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17本目/魔王直属オーク従士隊~ただのオークじゃありません~

女騎士×オークの『くっ殺』系を全力で明後日の方向に投げた作品です。

「くっ、殺せ!」

「ブヒッ、我らオークの前でそのような強がり、いつまで続くかな」


 一人の女騎士がオークたちに捕まった。

 彼女は、王国の伯爵家の娘であり、志高い女騎士だ。王国の同士を募り、魔王の住む魔王城へと攻め込んだはいいが、幾重にも張り巡らされた罠、そして次々と襲い掛かるモンスターたちによって騎士たちは散り散りになり、そして女騎士は、オークに捕まってしまう。


「貴様らオークによる辱めを受けるくらいなら、騎士としての誇りを胸に死んでやる!」

「ブヒヒッ、我らの手腕の前にそのようなことを言っていられないぞ」


 一匹のオークが一歩前に出て、女騎士に手を伸ばす。このまま押し倒されて、辱めを受ける。と思い、せめて舌を噛み切って死のうと思うがそれもできない。


 武器は取り上げられ、首には動きを封じる隷属の首輪。女を守るものは現在来ている鎧と衣服のみだ。


「ブヒッ、その邪魔な鎧を外させてもらう」

「や、やめろ」


 だが、オークの手は止まらない。乱暴に鎧を壊す……こともなく、留め金を丁寧に外して、脇に置く。横に控えていた他のオークが、鎧の汚れ拭きようの布を取り出し、これまでに戦いで着いた血糊を拭き取り、錆びないように処理してくれている。

 また、私から取り上げた王家から賜った剣も一緒に汚れを落として、簡単な研ぎをしてくれている。

 オークとは言え、大切なものを大事に扱ってくれるのは嬉しいが、もう少し乱暴な扱いを予想していただけに、ちょっとした肩透かしだ。


「ブヒヒッ、何を間抜けな表情をしている!」

「はっ! そうだ、私の大切な装備をどうする気だ!」


 あそこまで丁寧に扱うということは、武器を奪い使われるかもしれない。そう考えれば、私の民を守るための武器がそのまま、オークの手によって民を害するものに変わるかもしれない。


「後で、部屋に届けさせよう。ただし、一応装備できないように処理して、観賞用に変えるがな」

「えっ、あっ、どうも」

「そして、さぁ、服を脱げ!」

「くっ、やっぱり私を辱める――」

「そんな汗で汚れた体を触るのは気分がわるい。風呂に入って来い! それとシャンプーとリンス、あと敏感肌用の石鹸だ!」


 そう言って、なにか桶のようなものを渡された。

 ボトルには、髪の毛用の石鹸や何やら、そして、非常に肌触りのいいタオルがある。

 私は釈然としない表情のまま、オークの隷属の命令によって、風呂に強制的に入らされる。

 いやいや、きっとオークの風呂だ。言葉ではとても言い表せない風呂かもしれない。以前、父上の書斎に隠されていた禁書にそのような事を書かれていた。などと思っていたが、そんなことはなかった。

 普通に湯煙たっぷりの大浴場であり、ちゃんと服を脱ぎ、掛け湯をして、お風呂に入る。

 はふぅ、と長い息を吐き出し、湯船にしっかりと浸かる。

 そう言えば、魔王城までの間に風呂など入らなかったために所々痒かったが、それも洗い流せて気持ちがいい。

 石鹸や、髪専用の石鹸でさっぱりとした後は、リンスと呼ばれるものを使った。どうやら、髪の毛に着けて、しばらく置いたら洗い流すらしい。まるで母上や姉上が使う椿油のようなものだ。と思い使ってみると少しパサついた髪が滑らかになる。

 タオルも肌触りも良く、旅の垢を落して脱衣所へと出る。


 何やら、髪の毛を熱風の出る道具で髪の毛を乾かし、新しい服に着替えろと言うらしい。熱風は気持ちよく、いつも乾くのに時間が掛る長い金髪がすぐに根元まで乾く。

 そして、新しい衣服だが――


「くっ、オークめ。風呂に入っている間に破廉恥な服に変えた――ということもないな。ふむ、騎士団で使われる運動着みたいだ」


 上下別々の柔らかな素材だ。寝間着に最適かもしれない。と思った私は、そのままオークの元へと戻る。


「ブヒヒッ、風呂に入って来たな。さぁ、ここからが本番だ」

「くっ、やっぱりを襲う気だな! この獣め」

「ブヒッ、オークにそれは褒め言葉だ。さぁ、そこのベットにうつ伏せに寝ろ!」


 顔の部分が穴の開いたベッドがある。隷属の首輪の効果でそこにうつ伏せに寝ることしかできない。


「父上、これよりオークに辱められます。どうか、不甲斐ない娘をお許しください」


 直後に私を襲う痛み。


「あがががっ! いたい、いたい!」

「おう、そうか、そうか。ふん、ふん!」


 オークは容赦なく体重を掛けて私を蹂躙する。


「全く、年若い娘が剣や鎧なんて持って動いて体に無理が掛かってる。骨が歪んじまってるよ。ふん、ふんぬ!」

「いたい、いたい、ストップ、ストップ!」


 骨が悲鳴を上げ、筋肉が痛みを上げる。だが、徐々にオークの手付きが優しい物になり、骨を動かす力強い力から筋肉を解きほぐす動きに変わる。


「お前さん、最近胃の不調を感じてないか?」

「くっ、誰がオークなんかに!」

「応えやがれ」

「あっ、はい。騎士団の食事がいつもパンと干し肉のスープなんです」

「それだな。バランスの悪い食事とストレスで胃が荒れてる。後で胃薬処方するように言ってやる」


 背中を鈍い痛みの部分を揉み解しながら、肩や首筋、頭、腕を揉み解す。

 他にも腕の動きがどうとか、足の場所がどうとか色々と聞かれた。

 揉み解す中で一番痛かったのか、太腿と足裏のかかと部分で、オークが言うには、冷え性と生殖器が悪いとのこと。私は、騎士となり女は捨てた、と言えば、馬鹿野郎。女男関係なく、健康に悪いだろ! と言われた。

 確かに一理ある。


「さて、俺のマッサージは終わりだ。次は、こいつの出番だ」


 マッサージで身体がホカホカしている私の前に人相の悪いヒョロ長い体のオークが立っていた。そいつは、杖を持ち、魔術師のような恰好をしていることからゴブリンシャーマンかヒーラーだと思われる。


「くっ、闇魔法を使って、洗脳して意識とは裏腹に私を辱める気だな!」

「ブヒヒッ、そいつは、試してみてからのお楽しみだ。やれ!」

「へい」


 そう言って、オークシャーマンは近づき、白い光を放つ。なんだかぽかぽかとした陽だまりのような暖かさを感じる。

 私は、自分の体に異変がないか確かめるが、不調は、改善され、昔骨折で滑らかさを失った腕の動きが良くなる。また、剣による古傷も綺麗になくなり、どこぞの令嬢のような美しい肌になっている。


「こ、これが私?」

「へい。あと、最近の集団生活によるストレスと睡眠不足で少しバランスをくずしておりやす。なので、今晩から十分な睡眠と栄養バランスを気をつけてください。ブヒ」

「あっ、これはご丁寧にどうも」


 まるで医師のような言葉に思わず頭を下げてしまう。

 そして、それに割り込むあのオークだ。


「さぁ、終わったな。最後にこれを飲め!」

「くっ、変な物を、例えば媚薬などを飲ませて私を思うままにする気だな!」

「いいから飲むんだ!」


 そうして渡されたコップ一杯の液体を飲めば、凄く飲みやすい。

 砂糖水に少し塩や果汁を混ぜたものだろうか、お風呂に入って汗を掻いたりして体に水が欲していたのかもしれない。騎士団での訓練後は倒れないように水をよく飲んでいたがそれよりも飲みやすい。

 オークからおかわりを貰い、最終的にコップ三杯分の飲み物を飲んでしまった。

 体に異変はない。強いて言えば、トイレに行きたくなる。

 はっ、まさか、それが狙いか。


「貴様! 私に飲み物を飲ませて、トイレに行きたい時に無理矢理に我慢させる気だな!」

「ブヒッ、そんな特殊性癖はないから安心して、トイレに行ってこい、トイレはそこだ」


 そう言って、指差された個室のトイレは非常に綺麗だった。今までの人生の中で一番寛げるトイレだったと思う。


 そうして、他にも


「くっ、その鋏で私の手足を切断し、抵抗できないようにする気だな!」

「ブヒヒッ、出来ました。お嬢様」

「なっ、これが私だと言うのか」


 オーク・スタイリストが髪の毛を綺麗にセッティングする。


「くっ、衣装だと。どうせ、殆ど隠れていないか、スケスケでハレンチな服を着させるきだな!」

「ブヒヒッ、出来ました。お嬢様」

「なっ、これが私だと言うのか」


 オーク・デザイナーによって、白い先進的でありながら美しいドレスを身に着けた。


「くっ、そのくすぐるような道具で延々と笑わせて、私を失神させるきだな!」

「ブヒヒッ、出来ました。お嬢様」

「なっ、これが私だと言うのか」


 オーク・メイクアップアーティーストによって、美しく化粧された私は、女騎士としての凛々しい風貌よりも貴族の令嬢的な顔に変わっていた。


 そして、オークたちの手によって、徹底的に作り変えられた私は、魔王の前に引きずり出される。


「くっ、魔王め。私をどうする気だ」

「ふふふっ、我が配下のオーク従士たちよ。よい仕事をしたな」


 私の背後に並ぶ、私の体を弄り回したオークたちが恭しく魔王の前に礼を取る。

 その中で魔王は私のところまで近づき――


「それでは、お姫様。私と一曲ダンスでも」

「だ、ダンスだと!?」


 予想外の展開と同時に控えていたオークたちがそれぞれ楽器を取り出して、オーケストラへと早変わりする。

 そして響き出す音楽に合わせて、ダンスをする。

 女騎士とは言え、貴族の嗜みで多少のダンスはできた私は、全身が黒の美丈夫にリードされて、立った二人だけのダンスをする。

 黒一色の魔王に金髪に純白なドレスの女騎士。幼い頃に夢見た王子様とのダンスの再現のようだった。

 もう思い残すことはない。私の人生はここで終わってもいい。そう思えた。


 後の歴史を振り返ると、魔王の暴虐を一人の女騎士が身を挺して止めた。という歴史がある。

 伯爵家の女騎士は、魔王の元へと辿り着き、魔王へと嫁ぐことになり、魔王の子を産んだ勇者の話だ。

 そんな魔王と女騎士の傍には、いつもオークの従士が控え、生活を支えたという話がある。



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