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『E/O』イオ  作者: たま。
序章【改変編】
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第8話【試練】

誤字脱字・表現の誤りはご容赦願います。


裏通りから表通りに出て、俺はすぐに道を行く人々から奇異の目で見られている事に気付く。

プレイヤーと思しき人達からは、エロい目で見られているような気がしないでもない。


回復薬最後の1本を飲み干し、俺は改めて今の姿を見てみた…

全身泥と血だらけで、今日買ったばかりの装備品は、上半身の鎧を除いて全てが見るも無残なボロボロの状態になっていた。

よく見たら、首にしていた守護の首輪がなくなっている…。

首を絞められた時に切れたのかも知れない。

布製の装備品は、転んだりした際に破れてしまったようで、露出した肌が擦り傷だらけだった。

剣で斬られた足は出血が止まっているものの、傷口はパックリと広がっていた。

逃げるのに夢中で気付かなかったが、結構痛い。

スカートは腰骨近くまで裂けており、太ももが付け根まで丸見えになっている。

ニーハイソックスは切られた側の方だけ脛より下にずり下がっており、いつの間にかブーツまで脱げていた。

…戦った後の筈なんだけど、どう見てもレイプされた後だな。

それに、恥ずかしい事なんだが、首を絞められた時に少しちびったみたいだ…ショーツが濡れている。


改変後、HP回復薬はHPを回復させてくれるが、傷は塞いでくれないのな…。

それとも改変前はビジュアルに反映されていなかっただけで、今と同じ仕様だったのかな。


俺は傷口を塞ぐ為に法術で治癒をする……


MPが足りやがらねぇ…


途方に暮れていると見知った顔が前を通り過ぎ…なかった。

驚いた顔でこっちを見ている。


「ヴォルト……あ、いや、今はアキラだったか…。何て姿をしてやがる。なんと言うか目のやり場に困るぞ。それにお前泣いているのか?」


泣いている?俺が?…気付かなかった。

死が何度か頭を横切った時に自然と出たのかも知れない。


この顔見知りは、スコット=ベイグ。傭兵と商人を兼業している行商プレイヤーだ。

ちなみに、こいつは第2話でフィラシェット大陸にいる友人を失ったあの人だ。

長旅が多いせいか独身で恋人はいない。一度彼の家にお邪魔した事があるが、いくつもある客室が全て商品で一杯だった。

まぁ、無事、立ち直れて良かった。


それはさておき…


「スコット。MP回復薬はないか?」


「ああ、あるぜ。MP回復薬(大)が…そうだな。1800Gってところだ。」


「そうか、1800Gだな。」


俺は懐から100ゴールド金貨を数枚取り出そうとすると…


「あああ、待て待て。さすがにこんな姿の友人から金は取れないよ。それと、これもやるよ。ほら、受け取れ。」


スコットはMP回復薬(大)と体全体を覆うローブを押付けてきた。


「すまない。ありがとう…」


「良いって事よ。それよりも何があった…。擦り傷とかもそうだが、首に赤く腫れ上がった手形がクッキリついているぞ。」


…手形は気付かなかったな…

俺は貰ったMP回復薬(大)を少しだけ口に含み、残りは栓をした後、ローブの内ポケットの中に入れた。

そして、下位法術の一つである治癒の魔法を唱えた。


「女神ヴィーナスの名の下に、大いなる癒しの力であるべき姿に戻したまえ!ヒール!」


半透明の白い光に体は包まれ、痛々しく主張していた傷達は綺麗になくなった。


「ふぅ…助かったよ。スコット」


「どういたしまして…で、何があった。」


「PKに出くわした…。傭兵狩りのシムス、知ってるだろ?」


「!!当たり前だろ。傭兵をしてて知らない奴なんていない。あいつがいるのか?この街に…。」


「ああ、裏通りに用事があったんで行ってみたら運悪くも奴がいた…。

そして、この有様さ。必死で戦ったが勝てなかった。まぁ、当たり前だが…」


「え、戦ったのか?レイプされた訳じゃなくて?っていうかどっちにしろ、よく死ななかったな…。

確か、あいつはレベル120オーバーだぞ。」


シムスがこの街にいる事に驚いているようだが、それ以上に俺が戦って生きている事に驚いているようだ。


「何度か死に掛けたけどな…」


シムスの攻撃が掠るだけで瀕死なのだから…


「プレイヤースキルで逃げ果せた訳か…。さすが、廃人…いや廃神か…。

お前ぐらいだよレベル差100以上あって生きているのは…」


プレイヤースキルというより、あの精霊の犠牲があってこその命と言えるな…。

ザキラお前の事は忘れない…無事、成仏してくれ。


(死んでねぇよ。勝手に殺すんじゃねぇ!!)


はて、空耳が聞こえたような…気のせいだな。


「で、どうする。家に帰るなら付いていってやるよ。」


「ああ、帰る。恩に着るよ。」


俺はスコットを伴って家路に着く。

そして、しばらくして家の玄関前に着いた。


「俺は家に売れ残りを置いたら、そのまま傭兵ギルドに向かうよ。シムスの情報はギルドの方に入れておくべきだと思うしな。何かあったら連絡するわ。じゃぁな。」


「ああ」


俺は手を振りスコットと別れ、家の扉を開く。


「ただいま帰りました。お父様お母様。」


家の奥からバタバタという足音と共に父と母は玄関前までやってきた。


「アキラ、無事か!あまりにも遅いから心配したぞ。」


「アキラちゃん!大丈夫?どこも痛くない?」


そう言うと、2人は俺を強く抱きしめる…

父と母よ…スパルタなのか親馬鹿なのかどっちかにしてくれ。


「だ、大丈夫です。何とか生きてます。」


俺はそう言い、2人から逃れて上に羽織っていたローブを外套掛けに掛ける。


「ん?あれ…どうしました?」


2人の視線が痛い…あ、しまった。ローブの下はボロボロの衣服のままだった。


「ほ、本当に大丈夫!?」


母が俺の体をペタペタと触り、傷ついている箇所がないか調べ始めた。


父は何をしたら良いのか分らず、オロオロと慌てるばかりだった。


「傷は大丈夫です。法術で治しましたから…」


「そ、そうなの?なら良かった…」


母は安心したようだが…父は、


「誰だ。誰がお前をそんな姿にした!」


何も答えないと、父はそのままの勢いで裏通りへ向かいそうだったので正直に答える。


「……チンピラではありません。お父様なら名前ぐらいは知っている賞金首です。

ですが、名前を言ってしまうとお父様はその賞金首を殺しに行きかねないので教えません。」


父は憤慨していた。シムスに対してとあいつの名前を言わない俺にも…


「あ、当たり前だ。賞金首なら尚更だ。そいつは俺が殺してやる。名前を言え!」


父は俺の両肩を掴むとガクガクと強く揺らした。


「あなた、落ち着いて……落ち着きなさい!」


母が父を落ち着かせる為に平手打ちをしパンッと乾いた音がした。


「あ、ああ。すまない。」


「アキラちゃんの話を聞いてあげましょうよ。名前を言わない理由は何?」


「……あいつはボクがいつか強くなって必ずこの手で倒す。」


俺は俯いた後、顔を上げ父と母の方に向かって誓いを立てる。


「そう、分ったわ…。取り合えず、お風呂に入ってきなさい。それから夕飯にしましょう。」


母は笑顔でそう言ってくれる。この笑顔に俺の心は落ち着いていく。

お母様ありがとう…。


(良いお袋じゃねぇかっ。くぅ…泣けてくるねぇ!)


うるさい、だまれ。

風呂から上がると、新しい服が脱衣場に置いてあったのでそれを着て食堂へ向かう。

恐らく、この服は俺が風呂に入っている間に母が買って来たのだろう。


「おまたせしました。お父様お母様」


「取り合えず、食べましょうか。詳しい話は食べ終えてからで良いでしょう。」


「うむ。」


そして、いつもの過程を踏んだ後、夕食を食べ母が食器を片付け終わり席へ戻ってくる。


「じゃ、成果を聞きましょうか?どう?目的の精霊には会えた?」


「はい」


俺はそう言いザキラを召喚した。


「お初にお目にかかる。俺の名前はザキラと言う。以後よろしくな。お袋殿と親父殿……

って、あれ?あんたどっかで見た事があるな?」


ザキラが畏まったと思えば、すぐにいつも通りになった。


「それはそうでしょう?」


そういうと母はニコニコしながら精霊を召喚した。

あ、風の精霊ソードレスだ…もしかして、10年前の精霊使いって母なのか?


「久しぶりだな。我が義弟よ。」


なんだ、このカッコいい精霊はザキラと同じ精霊とは思えない…

いぶし銀という言葉がよく似合いそうなナイスミドルだ。

例えるなら、ヤクザ映画でいう若頭とか2代目とかそんな感じ。


「うげぇ!?あ、あ、義兄貴!…も、もしかして10年前に来た精霊使いはあんたか!?」


「ええ、そうよ。」


「ああ、なんて羨ましい…俺もこんな巨乳の姉ちゃんに召喚されてぇぇ!」


ぐっ…確かに俺は貧乳だよ…悪いか。俺だって巨乳に生まれたかったよ…。

っていうか、何て欲望丸出しな精霊だ。正直にも程がある。


そんなザキラを見て母と母が召喚した精霊は、ザキラを変態を見る目で睨む。


「す、すみませんでしたーーー!」


ザキラは二人の威圧に屈し土下座をした…。

よ、弱い…。


「ふふ、精霊の性格は正直アレだと思うけど、無事精霊と契約できて良かったわ。」


母は土下座している精霊を見ながら言った。

そして、自分の精霊を精霊界に帰す。

俺はそれを見てザキラを帰す。

ちなみに、精霊を精霊界に帰しても契約者とは意識が常に繋がっている。

だから、たまに精霊は契約者に心の中で話しかけてくる。

それも信頼を深める大事な行為なのだとか…


「私の用は終りね…。次はあなたの番よ。」


と母は父に話すように促す。


「俺は正直納得していないが、まぁ良い。賞金首の事は忘れよう…。」


「ありがとうございます。」


「で、チンピラ共とは戦ったのか?裏通りに行って賞金首としか戦っていない事はないだろ?」


「はい、チンピラ6人と戦いました。」


「6人か、思ったより少ないな…。で、勝ったのだろうな?まさか、逃げてはいないな?」


「逃げてはいません。勝ちました…」


「どのくらい時間が掛かった。」


…魔法ですっ飛ばした男を含めると大体5秒ぐらいか?


「5秒ほどだと思います。」


「そうか、どういう状況下だったかは知らんが上出来だ。

それに賞金首から逃げ果せた事を含めると満点以上だ。」


父は目を閉じ何かを考えているようだ。


「あなた…」


「ああ、これなら安心して旅立てる…」


父と母は顔を見合わせて、頷きあう。


「え?」


旅立つって言わなかったか?


「急な話なんだけど…私達、また傭兵に復帰しようと思うのよ。最近、魔獣も多くなってきて物騒だし、フィラシェット大陸の事も気になるしね。」


ちなみに、母は希少種かつ人間とはあまり深く関わる事を避ける古代エルフ族で、それらの中では珍しい傭兵をしていた過去を持つ…という設定だ。

まぁ、恐らく改変後もその設定のままの筈だ。俺がヴォルトとして報奨の長編クエストを受けた際、常に仲間キャラとして行動をしていた。

その長編クエストを続けていくにつれて母と仲が深まり愛に発展し結婚したという設定だと思う。

結婚後、母は傭兵を引退する。というエピローグ後クエストは終了する。


クエストで母はほとんど法術か弓術で俺を援護してくれていた。精霊魔法は使っている所を一度も見た事がない。

恐らくだけど、俺のヴォルトの無双っぷりに精霊魔法は必要ないと判断して支援に徹したのかも知れないな。

もしかしたら、ヴォルト以上にチート級の能力を持っているのかも知れないな。


「そこで俺達はアキラお前に試練を与える事にした。お前がその試練をクリアしたら母さんと傭兵に復帰しようと誓ったのだが…

後、半月ぐらいは掛かると思っていたが、予想以上に早かったな。俺の娘とは言え正直驚いたよ。」


母もウンウンと頷いている。


「私達は明日の早朝旅立つわ…」


え、早すぎないか?


「家にあるものはアキラお前に全てやる、好きなだけ使って良い。金も置いていく。

強くなれアキラ。そして俺達に追いついて来い。」


そして、父と母はそう言い残した後、席を立ち旅の準備に取り掛かった。

俺は自室で今後の事を考えていると、父と母の寝室からまるで恋人同士が初めて2人だけの旅行に行くかのように楽しげな声が聞こえてきた。


どうだったでしょうか?

次話から、戦闘がメインとなり、アキラが成長していく過程を書いていきたいと思います。

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