第13話【土産】
誤字脱字・表現の誤りにはご容赦願います。
あれから、1ヶ月が経ち、賞金首にばったり出会うという事もなく順調にレベルも上がってきた。
だが、ここで1つ問題が出てきた。
俺が装備している「夢幻刀」の耐久が悲鳴を上げていたいのだ。
夢幻刀はプレイヤー生産なのでその辺にいる武器職人では直せない。
生産した本人であるイットウ=シホウインにしか直せないのだ。
しかし、困った事にこれを購入したのは6世代前のキャラかつ買った所がイスカ王国だ。
イットウは確かヒューマを使っていた。そして、彼の子孫では直せない。
レベルも上がったので別の刀に装備を変更する事も考えたが、俺はこの刀を案外気に入っている。
野獣や魔獣にはあまり効果はないが、対人だと間合いを読まれ辛いのが良い。
そして、どうしようかとアヤカに相談してみた。
「なら、ワーグナーさんに会ってみる?
彼ならきっと直せるわ。でも、彼が興味を示しそうなアイテムが必要かも知れない」
ああ、確か、アビスタに修理専門の武器職人がいるとか言っていたな。
ちなみにアビスタは北と南に山で分かれた街だ。
北は漁業が盛んで南は鉱山と農業が盛んな所って、昨日アヤカが言っていたな。
「それって、アヤカみたいに伝説級レアアイテムを持って行けってのか?
さすがに伝説級は持ってないぞ。俺のアイテムで最高ランクは叙事詩級だな…」
「一応、私が紹介するから、少しは大目に見て貰えるかも…。
どっちにしろ、会って頼んでみる価値はあると思うわ。どうする?」
「んー、分った。会ってみよう」
俺は、彼が気に入りそうな武器を探す為、地下倉庫に下りた。
確か、脇差に叙事詩級があった筈……。
◆魔刀・ナインテイル(九尾)
ベース:なし
生産者:不明
耐久:400/400
攻撃力:220
必要能力:腕力50、体力80、器用220、敏捷120、呪力20
備考:呪い付き、HP・MP・SP-50%。叙事詩級効果、一薙ぎで9回攻撃。魔刀効果、クリティカルダメージ+100%
生産者コメント:我ガ呪イハ主ヲ殺ス。我ガ刃ハ九ツ殺ス。
あった、あった…。
呪い付きでなかったら、とんでも性能だ。
攻撃力が夢幻刀と同じだが、その数値に×9をしたのが本来の数値だ。
さらに、クリティカル時のダメージ量が2倍になるおまけ付き。
が、俺はこれを装備した事がない。
呪力20ってのがネックで、呪力がある種族はダークエルフだけなのだ。
これの為だけにダークエルフを選択する訳にもいかず、ずっと倉庫の肥やしとなっていた。
とうとう、こいつに役立つ時が来たかもしれない…。
「これで行こうと思う。アヤカ的にどうだ?」
「良いんじゃない。どうせ、これが最高ランクのアイテムなのでしょ?
じゃ、持って行くものはこれで決まりとして、後はおみやげね」
「おみやげ?」
「そう…。彼、他のドワーフに漏れずお酒が大好物なのよ」
「酒か…一応、食堂にワインセラーがあるが、何があるかは分らないが。
改変前はインテリアとして効果を見ずに適当に買ってたからな」
「じゃ、私ちょっと見繕ってくるから、アキラは行く準備でもしておいて。
10分後、玄関で合流ね」
「わかった」
俺はアヤカと別れ、準備をしに自室へ向かった。
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10分後玄関前で待っていると、アヤカが食堂から1本のワインを持ってやってきた。
「良いのあるじゃない」
「良いの?」
「そうよ。これ、ドワーフの密造酒【ドラゴンブレス】。
なんでこれ、アキラが持ってるの?」
「持ってるの?
と聞かれても分らないって。適当に買ったものだって言ったろ」
「ん…まぁ、良いわ。もしかしたら、このワインを交渉材料に出来るかも…」
「まじで?」
「これって伝説級に相当する超レア物ワインよ。
じゃ、行きましょ。まずは、北門から街道沿いに行けばアビスタよ」
アビスタか…改変前はなかった町だな。
恐らく、クエスト専用の町が改変で表に出てきたってところか…。
俺達は、アビスタまでの街道で出来る依頼を受けた後、北門から出てアビスタを目指した。
受けた依頼は、街道のほぼ中間地点ら辺に出没するオーガの討伐だ。
本来、これは騎士の討伐任務だった様だが、闇の森の一件で傭兵に仕事が回ってきた依頼だ。
「まぁ、一匹なら何とかなるか…」
ちなみに、夢幻刀の残り耐久値は20だ…。
それは、20回の攻撃で壊れるという事だ。
まぁ、20回攻撃する事はないだろうが、相手が相手だけに用心に超した事はない。
程なくして、街道沿いを彷徨くオーガを発見した。
獲物を探しているようだ…凄く機嫌悪そうなところを見ると、もしかして俺達が今日最初の獲物になるのかもな。
取り合えず、魔法で牽制だ。
「炎の槍よ、我が敵を貫き通せ!フレイムスピア!」
前に突き出したフレイムワンドから約2m強の炎の槍がオーガに向かって飛んでいく。
オーガは、炎の槍が1mぐらいまで近付いたところで気が付いたようだが時既に遅し、オーガのどてっ腹に直撃した。
凄まじい音と共に炎が立ち昇り少し吹き飛んだ後、オーガは尻餅を着いて転げた。
最初の頃に比べたらフレイムスピアも炎の槍っぽくなったものだ。
初めて使った時、炎のバットかと思ったほどだ。
っと、そんな事を思っている場合ではないな。
その隙に、俺はオーガに向かって走った。
ちなみに、アヤカは歩いていて手出しはしない模様だ。
オーガは雄たけびを上げ、起き上がろうとしていた。
「立たせるかっての!」
『居合・死之太刀』
まずは、横に一閃、続けざま上から下へ縦斬りによる十字攻撃。
簡単に言えば十字居合斬りってところか…。
俺の攻撃は、オーガの腹から胸に架けて十字傷を与え、さらに真空波が傷を抉りながらオーガを吹っ飛ばす。
どうでも良いが、この2連撃…1回の攻撃と見なされるのだろうか…。
オーガがピクリともしない…倒したか?
いや、強烈な殺気がして、俺は咄嗟に後ろへ飛んだ。
さっきまで俺のいた場所へ起き上がりながらハンマーで攻撃を仕掛けてきた。
恐ろしい事に地面が約1mほど窪んだ。
当たったら、即死か致命傷だな。
俺が後ろへ飛び退いた事によって、オーガに立ち上がる隙を与えてしまう。
ああ、凄く怒ってるな…これ。
長引くと俺に不利な状況になってしまう。
と、迷っている隙にオーガが俺の方に走りながらハンマーを振り上げていた。
まずは、あの武器を何とかしないと。
『居合・壱之太刀(対空)』
俺はジャンプすると同時に居合をし、オーガの振り上げた腕を斬り落とした。
これでオーガの戦力は半減した筈…。
だと思ったが、そうもいかなかった。
オーガのもう片方の腕が迫っていたのに、俺は全く気付いていなかった。
気付いたのは、俺の視界がオーガの手で遮られている時だった。
「あ、やば…」
俺はオーガの手に弾かれ30mほど吹き飛んだ。
「ぐっ…」
激痛と共に俺の視界が赤く染まる…瀕死状態のようだ。
歪んだ視界の先からオーガがゆっくりと俺に近付いてきているのが分った。
なんとなく、にやけているように見えなくもない。
早く治癒しないとまずいな。
「女神ヴィーナスの名の下に、偉大なる慈愛の光であるべき姿に戻したまえ!ヒールライト!」
俺のHPは全快まで回復し、視界が元に戻る。
滅多に使わないヒールの中位法術…消費MPは多いが俺のHP程度なら全快できるほどの回復量があった。
オーガの足を奪おう…それが今一番手っ取り早い。
恐らく、歩いてきているという事はオーガは油断しているのだろう。
『居合・伍之太刀』
本来は、相手の足を払うもしくは切り裂く技。つまり、草薙や草払いなんて呼ばれている技だ。
しかし、真空波と合わさった事で、地を這う真空波が前方の草を総刈りしてしまう技に変貌している。
そして、その真空波は油断しきったオーガの両脚を両断した。
これは油断した相手か不意打ちでないとなかなか当たらない。
いくら真空波だろうと飛んで簡単に避けられてしまうのだ。
乱戦でも使えない事もないが、味方を巻き込む可能性がかなり高い。
両脚を切断された事で、動けず平伏せた状態のオーガの前に俺は立つ。
さすがのオーガも片腕と両脚を失っては完全に戦意を無くしていた。
俺はオーガの頭の横に回りこんだ後、刀を振り下ろし首を落とした。
最後は呆気なかったな…
「終わったようね」
「ああ」
「アキラが弾き飛ばされた時、少し冷や冷やしたけど倒せて良かったわ。
あ、アキラ今回は、そのオーガの首をアビスタの駐屯所まで持っていきましょう。
ギルドの人が確認しに行かなくても、これが証拠になるから…」
「それは良いけど、これ…結構重い」
「2人で持てば何とかなるわよ」
俺達はオーガの生首を引き摺りながらアビスタを目指した。
引き摺った跡がオーガの血で描かれていたのはここだけの話…
とはいかなかった…。
駐屯所に持って行った時、そこにいた騎士に呆れながら注意されてしまった。
「出来れば、血抜きか血止めして持って来て貰えないか…」と…。
その後、ギルドの出張所に向かい賞金を受け取った。
「で、そのワーグナーってどこにいるんだ?」
「奥にある丘の上に数軒家が建っていて、その内の1軒にいるわ。
看板とか立っていないから分りにくいけどね。
私ちょっとお酒のおつまみを買いに行ってくるわ。先に丘まで行っておいて」
「分った。酒のつまみって何を買うんだ?」
「ワーグナーさんがいつも飲んでるお酒よ…」
酒のつまみに酒を買うのか?
どうだったでしょうか?
※毎度の事ですが、投稿後に修正する可能性があります。
物語自体の方向性は変えませんのでご了承願います。