第23話【木狼】
誤字脱字・表現の誤りにはご容赦願います。
大分、遅くなってすみません。
私の乏しい知識で魔法の詠唱文を考えるのに苦労しました。
闇の森に行く前に新しい武器を確保しなければと我が家の倉庫へ赴いた。
今回は、どういうものをチョイスするか…
取り合えず適当に候補を選んでそこから吟味するしよう。
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◆神刀・桜吹雪・兼六
ベース;打刀
生産者:フブキ=サクラ(プレイヤー)
耐久:420/420
攻撃力:950
必要能力:腕力100、脚力120、器用80、敏捷100
備考:神刀効果、振るう毎に桜吹雪が舞うエフェクトあり、花びらにダメージ有り(x0.25倍)
生産者コメント:私の造った刀でも最高の出来です。
まずは、桜吹雪・兼六だ。
以前、夢幻刀と争った桜吹雪の姉妹品だ。
とはいえ、性能は段違いだ。
生産者コメントを見れば分ると思うが、フブキ=サクラが造った最高傑作だ。
ちなみに、サクラ作の歴代キャラ全て桜吹雪という名前の武器を造っている。
兼六は、石川県の桜の名所”兼六園”から来ていると購入時に聞いた。
で、姉妹品は兼六の様に桜の名所の名前の一部が桜吹雪の後に付く感じだ。
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◆神刀・夢幻刀
ベース:居合刀
生産者:イットウ=シホウイン(プレイヤー)
耐久:480/480
攻撃力:1200
必要能力:腕力90、脚力120、器用110、敏捷110
備考:神刀効果、刀身を視認出来ない。居合時攻撃速度2倍
生産者コメント:夢幻刀最高傑作。
こちらは、あの夢幻刀の試しじゃない方、本番で作ったモノだ。
見ての通りプレイヤー生産品にしては攻撃力がかなり高い。
居合い時に攻撃速度が2倍になるのは、居合を多用する俺としてはかなりお得と言える。
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◆魔杖・フランヴェルジュ
ベース:地獄焔の杖
生産者:エルネス=ワークナー(プレイヤー)
耐久:350/350
攻撃力:1050
必要能力:腕力140、詠唱110、魔法力130、魔力90、法力90
備考:魔杖効果、炎属性詠唱時ワンスペル発動可能。ただし消費MP2倍、耐久が1減少
魔刀効果、刀身に炎を宿す。状態異常「火傷」+50%
唯一級効果(杖)、二重詠唱可能。一定確率で消費MP0
唯一級効果(刀)、炎の開放(2m)、スティール以下の金属融解
生産者コメント:唯一級の杖に唯一級の刀を仕込みました。俺の最高傑作だぜ。ヤホーイ
次は、フランヴェルジュ。
俺の7代目キャラであるエルネスの最高傑作だ。
ああ、生産者コメントは気にしなくて良い。
完成した時、かなりハイテンションでその場のノリでついあんな事を書いてしまった。
少し後悔している。
貴重な唯一級を2つ組み合わせたので効果はプレイヤー生産品としては段違いの性能だ。
効果が闇焔に近い性能なので将来的な事を考えてこれを選択するのもありだ。
実は、フランベルジュという炎属性の西洋剣(名品等級NPC生産)があるが、それと区別する為にベをヴェに変えてある。
フランヴェルジュは、それぞれパーツ毎に分解した後に組み合わせるだけなのだが、
合わせれば出来上がる訳でもなく余ったパーツを溶かして一旦材料に戻し別のパーツとして接合部分に組み込むのだ。
新たに材料を用意し接合部分に使用した際は、唯一系の効果全般が消滅した。
同じ材料でも結果同じだった…。
で、余ったパーツで材料を作ると成功したという事だ。
俺を含めこの手法を知っているプレイヤーは他人に教えないだろうし、
多分知っているプレイヤーは多くないだろう。
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◆名刀・朧
ベース:長刀
生産者:リュウヤ=オボロ(プレイヤー)
耐久:600/600
攻撃力:1000
必要能力:腕力60、脚力40、器用80、敏捷60
備考:名刀効果、スティール以下斬鉄
名匠効果、性能2段階向上
生産者コメント:名匠後、初めての作品。
最後に、朧だ。
名匠の通り名を取得したリュウヤ=オボロというプレイヤーの作品だ。
性能や効果は、普通に見えるかも知れないが、要求能力を見れば分るとおり
低いレベルでも扱える割には性能が高い。
特に、耐久値には目を見張るものがある。
ステータスには表記されていないが、刀身が2mぐらいあるほど長い直刀なのだ。
名匠により2段階性能が向上している。実質、1.5倍ほどの性能と言えるな。
彼が造ると基本武器であろうと名品級に昇華するのだ。
神刀(名品級最高性能)を造ると恐らくだが、叙事詩級の性能になるだろう。
とはいえ、効果は名品止まりだが…。
ちなみに、朧は何本かある朧シリーズの第一作目だ。
さて、この4つから選択するとしよう…
見た目重視なら桜吹雪だろうな。
ピンク色に淡く光る刀身、振るうと花びらに模した光が散りばめられる。
さらに、兼六は花びら自体にダメージ判定があるから性能も悪くない。
性能は、夢幻刀とフランヴェルジュだな。
居合を重視するなら夢幻刀で決まりだ。
魔法重視ならフランヴェルジュだな。
コストパフォーマンス(修理費用)は、朧だな。
初めミスリルで出来ていると思っていたが、実が真鉄製だった。
純度が100%とはいえ鉄なのは変わらないので、
前者3つ比べれば比較的に手に入りやすく安価だ。
困ったな…、どれも魅力的だ。
第一候補はフランヴェルジュだ。
次点で夢幻刀と桜吹雪だ。
朧は今回外そう。
「どれにしようかな、神様の…(省略)」
適当に相応しいやり方でフランヴェルジュに決定した。
闇焔の練習と思えばこれで全く構わないだろう。
実は、真空波の事なのだが、属性武器を使うと属性に応じた波になるのだ。
フランヴェルジュでいうと炎属性だが、真空波が炎を纏った熱波に変化する。
まぁ、もし月守流居合剣術に蛇腹剣が対応すると属性が付与されていた場合、想像を絶する事が起こりかねない。
よし、武器を決定した事だしアヤカに合流するかな。
アヤカは今道具屋などへ買出しに行っており酒場兼傭兵ギルドで落ち合う予定だ。
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「待たせたか?」
「まぁ、そこそこね。
で、持って行く武器は決まったの?」
アヤカは視線を俺の腰へ落とし武器を確認した。
「見た事のない武器ね…これはロッドかしら」
「半分正解だな。ロッドでもありイスカ刀でもある。
エルネスの作品だよ」
「へぇ~これがねぇ」
エルネスの時はアヤカとほとんど会っていなかった。
時代が変わった時に一度会った後は、ずっと遠距離会話で連絡し合っていた。
だから、アヤカはエルネスが武器職人キャラだという事以外知らないのだ。
「それにしても、やけに凝ってるわね」
「唯一級を組み合わせたからな…」
確かに唯一級だけに装飾は凝った造りをしてる。
「え、そんな事できるの?」
「出来るか出来ないかなんてやってみなければ分らないだろ…。
だから、やってみたのさ。ま、色々失敗したけどね」
「なるほど。じゃ、行きましょうか」
反応薄っ。
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俺とアヤカは、南門を出て丁度闇の森に入る少し手前まで来た。
「今回はアキラには厳しいMobもいるし手伝う事にするわ」
「ああ、頼む。取り合えず、野営地を目指そうか」
「ええ」
俺達は、道沿いにあるだろうと思われる野営地へ向かって歩き出した。
俺の勘が正しければアースガントに関する何かの手がかりが、この道沿いか野営地付近にある筈だ。
行方不明になっている商隊は、道を外れて進むと思われないからだ。
大体30分ほど奥へ進んでいると木の上ら辺から殺気交じりの視線を感じた。
恐らくウッドウルフだが、襲う気配はなくずっと見張っているという感じだな。
「…少し鬱陶しいわね」
「だな。けど、目視じゃさっぱり分らないな」
「ええ」
「少し走るか…。
ウッドウルフの気配が後方に集中したら俺が木を切り倒すからアヤカは倒れた木に目掛けて矢の雨でも降らせてくれ」
「分ったわ」
アヤカの了承の声と同時に俺達は走り出した。
一気に100mほど駆け抜け気配が後ろになったと同時に俺は振り返り技を繰り出す。
『居合・伍之太刀』
俺は草薙ぎの居合を繰り出し、真空波が……出ずに炎を纏った熱波が後方の木を切り倒さず一帯を焼き払った。
属性武器は、真空波でなかったのを忘れていた。
「あ…」
「あ~」
木が燃える臭いと肉が焼ける臭いがあたりを充満していった。
「……矢必要?」
「いや、必要ないかも」
燃えてしまうと皮の剥ぎ取り出来ないな…。
今後からは、炎以外の魔法かザキラを召喚して彼にやらせようかな。
「毛皮、剥ぎ取れそうにないし先へ進むか」
「そうね」
俺達は、この惨状をなかった事にして先へ進んだ。
そして、1時間ほど歩いていったがウッドウルフの気配もなく順序よく先へ進めた。
「アキラ、止まって」
「どうした?」
「囲まれれてるみたい…それも結構な大群に。
多分、ウッドウルフと思うけどディテクトで確認して貰えないかしら」
俺の気配察知のスキルレベルが低い為、気付いていなかっただけだったようだ。
「了解。女神ヴィーナスの名において、見えざる者を映し出せ…ディテクト!」
ディテクトを発動させるとウッドウルフの群れが俺達を中心に80mほど離れて囲んでいた。
「これは…結構数が多いな」
「大体で良いからどのくらいいるの?」
「60弱ってところかな。俺達が歩みを止めたのに気付いたようだ。
包囲網を狭めてるな」
それにしても統制取れすぎだろ。
リーダー格のウッドウルフでもいるのかも知れない。
改変したのだからそういったMobが出現している可能性は大いにある。
「どうする?」
「分かれて戦いましょう。その方がお互い戦いやすいし」
「なら、俺は右の中へアヤカは左の中へ行こう。
終わったら野営地で合流だ」
「わかったわ」
俺達は同時に道から外れ森の中へ飛び込んだ。
俺の予測が確かなら前方180度50mほど先にウッドウルフの群れがいるはずだ。
さらに20mほど駆け抜けた後、足を止めて魔術の詠唱に入る。
来るのが分っていると対処がし易い、先制して一気に片付けよう。
フランヴェルジュに付いている特殊効果で2つの魔法を同時に詠唱出来るようになっているので、
詠唱するのは風と雷の範囲魔術の2種類だ。
「我に纏いし雷の鎖よ、我望みに答え敵を拘束せよ」
「重なりし風の刃よ、我が敵を切り刻み肉片とせよ」
前者は、詠唱者を中心に円状に広がる鎖の雷を放つ中位の雷属性魔術だ。金属製の防具を着た者に持続ダメージを与える特性がある。
後者は、前方扇状に幾重にも重なる風の刃を放つ中位の風属性魔術だ。居合の真空波を少し強力にしたような感じだな。
「チェーンライトニング」
まずは、ウッドウルフが俺に近付いてきたのを見計らってチェーンライトニングで先制をかけた。
これだけでは、殺しきれないだろうが…。
「ヴァオレットゲイル」
間髪入れず前方へヴァイオレットゲイルを放つ。
これで同レベル帯のMobなら殺せる筈だ…。
ヴァイオレットゲイルの範囲外のMobに対しての迎撃の為に再び詠唱を始める。
次は土属性魔術で行こう。
「聳え立つ鋭き大地の御手よ、我を敵から護り抜け。ロックトゥース!」
鉤爪状の岩が、俺へ目掛けて飛び込んできた複数匹のウッドウルフを釘刺しまたは切り裂いた。
これで残るは、最初の4分の1ほどである8匹に減った。
後は近接戦で仕留めるとしよう。
今、思い出したが雷魔術にライトニングブレードという魔力で構成された雷属性の剣があるのだ。
一応、剣のカテゴリーに入るので真空波もとい雷の鞭に変化した何かが出せる。
使用間隔は蛇腹剣に近い感じだと思うが、伸縮は出来ず伸びたままで、
大体3mほどの鞭っぽい何かが剣の延長線上に伸びるといった感じだ。
「鋭き雷の刃よ、我が武器となり敵を斬り刻め。ライトニングブレード!」
俺の右手に雷の剣が出現する。
MPが尽きない限り消える事はない。
という事で、間合いが広い訳だしウッドウルフが迎撃よりもこっちから打って出た方が良いだろう。
俺は雷の剣を構え居合の体勢に入る。
『居合・弐之太刀』
雷の帯が一瞬で周囲を薙ぎ払った。
所詮、魔法の剣ウッドウルフを殺せるほどの威力はなく、雷により帯電し麻痺状態になっていた。
ならばと思い俺はもう一度同じ技を繰り出した。
『居合・弐之太刀』
同じように雷の帯が襲い小さな悲鳴と共にウッドウルフは息絶えた。
周囲に生きているウッドウルフがいないのを確認し、ライトニングブレードを解いた事で僅かな静電気を残し空中へ霧散していった。
横たわるウッドウルフを数えると全部で36匹いた。
アヤカの方と合わせると結構な数になりそうだ。
「儲け儲け…」
俺は無意識に呟きながら1枚1枚ウッドウルフの毛皮を剥ぎ取っていった。
戦闘していた時間より剥ぎ取っていた時間の方がかなり長いな。
2時間ほど時間をロスしてしまった。
改変前だと、1匹につき5秒も掛からなかったのに…。
さて、アヤカと合流する為に野営地を目指そう。
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20分ほど森を駆け抜け要約野営地に辿りついた。
そこにはすでにアヤカの姿……と、何故かレッドアイベアの大と小が横たわっていた。
「あら、遅かったわね」
「ん、ああ。すまない。
っていうか、その死体なに?」
俺は横たわったレッドアイベアの死体を指差して聞いた。
俺の記憶が確かならば、この2匹は討伐依頼の親子熊で間違いないはず…。
「え、ここへ行く途中で後ろからいきなり襲って来たのよ」
「こいつは……やはり間違いないな。討伐依頼の親子熊だ」
依頼書と照合して確認する。
「取り合えず、討伐した証拠に何か剥ぎ取るか…」
「じゃあ、毛皮を剥ぎ取ったら良いんじゃない?
確か、レッドアイベアの全身毛皮は結構な値で売れたはずよ」
「全身かよ…」
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その後、俺は約1時間かけて2匹の毛皮を剥ぎ取った。
アヤカに手伝ってくれと言ったが、「討伐してあげたのだから剥ぎ取りぐらい1人でやりなさい」と言われた。
くそ、ウッドウルフとレッドアイベアの血の臭いが混ざって非常に気持ち悪い。
俺が剥ぎ取っている間アヤカは何をしていたかというと水場を探しに辺りを散策しに行った。
俺は、ザキラとジャックを呼び出し辺りを警戒させ、テントの準備などをしてアヤカを待った。
1時間ほど後にアヤカが野営地に戻ってきた。
「……髪とか肌が微妙に濡れてないか?」
行く前は、俺と同じように血の臭いを纏っていたのに今は全くしない。
しかも、肌が微妙に濡れているせいで非常に色っぽい。
俺が男だったら惚れているところだ……。
ん?いやいや、俺は男じゃないか…何を言っているんだ。
「え、何のこと?」
「惚けんな。アヤカお前1人だけ水浴びしに行っただろ!?」
「ナンノコトカシラ」
アヤカは、アメリカ人のようなジェスチャーでシラを切った。
「どこだ、どこにあるんだ?その水場!」
俺が詰め寄るとアヤカは後ろに飛び退いた。
「ちょ、折角洗い流したのにまた付くじゃない……。あっ…」
「ふ、白状したな。で、どこだ?」
「そっちを30mほど行ったら川が流れてるから
川沿いに上流へ100mほど進むと滝つぼがあるわ」
アヤカは後方の森の中を指した。
「よっしゃ、行ってくる」
俺はザキラとジャックと共に森の方へ走り出す。
「アヤカ、晩飯の準備よろしく」
すぐに振り返りアヤカに晩飯の用意を頼んだ。
「はいはい、行ってらっしゃい」
アヤカが指差した方向へ早くこの血の臭いを拭いたいので突っ走る。
途中、川をを発見し上流へ向けてひたすら走った。
すると、森が拓け直径30mほど滝つぼがあった。
滝と言ってもさほど大きくなく滝つぼは緩やかな流れで水浴びには持って来いの水場だった。
人の気配は全くないが念のため、ザキラとジャックに辺りを警戒させ岩陰に装備品を置いた。
全裸という選択肢もあったが、せっかくだから黒龍の鎧を付けたまま水の中に入った。
「ふぅ、気持ち良い」
さすが、スク水だけの事はある。
黒龍の鎧は、水を弾く隠れた性能があり泳ぐのに最適だった。
気持ち速く泳げているような錯覚に陥る。
「形だけじゃなかったんだ…」
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俺は、30分ほど水浴びと水泳を堪能…もとい入念に血の臭いを洗い落とし野営地へ帰った。
どうだったでしょうか。