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『E/O』イオ  作者: たま。
閑章【精霊編】
43/49

第34話【信頼Ⅳ】

遅くなりました。

これで閑章【精霊編】は完結?します。

ザキラ視点です。

嬢ちゃんは、……えーと何だっけか…ああ、そうそう、ゴールドブリザードだっけか

そのMobがいるダンジョンに来たみたいだ。


(違う。ゴールデンリザードだ)


ああ、それそれ。

その…ゴールデンブリザードの痕跡をスキル『追跡』で調べている。

嬢ちゃんが言うにはゴールデンブルドーザーのレベルは1なので『追跡』を持っていれば

スキルレベル1でも追跡が可能らしい。


(ザキラ。だから、ゴールデンリザードだって、何だゴールデンブルドーザーって…。

何なら、金色のトカゲと覚えれば良い)


「さぁな。ところでブルドーザーって何だ?」


(知っているが…何でザキラがその言葉を知っているのかを聞きたい!)


ふむ………何でだろ?

俺様も分らねぇな。


(ん?)


ぉ、嬢ちゃんが何かを見つけたみたいだ。

ゴー…何とかの痕跡か?


(っ、複数人の足跡だ…。レベルはそう高くないな。

恐らく、先に来た傭兵の足跡だろうな)


嬢ちゃんは、そういうとその足跡を追ってダンジョンの奥へ歩き出した。

ダンジョンというには、期待外れな構造いわば暗くてジメジメした感じが全くない、

恐らく初心者に配慮し壁面?に松明がある。


(ダンジョンだけ初心者に配慮してもね…)


所々暗い所があっても狭い範囲だな。

しばらくして、三叉に分かれるところに出たところで嬢ちゃんは足を止める。

そして、また『追跡』を使用した。


嬢ちゃんの雰囲気が少し変わった。

嬢ちゃんを直接見た訳ではないが、周囲の空気というのだろうか、それが一瞬少しだけ変わった気がした。

まぁ、気のせいかも知れんがな。


「どうした?嬢ちゃん」


(1つは、ゴールデンリザードの足跡)


お、もう見付けたのか?

運が良いじゃねぇか。


(もう1つは、さっきあった傭兵達の足跡。

ゴールデンリザードを追っている感じに右の通路へ向いているな)


ほう、もしかしたら嬢ちゃんの出番ないかもな。

すでに、ゴー何とかを狩っている可能性があるしな。


(じゃ、最後のこの足跡は何だ?)


あん!?もう1つ足跡があるのか?

おいおい、嬢ちゃんの話では、他にMobはいないって言ってたじゃねぇか。


(数が多い…20人…?いや、もっといるな。

ゴールデンリザードと傭兵の足跡を踏み消すように同じ方向へ向けて続いている)


「…って、事は」


(結構、急を要するって事だよ)


嬢ちゃんは、足跡が向いている方へ向けて駆け出した。

(ハァハァハァハァ………!?)


嬢ちゃんが走り出して僅か数分で追いかけていた足跡の1つである傭兵達を発見した。

まぁ、まともに直視できないほどの凄惨な場面なんだけどな。

俺様は、こういう光景をチンピラどもの縄張り争いで見慣れてはいるが、嬢ちゃんはあまり経験はないだろうな。



傭兵達は総勢4人、1人は背中から斬り付けられすでに絶命している。

霊体ゴーストが見えない…すなわち死亡から24時間経過しているという事だ。

嬢ちゃん達人間は、法術師でない限り霊体を目視する事が出来ない。

法術師でも特殊なスキルを持っていないと見る事は出来ないがな…。

でも、俺様達精霊は普段から目視出来る…それが見えない訳だからそういう事だ。


奥にもう1つ死体があった。

首から上がない…こちらもすでに絶命している。

即死だろうな。


その横には、矢が数本背中に突き刺さっている。

こちらも霊体が見えない…すでに絶命しているだろう。


さらに奥の方にもう1つ死体がある。

炎属性の魔術による焼死ってところだろう。

顔の判別が出来ない程丸焦げだ。

残念だが、これも霊体が見えない…死亡している。


(おかしいな…装備品は5人分あるのに4人しかいない…)


嬢ちゃんは、4人の遺体の近くまで行き状態を調べているようだ。

残念だが、4人とも死んでいるぜ。


(あ…この人生きてる…。でも、何とかしないとこのままじゃ…)


嬢ちゃんは、背中に矢が数本刺さった傭兵の傍に行き胸の所に耳を当てていた。

そして、懐から回復ポーションを取り出し、閉じていた口を開けそこへ流しこむ。

飲ませた半分ほどは、口の端から漏れていたがしばらくしてから咳き込んだので、少なくとも死なずに済んだ様だ。

そして、矢を引く抜き刺さっていた箇所に手を当てヒールを唱え傷を塞ぐ。



傭兵の無事を確認し終わった後、嬢ちゃんは見付からない残り1人を探す為に周囲を調べ始めた。


(ザキラも手伝って…)


「仕方ねぇな。ほれ、呼び出しな」


(我は望む。我が親愛なる…風の精霊ソードレス。我の呼びかけに応えよ!我の名はアキラ=ローグライト。汝の名はザキラ。)


嬢ちゃんの声は、大きくはなかったがダンジョンの構造上の理由で周囲に声が響き渡っていた。

そして、俺様は外の世界に召喚される。


「空気が淀んでいやがるな…」


空気の流れがほとんどない。

俺様は、風の精霊だから空気は澄んでいる方が良いし風の流れがあった方が良い。

まぁ、力が発揮されませんっていう話じゃないが、俺様が強くなれる条件みたいなやつだ。

ちなみに、俺様には風属性の魔法は利かない…いや正確には、風属性の魔法は吸収し自分の糧(強さに変換)にできる。


「ん?くっせぇ臭いが奥からするな…」


人間の体液と血の臭いが混ざった嫌な臭いだ。


「どうした?」


「あっちが妖しいぜ」


俺様は左奥を指した。

左奥は、暗く何故か松明の火は消えていた。


「あ…ちょっと待ってザキラ。人の気配がする…。

一人二人じゃない…もっと複数……!?」


『気配察知』のスキルと共に目を凝らして左奥を見ていると、数人の足跡と話し声が聞こえてきた。

空気の流れがないので微かにしか聞こえないがじょじょに近付いてくる。


「おい、さっきは気のせいだと思ったんだがよ…。こっちから女の声がしなかったか?」


「俺は、聞こえなかったぞ」


「俺は、聞こえた気がしないでもないな」


「ぉい、新人。ちょっと先に行って見て来いや」


「へい」


4人?いや5人か…その内の一人恐らく新人と呼ばれた何者かがこちらへ小走りで近寄ってくる。

そして、数秒後に左奥の暗闇から追い剥ぎの類であろう小汚い装備をした猫背の小男が出てきた。


「!?」


一瞬、驚きの表情をし小男は嫌らしい目付きで嬢ちゃんの身体を値踏みした後、後ろを振り返る。


「兄貴!女がいやすぜ!」


「なにぃ!?」


残り4人の足跡が小走りで近寄ってき、暗闇から出てくる。


「ひゅ~、少々幼いが良い女じゃねぇか」


「デリク。この女、エルフだぜ」


兄貴と呼ばれた男は、デリクと言う名前らしいな。

恐らくこのグループのリーダー的存在なんだろう。


「へへ、こりゃぁ、まだまだ楽しめそうだな…。

お頭!お頭ぁぁ!!」


デリクと呼ばれた男は、後ろを振り返り暗闇の奥に向かって誰かを呼ぶ。

まぁ、”お頭”と呼んでる事からこいつらのボスなんだろうな。


「ちぃ、うるせぇぞ!デリク!最後に一発犯ってんだから後にしろや!」


「お頭!そんな死に掛けなんて放っておいてこっちに来て下さいよ。

活きの良い女がいやすぜ!!」


「なっにぃぃぃ!?」


死に掛け?って事は、奥に最後の一人がいるって事か。


「…嬢ちゃん」


「分ってる。でも、何人いるか確かめないと下手に手出しは出来ない」


まぁ、そうだな。

最後の一人…女を助ける為に無闇に暗闇へ入ると危険だ。



他の複数ある足音よりも一回り大きい足音が先頭となり暗闇の中から現れる。

お頭と呼ばれた男は、恐らくこのブ男だろうな。


「ほぉ、こりゃまた上玉じゃねぇか。

これで当分楽しめそうだな」


嫌らしい表情、筋肉質だがだらしなく出た腹、色々な体液を付着したアレを丸出しにして近寄ってくる。

手には大型の斧を携えているが、手入れは全くした様子のない刃こぼれだらけでどちらかというと鈍器に近い武器だ。

このブ男の後ろには、20人弱のこれまた小汚い連中がいる。

さっきの連中も併せて30人いるかいないかだろうか…。


「レベルは30~40ぐらいか…」


嬢ちゃんは、『気配察知』を行い、奴等のレベルを確認したようだ。

今の嬢ちゃんにとって、レベル30、40なんて楽勝な相手だ。

が、ここが比較的狭いダンジョンで空気の流れがほとんどなく、

怪我人が2人と相手が30人というのが嬢ちゃんを少し不利にさせている。

まぁ、俺様がいるとはいえ、どう戦うかがポイントになりそうだ。


「野郎共、武器を取れ。多少、傷ついても構わん。

捕らえた者は、俺の次に犯る権利をやろう」


ウオオオォォォォォォ!!


ダンジョン内に盗賊どもに声を響き渡る。



が、今にも襲い掛かろうとした盗賊共と俺様達の間に、空気を読めなかったゴールデンリザ…リザ…ルド?が悠々気ままに横切る。

俺様達と盗賊達の視線は、ゴールデンリザード(で合ってるよな?)に注目する。


「ふぇ!?」


嬢ちゃんが素っ頓狂な声を上げ、盗賊⇒ゴ(以下略)⇒怪我人を交互に目が泳ぐ。

あまりにも突然過ぎて、どれを最優先事項にするか混乱しているようだ。


「しょーがねぇな。嬢ちゃんはゴ(以下略)を追いな。

俺様が、怪我人とこの連中を引き受けてやるよ」


「あ、えーと。うん、頼む。

ザキラ…君を信頼している。

ボクが、戻ってくるまで何としてでもこいつらを止めてくれ。

それと怪我人を死なせるなよ」


「分ってらい。だから、早く行きな!!」


「頼んだ!」


嬢ちゃんは、ゴ(以下略)を追い、暗闇に消えていった。


「ちょ、こら待ちやがれ!!」


盗賊共は俺様には気もくれず嬢ちゃんを追おうとしたが、俺様が立ち塞がる。


「まぁ、待ってくれや。

俺様と少し遊ぼうぜ」


「てめぇには用はねぇんだよ!

どきやがれ!」


そう言えば、嬢ちゃんが「頼んだ!」と叫んだ瞬間、俺様の発揮されていなかった一部の力が解放された気がした。

そう…嬢ちゃんからのと俺様からの信頼度が4段階目に達したという事だ。

俺様の獲物が、ドスから長ドスに変化し、鋭い風が俺様の身体を包み込む。

身体が軽い…今までよりも速く動けそうだ。


「はっはっは、俺様が通す訳ねぇだろっ!」


俺様は、自慢のリーゼントを解きほぐしオールバックに整えなおす。

4段階目になって意識に変化が…というのもない訳ではないが、

速く動けるようになれば自慢だったリーゼントが視界の邪魔をしそうだった。

あ、これは内緒だからな?


俺様は長ドスを肩に担ぎ、左手を前に突き出しチョイチョイと指で盗賊共を手招き(挑発)する。


「「「「てめぇぇぇ」」」」


盗賊どもは、俺様の挑発に乗り嬢ちゃんからの意識が外れる。


「死に晒せぇぇぇ!!」


ああ、何だっけか、そうそう、デリク。

そう呼ばれていた男が俺様に斬りかかって来る。


何だ?その攻撃は…。

私の腹を掻っ捌いて下さいと言わんばかりの腹が俺様の目の前にある。

当然、俺様はこのチャンスを逃す訳もなく、一瞬で長ドスを鞘に納め居合放つ。

ああ、忘れていたが、この長ドスは居合刀(を模した風の刃)だ。


へへ、身体が軽いぜ。

デリクを斬り伏せ、盗賊どもに中に飛び込んだ勢いのまま周りの盗賊も一掃する。


「なっ…にぃ!?」


お頭と呼ばれていた男は、驚愕の表情を浮かべる。


「野郎共、固まるな!」


良い判断だが、遅ぇよ。

背中を向けた数名の盗賊を斬り伏せる。


残り20ちょいか…これなら楽勝だな。


あれから40分弱、頭を含む全ての盗賊を狩り尽くし、

暗闇の奥で犯し尽くされ虫の息だった女傭兵を介抱している最中に嬢ちゃんは戻って来た。


手にゴ(以下略)の尻尾を掴み肩に担がれていた。


「なんだ…。あんなに嫌がっていたのに結構簡単に捕まえているじゃねぇか」


「まぁ…ね。

あ、この女性ひとは大丈夫なのか?」


昔の教訓を活かしたのか…それとも逃げ込まれる前に維持になって捕まえたのか…。

まぁ、どっちでも良いか。

早く帰れる事にはこした事はない。


「ああ、問題ねぇよ」


連れ出した後、嬢ちゃんの置いていったポーションをすぐに飲ませたからな。


「今は眠っているだけだ」


「そう…なら。ここで一泊した後、2人が目を覚ましたら出るとしよう」


嬢ちゃんは、野営の準備を始める。


「ああ、嬢ちゃん。俺様は戻るとしよう。

ここならMobは出ないし俺様達は必要ないだろ?」


「そうだね。ありがとう。ザキラ」


ありがとうか…。

その言葉だけでも十分嬢ちゃんからの信頼を感じるな。

少し急場凌ぎ感が漂っていますが…どうだったでしょうか。

現在、残りの改稿と同時に新章のアレコレを考えている最中です。

もうしばらくお待ち下さい。

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