゃんは、苦笑いを浮かべ、銀行ちゃんは、怖い発言をする。銀行ちゃんの怖いとは、金銭的な損失が怖いという意味だ。
「何を人ごとの様に言ってるんよ。銀行ちゃんだって私と同じように為替やってるじゃん」
「えっ!? 何時よ!」
「前に話してたじゃない。銀行のプランで海外の通貨貯金。あれは、銀行ちゃんの預けたお金で海外のお金を買って貯金しておくから為替で価値が変わるんだよ」
「ああ、あの事……忘れようとしたのに……」
銀行ちゃんは、一ドル百円の時に十万円近くそれに貯金しました。それが一ドル八十円近くまで円高が進み、元が取れなさそうだったので、様子見。最近になって元のレートに戻ったためにお金を卸したら、銀行の手数料などで結局はマイナスになってしまったのです。
「だから、銀行ちゃんが怖いとか言うけど、うちは知識とか手間とか全部自分でやってるだけで、銀行ちゃんは、銀行員さんの提示したプランに全部丸投げやないか。結局は自分でお金を運用するか、提案されたプランに投資するか。の違いみたいなもんやろ」
「おほほほほっ、そんな不安定なハイリスクハイリターンよりも時代は純金、プラチナ! お金など所詮は、国が価値を保証した紙にか過ぎません。現物でなおかつ普遍的な価値は、貴金属ですわ!」
そう言って、現物主義を力説する純金ちゃん。
お金を運用する純金ちゃん、為替ちゃん、銀行ちゃんの横では、保守的な運用であるタンスちゃん、定期ちゃん、ゆうちょちゃんが見守っている。
「まぁ、自動車の触媒なんかにプラチナは使われるし、資源の無い日本では、貴重な資源である金やプラチナは、重要やな。まぁ、結局、うちのやってることは、ゼロサムゲーム。他人のお金を掠め取って居るだけやし。株も為替も売ったり買ったりでお金を右から左に動かしているに過ぎん面もあるしな」
お金の使い方は千差万別。さぁ、あなたはどの運用法。
「それより、洋服を買いに行くのではないのか?」
「「「あっ」」」
貯金ちゃんたちは、今日も平和であるのです。