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『E/O』イオ  作者: たま。
序章【改変編】
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第2話【改変】

毎度の事ながら誤字脱字、表現の誤りにはご容赦願います。

俺はログアウトが出来なくなったその日、現実逃避をするかのように自室としていた部屋のベッドで寝た…

のだったが、深夜にも関わらず昼間のような明るく強い光が窓から差し込んできて目を覚ました。

ベッドから飛び降りそのまま玄関へ向けて走り抜け大通りまで出て行った。


大通りのほぼ中間に位置する広場まで出るとぱっと見て、南東を中心に東から南にかけて昼間以上の明るい空になっていた。

どこかで大爆発があったとか、隕石が落ちたのではないかとか、広場に集まったプレイヤー達は慌てながらそう話していた。

大爆発や隕石が落下したなら爆音や衝撃波があってもおかしくないのに、今のところそういうのはない所を見るともっと遠くの方の出来事なのかも知れない。



――その日、『E/O』の世界は改変した。――



あの日から3日経った今日に至るまで俺を含めプレイヤー達は混乱していたが、流石に状況把握に努めある程度には落ち着いてきた。

とはいえ、まだ南東の空は明るいままだ。何が起こったのか、懇意にしていた情報屋から聞いた話でやっと判明した。

普段ならOS社か運営から何らかの状況説明があってもおかしくない状況なのだが、恐らく俺達以上に混乱しているのだろう…


なんでも南東の大陸フィラシェット大陸、地球で言うとオーストラリアに位置する大陸で四神の一角ヴィーナスが大陸全体を焦土化させたと言うのだ。

はっきりいって信じがたいがフィラシェット大陸にいる友人と連絡が取れないと知り合いのプレイヤーが話していた。

連絡が取れないとはどういう事だろうか…その日ログインしていなかっただけではないのだろうか…そういう疑問を俺は彼に聞いてみた。



「そういう事じゃないんだって、あの日、丁度その時間そのフィラシェット大陸にいた友人とリアルタイムで話していたんだよ。

本当、その時までは。でも…あの光と共に友人との通信は切れてそれっきり……もうアレから3日だぜ?

いくらなんでも、もう復活していておかしくないだろ?でも、いまだ連絡が取れないんだ…」



彼は焦燥し切った表情で呟く。恐らくアレからほとんど寝ていないのだろう。

もしかしたら、改変されたこの世界で死んだらリアルの自分も死ぬという事なのだろうか…、なんとなく俺はそう思えた。

恐らく彼もそう思ったに違いない。


そういえば、あの日から変わったと言えば、NPCだ。

元々『E/O』のNPCは高度なプログラムで組まれ自我があるような行動をしていたが、その改変で本当に自我を持ってしまったのだ。

自我があるようなNPCも以前は重要な役割を持つNPCのみであったが、全てのNPCが自我を持つようになった。

自宅で微動だにせずある一定パターンの台詞しか喋らなかった、俺の前キャラであり現在のマイキャラの父親に相当するNPCも自我を持ちまるで人間のように喋るようになった。

母親に位置する特殊NPCの古代エルフも名前も定かでなかったのに自我を持ち名前まであるのだ。

使い慣れていた元マイキャラが俺の意思とは別に喋りかけてくるのだ。はっきり言って奇妙な感覚だ。



時間も変わった。以前ならリアル3時間で3日経つのに、体感がほんとうに3日ほど経っている。信じがたい…

五感が生まれたせいで時間経過によって空腹になるようになった。以前からシステムとして空腹という概念はあったが実際に空腹になる訳ではなかった。

だけど、今回の改変で本当に空腹になる。逆に味覚が生まれたせいでこの世界の味覚に触れるようになった。

ファンタジーという事もあり日本ではあまりお目にかかれない料理ばかりで新鮮だ。それに美味しい。


そういえば、昨日OasisSpace社からメールが届いていた。

あの日に改変した詳細な報告が書かれていた。

内容的に信じがたく俺はもとより他のプレイヤーも信じなかったが、それらの幾らかを実践し確認した。(死亡は怖くて誰も実践していないらしい)



魔獣の活動が活発化し、逆に野獣の活動が減ったらしい。いない事もないが町周辺にしかいないとの事。

これは未確認だが、開発元であるOasisSpace社である彼らでさえ把握していない精霊が増えたらしい…

おそらくヴィーナスによる魔獣増大に対し、環境の管理を統括する四神メシアが対抗措置として生み出したのではないかとOasisSpace社は推測しているようだが、真偽は定かではない。


報告内容の1つに、レベル(成長)の限界が100から150に延びたらしい(未確認)という情報もあった。

今まで短命種族かつ限界突破クエストを2回繰り返す事でレベル150にまで限界を伸ばせた。

でも、今回の改変でクエスト自体がなくなり今まで限界突破の対象外だった長寿種族が150まで上げれるようになったのだ。

それだけではない、スキルの成長限界が無制限になった。

今までは毒耐性のスキルを上限まで育てても60%が限界だったが、頑張り次第で毒耐性100%も夢ではなくなった。

成長限界がなくなった事で習得出来るスキル数も無制限になった可能性がある。

そうなれば、毒耐性100%どころではない全状態異常の耐性100%もありえる。

まぁ、それには並々ならぬ努力は必要だろうけど…



で、今日に至る訳だが、取り合えずすぐには現実に戻れそうにない。それも数年下手したら数十年戻れないかもしれない。

絶望的だ…。数年もしたら流石にリアルの時間経過が10分の1の速度とはいえ餓死している可能性がある。


最後に最も絶望的な…いや希望的なのだろうか…四神ヴィーナスを倒せばログアウト出来るかもしれないという報告で最後締めくくられていた。

え、1つの大陸を焦土化したあのヴィーナスを倒せって言うのか?

改変前、ヴィーナスには無敵設定がされていた筈である、禁止事項の解除でその無敵設定が解除されたからと言っても無理にも程というものがあるだろう。





「そうだ!エルフの精霊使いを探そう」





俺は取り合えず現実逃避もとい開き直った。

まずは、このキャラに精霊魔法を覚えさせるとするか…

ついでに魔法書店に行って魔術を教会で法術を習得させるしよう。


俺は両親(NPC)に挨拶してから家を出て大通りへ向かい、魔法書店を探していたが、書店に着く前に教会に辿りつく。

ゲーム上ではあまり感じなかったが何となく今は神聖な場所という空気が漂っている。

奥には神官長と思しきNPCが立っており教会に訪れた一般人のNPCに祝福をしていた。


取り合えず聞いてみるかな。



「神官長様こんにちは」


「こんにちは。小さき妖精さん」


小さき妖精?……あ、俺の事か。


「今日はどういった御用ですか?」


「法術を習得したいのです。神官長様ご教授して頂けませんか」


「教えてあげたいのは山々なのですが、基本的にシスターが教える事になっているのです。」

「右手奥にある部屋にシスターがいるので彼女に教えてもらいなさい。

高位の法術が使えるようになれば私自ら教えて差し上げましょう。それまで精進しなさい。」


「はい、ありがとうございます」



俺は神官長に礼を良い、教えられた通り奥の部屋に入る。

そこには年配のシスターがおり法術書の整理をしていた。

そして、俺が入ってきた事に気付き振り返る。

優しそうな笑顔である。今までのようなNPCではこういう笑顔にはならないだろう。

自我が生成されたお陰という事か…ほんと、リアルな人間みたいだ。



「シスター、こんにちは」


「あらあら、こんにちは。今日はどういった御用?」


「法術をご教授お願いしたいのです」



俺は用件を言い軽く会釈をした。



「わかりました。あなたエルフみたいだし素質に関しては問題ないでしょう。

どの程度の法術をお探し?」


「下位法術でお願いします。高位法術を教えてもらっても使えませんし…」


「分りました。それでは部屋の中央にある魔法陣の中に入ってください」


指示された通り法術特有の魔法陣の中に入った。

ちなみに、法術の魔法陣は偶数の図形で成り立っている。

例えば四角形や六角形などだ。画数が多いほどまたは重なる図形が多いほど高位の魔法となる。

魔術は奇数の図形だ。

余談だが、魔法陣の中には立体の陣や球体の陣も存在する。

これは禁呪指定されている魔法だ。

改変前は限界突破でレベル150(カンスト)まで上げたキャラでないと関連クエストのスタートにも立てなかった筈だ。

過去に何人かはカンストまで上げクエストを受けた者もいるようだが、あまりにも難解で長かった為そのほとんどは途中で挫折していた。

公式発表によると、これらのクエストをクリアした者は3人、内複数の禁呪を習得した者は0人らしい。

フレンドの知り合いに3人の内の1人がいて、その人によると禁呪はチートかと思うほど強力だけどクエストが余りにも長すぎて2つ目を習得する気になれないらしい。

この改変で禁呪関連のクエストはどうなったのだろうか気になるところだ。


おっと、そろそろ儀式が始まりそうだ。



「では、目を閉じて心の内面に意識を集中して下さい」


俺は言われたとおり目を閉じ意識を内面へ集中させる。

少し時間が経ってからシスターは次の段階へ入った。



「今から法術の基礎技術をあなたの精神へ刻みます。

おそらく、今あなたの内面は闇で覆われていると思います。

そこに光が芽生えたら成功です。

では、集中して下さい」



シスターの言葉の後、俺はさらに内面へ意識を集中させる。

そこに微かだが光のようなものが点滅したように思えた。

十数分経った頃だろうか、その点滅は確かな光となっていく。

これは成功したと見て良さそうだ。

俺は目を開きシスターを見上げる。



「成功したようですね」


「はい」



シスターは微笑んだ後、本棚へ向かい一冊の書籍を取り出す。

そして、シスターはカウンターのような木製の机にその書籍を置き、俺を手招きする。



「これは…?」


「法術書よ…下位法術に関して記されているの。

さっきの儀式だけでは法術は使えないの、法術自体を学ばないとね。

まぁ…タダではないのだけど、お金はあるかしら?」


「大丈夫です」


「じゃぁ、600シルバーになります」


通貨に関して簡単に説明しよう。

それなりに良い宿の一泊の値段が大体30シルバー、だから600シルバーは結構な金額である。

世界設定的に一般人は金銭的な理由で魔法関連は習得していないらしい。

一部の金持ち以外は…

俺達プレイヤーは大体が傭兵・騎士・商人・職人のどれかを職業に選ぶ為、魔法関連の習得は問題ない。

一般人も選択できるが一部の物好きか情報屋プレイする者しかいない。

この世界には金貨・銀貨・銅貨の3種類存在するが、騎士を除いた傭兵・商人・職人は基本金貨で取引する為、銀貨・銅貨はほとんど持ち歩かない。

なので、俺は懐から1ゴールド金貨を取り出しシスターに渡す。


「すみません。1ゴールドしかないのですが、お釣りはありますか?」


「ええ。では、少し待ってね」


シスターは中腰でカウンターの中段あたりを探る。


「はい、お釣りの400シルバー。ちゃんとあるか確かめてね」


シスターからお釣りを受け取る。

俺達プレイヤーは一々確かめなくても見ただけで金額が分るようになっている。

とはいえ今回は100シルバー銀貨が4枚なのでそれさえも必要なさそうだ。


「大丈夫です。ご教授ありがとうございました」


俺はシスターに一礼し部屋を出て教会の本堂を通り神官長に軽く会釈してから中央広場に出る。

教会を出て辺りを見回すと中央広場でジャンクフードを売っている露店が増えていた。


「もう昼過ぎか…」


改変前は習得する時間なんて一瞬だったのに、最低でも30分いや1時間は経ってるかもしれない。

まぁ、俺はエルフだし時間はたっぷりある。リアルは…まぁ何とかなるだろう。きっと、おそらく…。

そういえば、短命のキャラを使用している人は寿命で死亡した場合どうなるのだろう…。


深くは考えないでおこう…

俺は露店でフライドチキンもどき(通称沼ガエルと呼んでいるMobの肉を揚げた料理)を購入した後、中央広場を後にし魔術書店などの専門店が立ち並ぶ通りへ向かう。

確か、この中央広場から東西へ延びる大通りだったような…。


それにしてもこの料理美味しいな。

改変前は、毒耐性を上げる為に購入する料理の1つという認識でしかなかったのに…

すみません。今回は会話よりも説明文が多くなってしまいました。

今回、NPCという表記が多くなってしまったので次回から極力なくします。

それとこの話でストックがなくなったので次回は少し先になると思います。

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