第10話【八迅】
誤字脱字、表現の誤りはご容赦願います。
第2章の2話です。
俺は、傭兵ギルドから紹介して貰ったスコットの売れ残り専門店もとい2号店に来ていた。
タイミング良く?そこにスコットがいたが見なかった事にしよう。
「すみません。傭兵ギルドの紹介で来たのですが。」
「あ~はいはい、少し待って下さいね」
若い店員が声を返してきた…スコットと何やら話しているところを見ると、
もしかしてあの店員がここの店長なのだろうか…
「ふふふ、アキラ、やっと俺が掻き集めた商品の魅力に気付いたか…?」
スコットは店長?さんとの話が済んだようで俺の方までやってくる。
「聞いてなかったか?傭兵ギ・ル・ドの紹介で来たって言ったろ」
「会長、お知り合いなんですか?」
若い店長?は、この娘何者!?みたいな表情でスコットに聞いてきた。
「ああ、俺の古い知り合い………の娘だ」
「そうですか、随分可愛い娘ですね。会長、この娘のコーディネイトを私に任せて貰えませんか?」
「それは構わないよ。アキラさえ良ければね」
「ええ、良いですよ。お願いします」
正直、女の子のファッションセンスが皆無な俺にとって願ったり叶ったりだ。
「アキラの装備代は、俺が全額払うよ。アキラには是非ともこれらの素晴らしさを味わって貰わないと」
何か厭な予感がする…
「布製や革製でも良い物はあるのに、最後はみんな金属製の防具しか買わない。ここは、アキラにモニターテストをして貰う事にしよう。じゃあ、宜しく頼むよ」
若い店長?は、「はい、分りました」と言わんばかりに胸を張り、スコットを見送った。
そして、俺はこれから地獄の1時間を味わう事になった。
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「ハァハァハァ、疲れた…」
俺はゲッソリして試着室から出た。
数にして約20着の試着が終わり最終的に布と革がミックスされた変わった防具になった。
何でも、イスカ王国で流行っていた服装なんだとか。戦後の時代で流行っていた服とか時代遅れに見られないのかな…
「はぁ、良い仕事したわ~。アキラちゃんって、スレンダー体型だから、体に密着した服がよく似合うわねぇ」
どうでも良い事だが、この1時間で店長さんが俺の事を「アキラちゃん」と呼ぶようになっていた。
それにしてもこの服装、俺としては少し…いや大分恥ずかしい。
特にこのミニスカートだ。どこにでもあるシンプルなデザインではあるが、体にピッタリなサイズの為、体のラインがよく分る。
さらに、スリットまで付いているから尚更だ。
「スリットがなかったら武器を構えた時、パンツ丸見えよ?良いの?」なんて、脅されたら断れない。
上半身は、どこかの学園アニメに出てくる制服みたいなデザインだ。
プレイヤー生産なのが悪意を感じる。絶対、アニメかゲームを参考にしているよ。
何で、胸元が菱形状に開いて、肌が見えてるんだ?
これは何か役割でもあるのか?店長さんに聞いても「さぁ~」って答えるし…
これアレだろ。簡単に言えば、生産者の好みだろ…。
ニーハイソックス(白)や革製ブーツなども合わせ全て同じ生産者がデザインした拘り(趣味丸出し)の逸品との事。
デザインはエ○ゲーやギャルゲーに出てくる女子学生服だが、素材はかなり良いらしく。
流石に布は世間一般的に出回っているものらしいが、裁縫糸はミスリル銀糸で革は飛龍の皮らしい。
贅沢にも程があるだろう。
試着が終わり、5分もしない後、スコットが戻って来た。
「おおお!」
と、いう歓声の後、可愛いなどと言い放ちやがった。
可愛いと呼ばれて悪い気はしないが、中身が男という事を忘れていないか?
というか、胸元見すぎ自重しろ。取り合えず脇腹を殴っておいた。
スコットが代金を払い2人で店を出た後、商会から使者が来てスコットはルドルフ商会本部へ行ってしまった。
取り合えず、俺は他に用事はなかったので家路に着いた。
ちなみに、防具はこうなった。
<防具>
頭:―
顔:魅惑のリップクリーム
首:傭兵タグ
耳:魅惑のイヤーカフス
肩:―
背:―
上半身(上):純真の学生服・上
上半身(下):シルクのバトルブラ
腰:純真のセーター
下半身(上):純真の学生服・下
下半身(下):シルクのショーツ
靴下:純真のニーハイソックス
靴:純真の龍革ブーツ
右手:―
左手:―
鞄:リュック型学生カバン
<魅惑セットボーナス>魅力+20、身近な同性を惹き付ける。
<純真セットボーナス>魅力+20、身近な異性を惹き付ける。
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同性や異性やら訳の分らんボーナスや魅力がやたら上がっているが気にするな。
生産者と店長を殴ってやりたい気分だが、気にしたら負けだと思っている。
俺はこれらのボーナスを見なかった事に………出来ないのだろうな。
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俺は、家の近くまで来た時、家の玄関の前に人が立っているのを発見した。
「うちに何の用だろう…」
と、近付いてみる俺のよく知るプレイヤーだった。
長い銀髪のハイエルフ、女性キャラの中では身長を高くしている。
リアルではデザインに関する仕事をしている為か容姿には拘っており、文句なしの美女キャラだ。ゲームでは美乳だがリアルは貧乳なのはここだけの話。
声を掛けようと思ったが、何やらブツブツと独り言を言っていた。
「せっかく、来てやったのに何でいないのよ…亮のヤツ…、あいつの事だがら1人で寂しくしているだろうと……」
何か失礼な事を呟いているな…。
「おぃ、アヤカ」
聞こえていないかのように、まだブツブツと呟いている。
…気付いてないのか?
もう一度言ってみよう。
「アヤカ!」
「さっきから、何なのこのお子様は…私を呼び…捨てに…s……あれ?呼び捨て?」
と、アヤカは俺の方を見る。
「……………アキラ?…………」
「ああ」
「えええ!?なになに、この可愛らしいお子様がアキラなの!?」
「こ、こら、やめろ!?む、胸を押付けてくるなっ!!わ、わかった。好きなだけ抱きついて良いから、家の中に入ろう。な?」
く、恥ずかし過ぎるぞ、この状況…。
俺は抱きついているアヤカを連れ、家の中に入り応接室まで来た。
「な、なぁ。この体勢で話さなければならないのか?」
この体勢とは、アヤカの太ももの上に俺が座っている。その上からアヤカが覆いかぶさっている状態の事である。時折、胸を揉んでくる…こいつはセクハラ上司か…。
「胸を揉むな!それに顔が近い!」
「まぁまぁ、良いじゃない」
そう言いながら、頬にキスするのは止めてくれ。
「で、俺に何の用だ?」
こいつの前で、猫など被る必要ないだろう…
猫を被るとは無論、一人称のボクや丁寧語の事だ。
「特に用はないのだけど…世代交代でキャラ入れ替わったら、一度顔を会わせてないと長距離会話が出来ないじゃない?」
「まぁ、そうだな」
「本当の目的はアキラと関係ないのだけど、近くに来たからさ。様子でも見ようかと…」
で、その後、お互いの近況を話し合った…。
あ、ちなみに、このアヤカはリアルで俺の親戚に当たり従兄妹同士の関係なのだ。
以前話したと思うが、3歳年下で俺を最初にアキラちゃんと呼んだヤツだ。
名前はアヤカ=ツキカゲ、ハイエルフの弓術使いで精霊魔法もかじっている。
彼女も”八迅”の1人だったりする。
とはいえ、世間一般的に廃人扱いされているアヤカだが、実際のところ至って普通のプレイヤーだ。
1日3時間しかプレイはしない。ただし、毎日必ずログインはするが…
3年間の間、世代交代を一度もしていない為、現役傭兵ランキング1位だったりする。
いくら長寿種族をプレイする者でも、9割はすでに2代目になっている。
まだ、初代のキャラを使っているのは、俺の知る限りアヤカだけだ。
で、アヤカの通名は”光迅”だ。彼女の持つ武器、神弓・ゴッドブレスに由来している。
アヤカは、どうもこの街の北に位置し地中海に面する小さな町「アビスタ」に用があったらしい。
神弓の耐久が減ったので直して貰う為との事、神弓を直せる職人がいたのには驚いた。
アヤカがいうにはシークレット扱いの長編クエストをクリアする事で会えるNPCとの事。
しかも、修理を専門にする武器職人で種類・素材問わず修理できるらしい。
シークレット系のクエストは何個か知っているが、そんなクエストがあったなんて知らなかった…。
前提条件は何なのかを聞いてみると、プレイヤー生産以外の伝説級レアアイテム所持らしい。ああ、なるほど、俺持ってないわ。
伝説級は完全に運だ。廃人だろうが持っている者は少ないというか、アヤカぐらいしか知らない。
アヤカは改変後の世界を旅する予定らしい。
取り合えず、”八迅”(の中の人)に全員会うのが当面の目標みたいだ。
次の行き先は、俺やアヤカ以外の”八迅”であるアーネストと言うビーストがいる華朝連邦という国だ。
確かノースブレイ王国の長年の敵国ハイランド王国の東に位置する大国だ。
面白い流派が多く、俺も一度は行ってみたい国だ。
ちなみに、アーネストは俺と同じように短命種族を好んで使い今回も世代交代している為、今は別の名前だ。
予定を変更して、しばらくはノースブレイ王国に滞在するつもりみたいだ。
何故かと聞くと満足するまで俺を愛でるつもりらしい。
勘弁してくれ…。
そして、俺の近況も話した。
ヴォルトと母が傭兵に復帰した事。そしてフィラシェット大陸の動向を探るかも知れない事。
シムスに殺されかけた事…父ヴォルトと同じような反応をしたので鎮めた…。
ある程度、力を付けるまではこのノースブレイ王国にいる事などなどだ。
俺がノースブレイ王国を出るまで付き合うと言ってきた…どうしようかと考えていたら、
「私がアキラの保護者になったら色々お得だよ?」なんて言ってきて、結局彼女に説得させられた。
俺、ノースブレイ王国を出るまでに気苦労で死ぬかも…。
どうだったでしょうか?
アキラの新装備、新キャラの登場という話になりました。
新装備何かと問題がありそうですが、気にしたら負けです。