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『E/O』イオ  作者: たま。
第2章【救済編】
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第39話【満足】

大分間が空いて申し訳ない。

「皆集まって貰えますか?」


昼食の後片付けもひと段落して、俺達討伐隊は作戦前最後の準備をしていた。

と言っても、装備と回復薬の確認ぐらいで夜戦の準備はしていない。

夜戦になるまで長引くという事は劣勢なのは間違いないし、Mobと違い夜戦を昼間同様に戦える者は少ないという理由だ。

というか、夜戦で問題なく戦えるのはホビットとビーストぐらいだ。

今回の討伐隊にも数名混ざっているが、非常に少なく戦力にはなりえない。

残念ながら夜になればどういう状況だろうと、撤退する予定になっている。


「えーとですね。偵察に向かった騎士の報告で少し討伐内容を変更する事になりました」

「どのようにですか?」

「も、もしかして本隊が合流…?」

「いえいえ、その逆ですね。

カラミティを除いたLv150オーバーのMobとアナザーグリフォンが5匹姿を消しました」

「カラミティは残っとんのや…」


つまり、俺らが討伐するのは、アナザーグリフォン2匹・グリムドラゴン2匹・カラミティドラゴン1匹という事か…。

夜戦になる可能性は減ったが…まだまだ油断なんてものは出来ない。


「ええまぁ。それと…僕達とは関わりのない事なのですが、姿を消したMob達が近隣都市近くで目撃されました」

「つまり…各都市に分散した…と?」

「ええ、まぁ。もうこれは現地の騎士団に任せるしかないですね。

王都イズモ近くで目撃されていないのが幸いです」

「んん?確かイズモってオウミの直線上にあらへんかった?」

「そういう事です。僕らが討伐に失敗すると…オウミならず王都イズモを危険に晒すという事です。後には退けません」

「うっわ~。責任重大やん?」

「アイリスさんが言うと重大に聞こえませんね」


討伐隊全体には緊張感が蔓延していたが、俺らはアイリスさんのお陰で緊張感の中にも笑う余裕が少しあったようだ。

というか、前衛を担当する隊達の緊張感というか雰囲気が重過ぎる。

正直、近寄りがたい。


「それともう1つ、報告によればカラミティドラゴンは昨日確認された位置から移動していません。

グリムドラゴンとアナザーグリフォンは、大分こちらに近付いているようです。

恐らく僕達の事を感づいていると思います。姿を確認すれば襲ってくる事は間違いないと思います」


「それでは予定迎撃ポイントに移動する!」


アサクラ団長の掛け声と共に各隊は予定の場所まで移動を開始した。

迎撃ポイントは、今の場所から大体2kmほど南西に行った所だ。

野営地に近すぎると巻き添えを食らう可能性があったからだ。







予定迎撃ポイントに着いた俺らを待っていたのは遠くの方に見える、どデカイ山…のような変種カラミティドラゴンとこちらに近付くこれまた馬鹿デカイ変種グリムドラゴン2匹とアナザーグリフォン2匹の計4匹だった。

俺ら討伐隊の姿を発見したのか、アナザーグリフォン2匹が奇声を発しながらスピードを上げこちらに飛んで来る。


「後1分ほどでアナザーグリフォンと接触する。

各隊迎撃用意!射撃隊と支援隊は2匹共撃ち落せ!

地上に落下後、前衛隊は全力で奴らを撃破しろ!

2度と飛ばせるような事はするな。チャンスは1回と思え!」


俺達は迎撃用意と共に上空を見上げる、先ほどまで黒い点だったアナザーグリフォンは拳大ぐらいの大きさまで近付いていた。

正直恐い…それが今の俺の心境だ。

改変によってE/Oでの死=現実の死になった事で全滅という最悪のシナリオが脳裏に浮かぶ。

聞くと見るでは全然違うと実感できた。


横にいるアイリスさんを見る。

いつもの彼女ではなく真剣そのもので別人みたいだった。

彼女も恐いのだろう…まだ戦闘が開始していないのに大粒の汗が体中から流れている。

まぁ、彼女だけでなく俺を含めた全員がそんな感じだ。


俺は、腰に差してある儀式刀・不知火を抜き納刀状態のまま地面に突き刺し、召喚の詠唱に入る。

それを横で見ていたアイリスさんも詠唱に入る。


「我は望む。我が親愛なる…無の精霊ヌエ。我の呼びかけに応えよ。我の名はアキラ=ローグライト。汝の名はツグミさん!」

「我は望む。我が親愛なる風の精霊ウィンシア。我の呼びかけに応えよ。我の名はアイリス=ブルクハルト。汝の名はウィンディ」


上空に雷雲が立ち込め中心部から特大の雷が目の前に落ち、そこからツグミさんが出現する。

今度は、俺達の周囲が目を開けてられないほどに四方八方から暴風が吹き荒れる。

風が止み目を開けるとアイリスさんの前に美しい姿をした女性…精霊がいた。

どちらの精霊もほぼ半裸に近い服装なので目のやり場に困る…。

俺やアイリスさんは、見慣れてしまっているがアズマ副団長の顔がすごく赤い。


「これは殺り甲斐が有りそうなのが相手じゃないかい…」


ツグミさんは、拳をポキポキ鳴らしたり足首を回したりして準備運動をする。

「何?この野蛮人」と言った視線で見ているアイリスさんの精霊ウィンディ。

何か相性悪そうだな…この二人。


「今日も宜しゅうな。ウィンディ」

「ええ…お任せを…マスター」

「あ、ツグミさん。今日はあっちの方の姿でお願いできるかな?」

「あっちか?好きではないが良いだろう…」


ツグミさんは、四つん這いになる。

すると、ツグミさんの毛が逆立つと影がどんどん巨大になっていき、大体20倍ほどになると体の方も変異していく。

そこに現れたのは人間サイズの体から影と同様の大きさになったツグミさん事ヌエが佇んでいた。


『この姿は久しぶりだ…』


討伐隊の中心に巨大な化け物が現れた事で一瞬周囲が混乱するが、

程なくして支援隊が召喚した精霊だと理解し何事もなかったかのように武器を構えなおす。


「ほわ~。すっっごいやん。アキラちゃんの精霊」

「そうですか?」

「うんうん」

「マスター。体が大きいからと言って強いとは限りませんよ?」


何故かウィンディがツグミさんに対して一方的なライバル視をしているようだ。


『ああん!?』


その姿でその凄みはさすがに恐いと思うぞ….



キエェェェェエエエ!!!


上空でけたたましい奇声が聞こえた。

討伐隊の上でホバーリングしているアナザーグリフォンだ。

もう1つの支援隊である魔術師を中心とした隊と射撃隊が各々の攻撃を繰り出す。

ホーバーリングしていたグリフォン2匹は別の方向に回避運動をした。

そして一時的に銃と魔法の射程外にまで飛び旋回してまたこちらに向かっている。


「ツグミさん!」

『任せな!』

「あんたの力見せたり?」

「ええ」


ツグミさんとウィンディは真上に飛び、何か言葉を交わしている。


『どちらが先に墜とせるか勝負しようじゃないかい』

「良いわね。でも良いの?私は”風”の精霊よ?」

『ふん、だからなんだい?』

「後悔しますよ?って事よ!」


2人は別のグリフォンに向けて飛び立った。

その間にも支援隊と射撃隊の迎撃は続いているが、8割は届いていないか避けられている。


「何か相性悪そうやね…」

「ですね」


あ、そうだ。忘れていた。


(ツグミさん、出来れば前衛隊の近くに落としてください)

(面倒だけど、仕方ないねぇ)


ツグミさんは、グリフォンと接触後しばらく牽制するように併走?し、前衛隊のほぼ真上で戦い始めた。

グリフォンと本来のツグミさんは、ほぼ同じ大きさで(まぁ若干グリフォンの方が大きいけど)互角…というか、どちらかというとツグミさんの一方的な攻撃が続いている。

グリフォンは確かに飛行Mobなんだけど、攻撃の種類は対地がメインと言えるようで空でのドッグファイトには向いていないようだ。

攻撃パターンは、「ダイブアタック」「翼を羽ばたいての暴風攻撃」「高周波攻撃」「爪で相手を掴んで高高度から落とす」「踊り食い」の計5つだった気がする。

これを見て分るようにほとんど対地攻撃だ。

敢えて上空で使えそうなのを選ぶと「高周波攻撃」ぐらいだろう。

だが、それもツグミさんの尻尾である蛇が喉笛に噛み付いていて出来ない状態だ。

ツグミさんは、何も考えていないようでちゃんと考え抜いた攻撃を繰り出していた。


「あっ」


ツグミさんが後ろ足でグリフォンのどてっ腹に向けて蹴りを入れたようで、グリフォンがきりもみしながら落下していく。

程なくして地面に落下し、見計らったように前衛隊が一斉攻撃を掛ける。

飛び立たないように槍を持った者達が翼を地面へ固定する為に槍を突き刺す。

それとほぼ同時にもう1つの支援隊の魔術師とこちらのマルカと俺が炎の魔術で翼を燃やす。


落下したグリフォンが翼を燃やされたとほぼ同時に、その真横ぐらいにもう1匹のグリフォンが落下した。

その上空でウィンディは「チッ」と舌打ち後、アイリスの前に着地する。

ついでにツグミさんはというと人型になり、ウィンディが落としたグリフォンを前衛隊に混じりながら暴虐の限りを尽くしている。

本当に戦いが好きなんだなと思わせる嬉しそうな表情をしていた。


「あら、あの大きさが取りえだけの精霊は?」


ウィンディは、ツグミさんの姿を探しながら俺に聞いてきた。


「あそこ…」


俺が指差し、その先を目で追っていくウィンディはツグミさんを目で捉える。


「いつの間に…」

「それにしても凄いやん。アキラちゃんとの信頼度の高そうだし…こりゃ負けてらんないね」

「あれでも、信頼度1段階目なんだけどね」

「マジかいな…」

「……じゃぁ、あの女は私以上だと言うの?」


アイリスさんの事だからこの場面で上位精霊未満の精霊を召喚するとは思えない。

彼女は自己紹介時に精霊の信頼度は全てMAXだと言っていた。

ツグミさんもランクでいえばウィンディと同じ上位精霊だ。

なのに、信頼度MAXのウィンディよりも信頼度1段階目のツグミさんの方が見た限りでは上と言わざる得ない。

無属性…というより多属性の魔法が使える上に物理攻撃も桁違い、そして弱点属性がないというのは精霊にとって強力な武器となる。

何かの属性に限定すれば恐らくウィンディやセラやセスの方が上だろうが、弱点属性が必ずある。


「ぃよっと、風属性ならあんたに負けるだろうよ」

「…ふん!」

「あれ、もう良いの?」


手だけでなく体中グリフォンの返り血で真っ赤になったツグミさんが俺の真横に降り立つ。

見た限りグリフォンは瀕死であるようだが、まだ死んではいない。

まぁ、それも前衛隊の猛攻でしばらくしたら終わるだろう。


「ああ、満足したよ。呼んでくれて感謝してるよ」

「ん、そうか」

「あ、ウィンディさんよ。約束忘れていないだろうね?」

「な、何の事かしら?」


ウィンディの表情が少し引き攣っている。

何の約束をしたのやら…。


「まぁ、大した事じゃないのだが…

取り合えずあんたのおっぱいでも揉ませてもらおうか…」

「「「はぁ!?」」」


ウィンディだけでなくアイリスさんと俺も反応した。

まぁ、俺の場合は…「何アーリアみたいな事言ってるの?」っていう反応なんだけど…。


「いやぁ…アーリアの奴への仕返しに揉み返してやったら何故か好きになってしまってよ。

あ、いや。言っておくがこれでもあたいはノーマルだからな」


流石、アーリア…上位精霊だろうが関係なく胸を揉みに行ったのか…。

という事は、セラやリタにも同じような事をしたのだろうか。

命知らずにも程があるな…。


「アーリア?」

「あ、ボクの契約している精霊の1人ですよ」

「アーリアのは揉み飽きたし、リタやセラは1回した後警戒して揉ませてくれないしな」

「当ったり前でしょ。私も嫌よ」

「約束」

「くっ」


ウィンディがツグミさんに胸を揉まれている間にグリフォンは死に束の間の休息が訪れる。

グリムドラゴンは鈍重故こちらと接触するまで10分ほどある。

その間に負傷者やらの回復や武器の補修などを応急処置とはいえ行っている最中だ。

が、みんなの視線が痛い…というより恥ずかしい。

俺とアイリスさんの横でツグミさんに胸を揉まれ身悶えているウィンディがいる。



穴があったり入りたい気分だ…。

グリフォン戦あっけなくてごめんなさい。

本番はグリムドラゴンからという事で…。


三人称視点の練習作品も書いてます。

よろしければ、そちらも読んで下さい。

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