表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

11本目/野菜騎士団とカレーのマグマ

童話風の短編が書きたかった。私の作風自体はかなり違いますが、どうぞご了承ください


 むかしむかし、この世界でないどこかの世界。どこかの王国。そこには、国王と王妃。そして、一人のお姫さまと沢山の野菜が暮らしていました。


 王国の宝といわれるお姫さまは、ちいさな頃から好き嫌いが激しかったのです。

 あれの味は、いや。これの味は、いや。

 食べるは困らない豊かな国で、国民の野菜たちは、自分と同じ野菜が食べられないことに落胆し、何とか食べて貰おうと頑張りました。

 ナスさんは、一番おいしい時期に献上しても駄目でした。

 カボチャさんは、甘くておいしいお菓子を作って献上しても駄目でした。

 トマトさんは、食べやすいように、飲みやすいようにミックスジュースにしても駄目でした。


 そうして、国王が困りながらもお姫様の好き嫌いを直そうと頑張っているある日、王国の温泉火山に竜が住み着いたのです。


 ガハハハッ、ここは暖かい! ワシの住処をここにしよう!


 そうして温泉火山に住み着いた竜は、温泉の元であるコンソメ味のマグマを飲んでくらしていました。

 当然、温泉の元がなくなれば、温泉はただの水になってしまいます。

 山から流れる温泉が冷たい湧き水に変わり、温泉と温室で野菜を育てていた人は大慌て、国で食べ物が不足するようになったのです。


 お姫さまの好きなものは、どれも作れなくなり、代わりに空から白米の雪が降るお米の氷河が始まったのです。


 ああ、あれが食べたい。これが食べたい。


 しかし、あるのは、保存に利く野菜ばかり。白米の雪から出来たおにぎりを食べながら、いつか来る春をお姫さまは待つのです。


 そこで立ち上がったのは、王国の精鋭騎士である野菜騎士団。

 剣を持たせたら、王国最強――オニオン・ナイトが200名。

 盾を持たせたら、王国最硬――ポテト・ナイトが200名。

 槍を持たせたら、王国最速――キャロット・ナイトが200名。

 そして、国中から集まる魔法使い――スパイス・マジシャンが50名。


 総勢650名が竜のいる火山へ向けて歩き出す。

 精鋭の竜討伐隊が山頂に辿り着き、竜に剣を向けるのです。


 小賢しい野菜どもよ! 全て喰らいつくしてくれよう!


 そう吼える竜に対して、剣を向けるオニオンナイト。


 これより、王国の未来のため、行くぞ! 我が精鋭騎士たちよ!


 オニオンナイトの騎士団長の掛け声で一斉に竜へと切り掛かる騎士たち。

 オニオンナイトが竜の爪で切り裂かれ、冷たい山の水の中に落ちていけば、倒された騎士を囮に、別のオニオンナイトが尻尾を一口大に切り、水の中に落としていく。


 ポテトナイトが、御鍋の蓋を掲げて仲間を守るが、守り切れずにバラバラになって落とされれば、別のポテトナイトが、竜の頭に盾を叩き付け、水の中に落としてしまう。


 キャロットナイトが、水の中へと追い討ちを掛ければ、炎と風の吐息が水を熱湯に、キャロットナイトを小さく刻み、水の中に残ったキャロットナイトが、水の中に堕ちて這い上がろうとする竜を槍で突き出し、バラバラに、更に煮込んで、ぐーぐぐる。


 スパイス・マジシャンは、守る力がなく首だけになった竜に噛み砕かれて水の中へと散っていく。それでも残ったスパイス・マジシャンが炎の魔法で冷えたマグマと山の水をぐつぐつと煮込んで混ぜる。


 そうして、多くの犠牲を払った竜討伐は、竜を切り刻み、山の水へと落として、煮込んで終わりに見えた。


 くははははっ、流石は精鋭の騎士たちだ。我の体は滅んでしまった。


 なんと、倒した竜が現れました。

 竜を煮込んだ山のお湯から灰色の泡となって現れた竜は、自らを竜の悪意・あーく・ドラゴンと名乗りました。

 残った騎士たちは、切り札を切る事になりました。

 それは、自らを命を捧げて、アーク・ドラゴンを封印する魔法の道具・魔法のお玉を使い、封じることに成功したのです。

 そして、竜が居なくなった山では、マグマが徐々に温まり、山の水が温泉に、コトコトコトコト煮込まれて、竜のお肉と野菜の騎士とスパイスの魔法が一つとなって、カレーのマグマが出来上がる。

 流れる事無く留まるカレーのマグマが厚い雲を払うほどの噴火の爆発を周囲に飛ばす。


 あれは、なに!? ちょうどお姫さまが山の方を見ていると、山から流れたカレーのマグマが、白米の雪を飲み込んで広がるではありませんか。


 王城まで広がる刺激的なカレーの匂いに、それが今まで食べなかった野菜だと分かっていても足が向く。

 お姫さまは、一口マグマの熱で炊けたご飯とカレーのマグマを口に含みました。


 おいしい! そう感じた瞬間に、涙が止まりません。


 カレーのマグマに籠められた騎士の想い。国民を代表する魔法使いたちの気遣い。どれだけ自分が心配を掛けたか、そしてどれだけ愛されているかを知ったお姫さまは、騎士たちを丁寧に弔い、二度と好き嫌いをすることが無くなりました。


 今日も王国は美味しい野菜を作っています。そして、お姫さまは、いつもいうのです。


 いただきます。ごちそうさま。そして、ありがとう。を 

ダークソウルのオニオンナイトことカロリナ装備を見て、思いつきました。


竜の悪意・アークドラゴン→悪竜→灰汁竜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ