第11話【依頼】
誤字脱字・表現の誤りにご容赦願います。
アキラ初依頼の話です。
※内容にご指摘があったので少し内容を変えました。申し訳ないです。
アヤカが来た次の日、早朝にも関わらず顔を合わせるなり抱きついてきてキスを迫ってきた。
朝からこれはきつい…。
あまりにもアヤカが引っ付いてくるので、試しに防御力自体にあまり影響のなさそうな装備を外してセットボーナスを外してみた。
すると、鬱陶しい程引っ付いてきたアヤカが幾分かマシになった。
と言っても、0距離から近距離に離れた程度なのであまり変わらないかもしれない。
俺とアヤカはお互い顔を洗い、食料棚にあった材料で簡単な料理を作って食べた…。
作ったのはアヤカだけど…。
「で、アキラ。これからどうするの?」
「そうだな。当分はレベル上げだな。まだLv16だしアビスタへ行くにしても要塞都市へ行くにしも今のままでは、死亡確定だしな」
「まぁ、妥当な判断ね」
「ところで、今日は私が作ってあげたけど、いつも朝ごはんとかどうしてるの?」
「ん?ああ…どうしようかな。昨日の朝は母が作ってくれたけど、もういないしな…」
「それって、遠まわしに作れないって言ってるよね。
はぁ~分ったわ。私が作ってあげる。ただし、食費はアキラが出しなさいよ」
アヤカはため息をつき、料理当番を申し出てくれた。
有難い。残念な事に俺は料理が全くだめだ。リアルでもE/Oでも…。
「ああ、それで構わない」
「というか、いつまでこの世界にいるか分らない上に一応女の子なんだし、料理ぐらい覚えたら?」
「…考えておくよ」
俺としては道具屋にある携帯食料でも良いんだけどな…と言ったら怒りそうだ。
「……まぁ、良いわ。私は食器を洗うから、適当に時間潰しておいて」
「ん?ああ」
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「取り合えず、アキラの初仕事をどれにするか決めましょうか…」
「ああ、そうだな」
俺達は今、ギルドのロビー兼酒場のテーブルで今後について話していた。
「俺としては闇の森へ行きたいところだな…」
「闇の森?」
「ああ、南門の先に広がる森林地帯の事だよ。セントラルブレイ王国との国境までずっと続いている森だ」
「ふーん、そこに何かあるの?」
「母が言うには、精霊の石碑があるらしい。森のどこら辺にあるかまでは教えて貰えなかったけど」
「石碑かぁ…」
俺とアヤカが闇の森の話をしている時、2つ隣で朝食を摂っていた傭兵が話しかけてきた。
「あんたら、闇の森へ行くのかい?今は辞めておいた方が良いぜ?」
「どうしてですか?」
何故だろう。あそこはそんなに危険な魔獣は居なかった筈だ。
それこそ、街道沿いに歩けば野獣にさえほとんど出会わなかったと記憶している。
「今、あそこには狂人化したアースガントがいて騎士に討伐命令が出ているんだ。
それに、先日、セントラルへ行こうとした傭兵があの森で行方不明にもなってる」
アースガントとは巨人族の事で長寿種族だ。
子供でもヒューマの大人よりも大きく、大人になると3mぐらいある。
非常に温厚な種族で法術も少し使える。プレイヤー人口は全種族中一番少ないが、一番腕力と体力が上がりやすい。
八迅にもアースガントを使っている廃人がいる。
「魔獣でもないのに討伐命令ですか?」
「ああ、狂人化のせいで手が付けられない状態なんだとさ」
「そうですか…。参考になりました。ありがとうございます」
「良いって事よ」
傭兵は手を振った後、また食事に集中する。
「どうせ、アキラじゃ狂人化していなくても勝てないし、別の所にしましょうよ」
「そうだな。取り合えず、依頼掲示板を確認して行けそうなものがあれば受けよう」
俺は横幅2mほどある依頼書を貼り付けた掲示板の方へ向かい、左から順に見ていく。
どれもパッとしないな。
優先順位はレベル上げだから、お使いクエスト系は省くとして…。
ぉ、討伐依頼があった…。
「ん~、グレイウルフの討伐?」
グレイウルフか…悪くない。低レベル帯には丁度良い相手だ。
ヴォルトでプレイし始めた頃もよくお世話になったものだ。
「アヤカ、これなんてどうだ?」
「えっと…うん。良いんじゃないかな」
「んじゃ、行ってくるわ」
「オッケー。私は賞金首リスト見てくるね」
俺は一旦アヤカと別れ、依頼受領の為に受付カウンターへ向かう。
「ようこそ。傭兵ギルドへ。」
「すみません。この依頼を受けたいのですが…」
「はい、確認しますので少しお待ち下さい……。
グレイウルフの討伐ですね。詳細説明は必要ですか?」
「はい、お願いします」
「では、ご説明します。東門から伸びる街道は勿論ご存知ですよね?」
「ええ」
「その街道沿いにある森に最近グレイウルフの群れが確認されています。
本来、森の奥か山中に生息していますが、確認された狼は街道近くまで来ているのです。
被害が出る前に討伐して貰いたいのです。能力はそんなに高くはありませんので初心者の方には打って付けですね。
ですが、注意も必要です。彼らは集団で行動します。深追いはせず、退路をを確保しながら戦う事をお勧めします。
確認されただけでも10匹はいますので、十分気をつけて下さい。何か質問はありますか?」
「期限はいつまですか?」
「特に決まっておりませんが、引き受けた後に被害がありますと、その都度報酬が半減しますのでご注意を」
「分りました。ありがとうございます」
俺は受付を離れ、アヤカと合流した。
「依頼引き受けてきたぞ。そっちはどうだ?」
「この街の付近だと、2人賞金首がいるわね。どっちも小者だけど…
アビスタから要塞都市の間に1人。こっちは現段階じゃ不可能ね。
小者は遭遇した時に捕らえたら良いわ。糧にも金にもなりそうにないから、基本無視ね」
一応、その小者2人のデータを見せてもらった。
1人は、誘拐と人身売買の疑いと複数の軽犯罪か…、確かにどうでも良いな。
もう1人は、初心者を狙ったレイプ魔か…下衆だな。
情報が小太りという特徴以外書いていないな。まぁ、早々会う事もないだろ…。
俺達はギルドを出て東門を目指し、中央広場に差し掛かった辺りでアヤカは用事を思い出す。
「あ、ごめん。露店でポーション見てくるから先に行ってて…」
「分った。HPなら俺が法術使えるから、MPのポーションをよろしく」
「りょ~かい」
アヤカはそう言うと人ごみの中に消えていき、俺はそのまま東門へ向かった。
「外した装備を着けるかな。ちょっとでも防御力上がった方が良いし…」
俺は歩きながら朝外した装備を付け直した。
異性や同性を惹きつける効果があるが、どうせ身近な相手にしか効果がない。
今回の場合は、アヤカだな。
それに、さすがに依頼中に抱き付いては来ないだろう。
そして、東門に着いたが、アヤカがなかなか来ないので、少し街道沿いを歩いた。
街道には、疎らではあるが人が歩いており、そのほとんどが商隊や傭兵だった。
しばらく、歩いていると森から突然、男が飛び出してきた。
男は、俺の姿を見るなり走って近付いてきた。
「…あんた傭兵だよな?
助けてくれ。さっき、そこでグレイウルフに襲われたんだ」
「ん??襲われたにしては無傷じゃない?」
何か妖しいぞ…こいつ。
でも、格好は普通の一般人だな。
武器を持っているようには見えないし、考え過ぎか…。
「ひ、必死で逃げたんだよ!」
「そうですか。その討伐依頼を引き受けたので丁度良かったです…場所はどこですか?」
「こっちだ。早く来てくれ。放って置くと他にも被害が出るかもしれない!」
男は俺の手を引っ張り森の奥へ向かった。
しかし、男に誘導された場所にはグレイウルフの仔さえ一匹もいなかった。
「いませんよ?」
「あれぇ~、おかしいなぁ…確かにいたんだけどな」
「…では、あなたはここまでで結構です。危険ですので街へ戻って下さい。
ボクはこれから痕跡を調べますので…」
俺は男を帰し、グレイウルフの痕跡を調べる為、地面に膝を付く。。
ん~、おかしいな。足跡もフンもひとつもない。
本当にここにいたのか?
だが、あの男が嘘を付いていると断言できなし、嘘を付くメリットもない…。
探索魔法で探してみるか…
100mしか範囲はないが、そう遠くへは行っていないはずだ。
狼自体を見つけられなくても、何かしら反応がある可能性もある。
「女神ヴィーナスの名において、見えざる者を映し出せ…ディテクト!」
反応は…3つ。
一番近いのが、キンピーラビット。
こいつは草食動物の代表的な野獣だ。
何故か、ゴボウが好物なウサギという謎設定のせいで変な名前が付いている。
そう、略称「キンピラ」だ…。
もう、1つはさっきの男か…街へ帰れと言ったのに、まだ近くにいるじゃないか。
まさかとは思うが、一応警戒はしておこう。
ギリギリの範囲にいるのがアヤカだな。
さて、もう少し奥へ行ってみるか…
俺は法術を解き奥へ行く為に立ち上がったその時、後ろに人の気配を感じた。
アヤカ意外と早かったな。
どうだったでしょうか。