表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『E/O』イオ  作者: たま。
序章【改変編】
36/49

第27話【契約】

誤字脱字・表現の誤りにはご容赦願います。

今年最後の更新です。

今回は少し長文です。

暗闇の中、人の話し声で俺は目を覚ました…。

確か、レドルフと戦闘したのが昼の12時少し前ぐらいだった筈。

でも、太陽の位置からして今はどう見ても朝って感じだ。


で、どうも俺は枯れた草の葉の上で寝かされているようだ。

周りを見渡すと、そこは湖の畔がある少し大き目の広場だった。

荷馬車が4台並び、広場中央には焚き火跡と簡易的な調理場があった。

男女含めて20名いるかいないかの人がその広場にいた。

ちょっとした集落みたいな感じだな。


その内の1人が俺に近寄ってきた。

見た感じ、傭兵でも商人でもない一般人といった感じで、

20代後半から30代前半辺りのヒューマの女性だ。


「どうです。具合の方は?

応急処置しか出来ませんでしたけど」


「…応急処置?」


背中には、薬草を練り潰して出来た塗り薬と包帯が巻かれ、右足は添え木で固定されていた。


「そろそろ痛み止めが切れる時間ですね。少々お待ちを…」


「あ…それは不要です。自分で治せますので…」


俺はMPの残量を確かめた後、ヒーリングブレスを唱え体中の傷を癒した。

ちなみに、ヒーリングブレスは傷だけでなくちょっとした部位欠損ぐらいまで完全に癒せる。

なので、粉砕骨折ぐらいは簡単に治せる。


「法術師なのですね…」


「ええ、まぁ」


「良かった…。ここでは治せないからどうしようかと思ってました…」


「え?ここには法術師がいるのでは?」


おかしいな。

レドルフに掛かっていたハイエールやリジェネイトは誰が掛けたんだ?


「あそこに居られる騎士さんが法術も使える方なのですが…。

強化法術を専門にしているらしいです」


え、騎士も行方不明になっていたなんて初耳だぞ…。

まぁ、レドルフと交戦していたし捕まっていても不思議じゃないか…。


傭兵と違って集団行動が基本の騎士は、万編なく習得するよりも専門的に習得する事が多いらしい。

回復法術が使えない法術師がいてもおかしくはないのだ。

基本、傭兵はオールラウンダーで騎士はスペシャリストと思って良い。

一般的に、騎士とは全身に鎧を纏い剣や槍も持って馬に跨る姿を思い浮かべるかもしれないが、E/Oでいう騎士とは国家に使える人…国家公務員または警察や自衛隊と思って良い。

だから、剣や盾を持った事がなく法術しか使えなくても騎士と呼ばれている。


「あ、お腹空きませんか?

朝食をお持ちしますね」


女性は荷馬車近くで談笑している輪に入った後、食事が乗ったと思われるトレーを持ってきた。


「ごめんなさいね。食料事情が良くないからこんな物しかないのよ」


トレーの上には、焼き魚と木の実の盛り合わせとコーヒーっぽい飲み物が置かれていた。


「いえ、御気になさらず。頂けるだけでも有難いです」


「では、こんな場所ですけど、くつろいで下さいね」


女性は、にっこりと微笑んだ後、談笑している人達の元へ向かった。



渡された食事を取りながら、現状把握の為に色々考えてみた。


恐らくだが、あそこで談笑している人達は、行方不明となっている人達で間違いなさそうだ。

あの騎士を除けば人数的に合致する。

それに、あの4台の荷馬車…確か、商隊が2組行方不明になっていた筈だから間違いないだろう。


そういえば、あの精霊憑きとレドルフはどこにいるのだろうか。


「あ…」


湖を挟んだ丁度広場の反対側の岸にレドルフがいた。

見た感じ、狂人化はしていないようだ…。

むしろ、小鳥と戯れていないか?


では、あの精霊憑きはどこだ…?


「ふむ、思ったより元気ではないか」


俺の背後で精霊憑きの声が聞こえたので振り返えろうとしたら、

何故か俺の胸が揉まれていた…。


「ちょ、おま…何をするっ!?」


「ふむ、健康そうで何よりじゃ…」


精霊憑きはそう言いながら、尚揉んでくる。

き、気持ち悪い…。


「くっ…」


俺は精霊憑きの手を振りほどきフランヴェルジュに手を掛け…た?


「あれ?」


フランヴェルジュがない………。

あ、そういえばレドルフに持ち上げられた時に地面へ落としたような…落としてないような…。

でも、手元にないのなら落としたのだろう。

仕方ない…。

俺は、尻の方に差している蛇腹剣の方に手を掛けた。


「まぁ、待て。妾は別に御主を取って食おうなどとは思っておらぬよ」


右足を粉砕骨折させておいて、その言葉は信用出来ないな。


「…何?」


「待てと言っておろう。取り合えず、妾の話を聞け。

御主が気になっておる事を簡単ではあるが説明してやろうと言うのじゃ」


「ふーん」


「まぁ、なんじゃ。妾を召喚出来そうな精霊使いを探しておったのじゃよ」


「……………ん、それだけ?」


「うむ。それだけじゃが?」


「いやいやいや、何でそれだけの為にレドルフを狂人化させてたり、誘拐みたいな事してるのさ」


簡単にも程というものがあるだろう。

肝心な所がさっぱり分らないじゃないか。


「霊体のままだと何かと不便…というか千年ほどここに留まるのは少々飽きてのう。

残念な事に、この娘は精霊使いではないのじゃが、エルフじゃったので依代として憑依させて貰ったのじゃ…」


エルフ…という事は、エルフ族のみ精霊魔法が使える事を考えると、憑依するにはある程度の霊力が必要という事か。

けど…。


「憑依って…簡単に言うが精霊はそんな事が出来るのか?」


憑依できるなんて今まで聞いた事がない…。


「ほとんどの精霊は出来ぬな…。

妾を含めて闇属性かつ精神系の魔術を使える精霊のみよ」


「取り憑かれる方は堪ったものじゃないな…」


「無論、この娘には許可を取っておる…事後承諾じゃが…。

まぁ、駆け出しの傭兵のようでな戦力にならなくてのう。

憑依したとはいえ、妾の魔術だけでは心無くての。

この森で彷徨っていたレドルフの奴を利用させて貰ったのじゃ」


レドルフは何でこの森で彷徨っていたんだ?

ここはロードグリアード帝国から大分離れた場所なのに…。


「では、精霊使いを探すためにレドルフを操って誘拐していたと?」


「そうなるのう」


「そんな事をしなくても精霊使いの方からやってくるだろう?」


「……先ほども言うたがのう。

千年待って誰一人来ないのに、これから先来ると思うかの?」


あ、もしかして、改変後に現れた精霊なのかも知れないな。

都市近くで依頼も結構な数が出されているようなエリアで、

入ったプレイヤーが全く石碑に気付かないなんて事はありえない。


それに潜在開放や魅了など禁呪指定されている魔術を使える精霊を放っておくなんて考えられないしな。

というか、何で母はこの精霊の存在を知っていたのだろう。


「その千年の間に古代エルフ族は来なかったのか?」


「古代エルフ族?いや、知らぬな…」


この精霊の先代と契約したのか本当に噂でしか知らなかったのか…どちらかと言う事か…。


「ん?というか、あの人達は何で解放しない?

レドルフやその娘がいれば、他の人は必要ないだろ」


「そこはアレじゃ…。話題作りってやつじゃの。

1人2人行方不明ぐらいでは国は動かんじゃろ…。

レドルフを討伐する為に幾多の人がこの森に入りよる。

その中に精霊使いが必ずいる…と踏んだんじゃよ」


それが俺とアヤカって訳だな。


「あの人達にも魅了を掛けてるのか?」


「いや、掛けておらぬよ。

ただし、この広場から遠く離れる事が出来ぬようにはしておるが…。

というか、この娘を通じて事情を話したら不本意ではあるが同情されてのう。

しばらく、この茶番に付き合って貰っておるのじゃ」


まぁ、千年も精霊使いがやって来なかったら同情してしまうよな。


「でじゃ、御主、妾と契約を結ぶが好い」


「はい?」


「さっきの会話の流れで察しは着くじゃろう」


「いや、まぁ。それはそうだけど…」


「何じゃ、歯切れが悪いのう」


「1つ聞きたい…。何でボクなんだ?

ボクの相棒の方が強いし、精霊魔法も熟知しているが…」


アヤカは4体しか精霊と契約していないが、どれも上位の精霊だ。

俺は今だ上位と契約をしていない。


「それは好みに決まっておる。

ああいうのも悪くはないが、熟しきっていない蕾のような少女の方が好きなのじゃよ」


「はあ…。つまり、どういう事?」


ロリコンって事か?

でも、こいつ一応性別が女性に見えるから…もしかして、百合の精霊!?


「お前は百合の精霊って事か?」


「百合?先ほども言ったが妾は闇の精霊じゃよ」


「あ~、いや、何と言うか巧く言葉にする事が出来ないが、女しか愛せない女って事?」


「ふむ、強ち間違ってはおらんが、妾は男もイケる口ぞ?

まぁ、妾に見合う男なぞ見た事はないがの。

御主にも分り易く言えばの、妾と契約してその小さな胸を揉ませろ…という事じゃ」


「余計に分らんわ!!」


それに、小さな胸は余計だ。

というか、お前もそっち系かよ。


「安心せい。妾と契約すれば毎日揉んで胸を大きくしてやるわい」


しなくて良いよ…。

契約してやろうかと思ったが、やっぱり辞めておこうかな。

召喚する度に揉まれるのも嫌だし…。


「精霊使い、早く見付かると良いな。んじゃ」


取り憑かれている女性には申し訳ないが俺は立ち去るとしよう。


「まてまてまて。半分冗談じゃ。妾は早くこの森が出たいだけじゃ」


半分は本当なんだな…。


「それに、妾と契約せねば御主とてこの広場から出られぬよ」


「なっ!?」


どうする…。

でも、当初の目的はこの精霊と契約する事だったのは間違いない。

だが、こんな精霊と契約しても大丈夫なのだろうか…。

平気で人の心を弄び目的の為に手段を選ばない。

そして、ロリコンで百合の女性の胸に何故か固執する。

まぁ、俺の選択肢は、契約するかしないかの二択しかない。


「す、するにしてもお前の石碑はどこにあるんだ?

見た限り無さそうだが…」


「ふむ。それもそうじゃな。妾に着いて参れ」


精霊憑きの女性は俺に背中を向けると森の方へ歩き出した。

入って大体5分ほどで目的地に着いたのか足を止めこちらに振り返る。


「ほれ、多少みすぼらしいがこれが妾の石碑じゃ…」


確かにみすぼらしい…。

石碑が半分辺りで崩れ落ち崩れていない部分も所々ひび割れ緑色の苔が貼り付いている。

確かにここまで面影がないと誰も石碑だとは思わないな。


仕方ない…。


「はぁ、分った。契約してやるよ。

ただし、条件がある。まずはボクにその精神魔法を掛けるなよ」


「当然じゃ。契約者に術を掛けるなど決してせぬわ」


これは、精霊達の掟のようなものなんだろうか。

何当たり前の事を言ってるんだ、というような雰囲気だった。


「ボク以外の人に対してもボクがお願いしない限りするなよ」


「努力しよう」


うわ、放っといたら魅了とか掛け捲り兼ねないな。


「召喚の際、ボクの胸を揉むとか冗談だよな?」


頼む。冗談であってくれ…。

そんな羞恥プレイは真っ平ご免だ。


「冗談の訳がないわい。妾の生きがいを奪う気か!」


どこぞのエロジジイみたいなセリフを吐きやがった。

しかも、表情が正に”クワァ”という擬態語が似合いそうなほどの凄い形相だった。


「じゃ、契約しない」


「ちっ、分った分った」


絶対、分ってないようだが、まぁ今は良い。


「ボクが契約したら、あの人達を解放しろよ」


「初めからそのつもりじゃ。安心せい」


「はぁ、ほら。彼女を解放して石碑に戻れよ…。

契約できないだろ」


憑依しているという事は仮契約のようなものだ。

このままでは二重契約になり兼ねない。

それに、取り憑いた状態で強引に引き剥がしたら、何かしら後遺症が出てもおかしくないだろう。


「ふむ、それもそうじゃな」


精霊がそう言うと”フッ”と女性の身体から霊体と気配が消えた。

それと同時に彼女は地面に倒れる。

まるで操り人形の糸が切れたかのように…。


そして、崩れた石碑から精霊の霊体が現れたのを確認し、俺は契約を開始した。


「あ、お前は何て言う精霊なんだ?」


「妾か?ベルセウスじゃ」


ベルセウスか…。

なんて言う名前にしようか…。

何かこう黒々した雰囲気があるし、そうだ!

昔、プレイしたゲームに出てた女好きの魔女から取ってアーリアって名前にしよう。


「古の誓約に基づき闇の精霊ベルセウスと契約を結ばん。汝の名はアーリア。我が名はアキラ=ローグライト」


契約を終えた瞬間、俺とアーリアは光の柱に包まれた。

そして、一瞬で辺りが暗くなり目の前にいた筈のアーリアは俺の背後に回り、

む…胸を揉んできた………。


「これから宜しくのう…」


アーリアは、耳元そう言うと姿を消した。

契約後の演出も精霊によって様々なんだな…。

どうだったでしょうか。


今年10月に本作品を始めました。

拙い文章と表現にイラついた方や見限った方も居られるかもしれません。

でも、この27話まで呼んでくださった方々、本当に有難うございました。

来年も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ