二本目/空気娘が転生して得た魔法は……
ノリと勢いでやってみた短編
「《固定化》、《圧縮》」
私――フローレシア・バーバリン――は、現在十二歳になる魔法使いだ。
髪は薄緑色、瞳は灰色。この世界には、魔法という物があり、瞳や髪が大まかな属性を表してくれる。私の場合は、緑は『風』。灰色は『無属性』である。と言っても大まかであって派生属性もあるためにそれは多種多様だ。
「《活性》!」
私が活性化の魔法を使うと、目の前の空間が爆ぜる。風の魔法がどうして爆破の魔法になるのか、それは私の使う魔法が風の派生『空気』だからだ。
生前の私は、それはそれは空気扱いされていた。イジメもなければ、仲の良い友達も居ない。つまり、『空気』そこに居るのが当たり前、でも居ても気にならない。
そんな私は、学校行事の登山で滑落死。幽霊になってふわふわ私は、自分の死後の周りの人間の言動を見ていた。
私が居るのが当たり前、だから誰も滑落死したって気がつかない。教師は点呼でも抜けていた。
最後に親が私が自宅に帰ってきていないと電話を掛けて、教師に発覚、バスから降りての帰り道を捜索したけど、そもそも探す場所が違っている。
登山道を巡回していたボランティアの人に発見、通報されてやっと私は、親元に帰れた。まあ肉体だけだし、その後も色々揉めたみたいだけど、幽霊になって本当に空気みたいだと感じながら、来世へと期待して転生。
その世界で得たのが、嫌味としか言えない魔法『空気』だ。
現世の親曰く「空気は希少性の高い魔法だが、上手く扱えた者が居ない」「魔法使いの才能があるのに、属性が悪い」「そもそも攻撃として使えた記録が無い」と言われるほどだ。
死んでも私を苦しめるか『空気』。
と、三歳の頃、その事実を告げられたが、考えてもみて欲しい。風の派生の空気を扱う時、人は風魔法と同じ要領で扱うだろう。
流れを作り、操作する。実際私も空気を操作する時、そんな感じで扱っていた。だが、それでは無理なのだ。ゲル状の物質を自在に振り回すのが困難なように、空気を掴んで操作するなんてのは、操作法が間違っていた。
だから、私は空気を固定化する。手法を取った。この時点で攻撃性はない。
最初は、クッション、次に風船、次にキューブと様々な形で空気を固定化。
五歳の頃は、エアクッションを作って、その上でふわふわお昼寝気持ち良かったな。
六歳の頃は、風船を作って、辺りにばら撒いて、不可視の破裂音を響かせて遊んでいたな。
七歳の頃は、キューブに硬さを持たせるために圧縮したり、反発性を持たせるために柔軟性を求めたりと色々と研究した。
その研究に行き着いた先が――活性化だ。
まずは、固定化した空気を圧縮する。そうして、圧縮された空気の中、分子に『無属性』の活性化の魔法を使うことで、分子が高速で動き、膨大な熱量を発生させる。そして、固定化を解除することで、内圧と熱で爆発する。
そう、これを成功した時、凶悪過ぎて私自身が震えあがったのは今でも覚えている。
それから、近くの民家が火事になった時、どうしたらいいだろうかと焦って、空気を固定化して酸素の流入を遮断、窒素の収集と酸素の排除による鎮火もした事があった。
うん……つまり、酸素濃度の低い空間を作り出せるようになりました。人間に使えば、昏倒してしまいます。これ封印。
後は、活性化の応用で鎮静化の魔法があります。これを分子を対象に動きを止めることで、一気に冷えます。ひんやりした空気の塊が出来ます。その分、空気のキューブの面積が小さくなったりします。
まあ、今は、空気の魔法があって感謝しています。だって、あれって乗っかれるんだもん。空を自由に歩けるなんて風の飛行魔法を覚えるよりも楽。
そんな私は来年から魔法学園に入学して魔法を学びます。田舎から出ていくので、他の魔法を見てみたいです。私よりも凄い魔法使いの見習いがきっといるだろう。その人から学ばなければ。
他にも、空気を圧縮して他者の上に纏わすことで、相手の動きをおそく、擬似重力なども開発予定。
そんな短編キャラクター。