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第1話 問答集

 ある日のこと。私は、シエラちゃんと部屋でミニパーティーを開いていた。


「ねえねえシエラちゃん、突然なんだけど」

「⋯⋯何?」

「私に好きっていわれたら、どうする?」


 シエラちゃんは、そういわれた途端、しばらくぽかんと固まった。

 そして、ふいっとそっぽを向いてしまった。


(あれっ⋯⋯?)


 私は首を傾げながら、シエラちゃんをじーっと見つめた。

 いつものようなきれいな白髪。そこからちらりと見える耳が、真っ赤になっていた。


(あれ、て、照れてる⋯⋯!? かわいいーっ!! っていうか、さっきのそっぽの向き方も子リスみたいで可愛かったし、いつも通り可愛いねーっ!!)


 私は可愛いとばっかり言っている心の声をなんとか抑えて、シエラちゃんにそっと声をかけた。


「いきなりごめんね!? あの、シエラちゃんと喋る妄想するとき用に問答集作ろうと思ってて!」

「⋯⋯妄想?」

「うん!」


 私が満面の笑みで言うと、シエラちゃんは「⋯⋯わかった」と頷いた。


「じゃあ、まずはさっきの質問から! 私に好きっていわれたら?」

「⋯⋯」


 シエラちゃんは、またそっぽを向いてしまった。


(かわいいーっ! 写真におさめられたらいいのにーっ! じゃなくって! 問答集にはこの反応を書けば良いのかな?)


 私はニコニコしながらシエラちゃんを思う存分眺めてから、紙に『私に「好き」と言われる→そっぽを向いて照れる』と書いておいた。

 

「あとはね」

「⋯⋯まだあるの?」


 シエラちゃんが少し困惑しているようなので、ニコっと笑ってお姉さんらしくいってあげた。


「だって、問答集だから、いっぱい例があったほうがいいかなって」

「⋯⋯わかった」


 シエラちゃんはそう言うと、目の前にあった紅茶をすすった。


「じゃあ、次ね。隣国の王子様に、『好きです』って告白されたら?」

「ゴホッ、ゴホッ⋯⋯えっと、もう一回言って⋯⋯」

「隣国の王子様に、告白されたら?」


(原作の展開だけど、漫画でも原作小説でも告白されたときの顔が出てこなくて反応がいまいちわかりにくかったんだよね⋯⋯アニメは見られなかったし⋯⋯)


 私がワクワクしていると、シエラちゃんが小さな声で言った。


「⋯⋯知らない」


 また、ふいっとそっぽを向いてしまったので、結局わからいまま終わってしまった。



 ◇◇◇



「まあ、こんな感じで一つにまとめられたかな!」

「⋯⋯今ので?」


 シエラちゃんが私の手元を覗いて、目を見開いた。

 私のメモ帳に書かれた文字は。




『私に「好き」と言われる→そっぽを向いて照れる』

『隣国の王子様に告白される(という話をする)→そっぽを向く』

『可愛いと褒める→そっぽを向いて照れる』

『頭を撫でまくる→困惑する』

『抱きしめる→困惑する』

『隣国の王子様に撫でられる(という話をする)→そっぽを向く』




「⋯⋯何か、変わった質問が多かったよね⋯⋯」

「そう?」


 満面の笑みで言うと、シエラちゃんは首を傾げた。


「ところで、『隣国の王子様』って何でそんなにいっぱい出てきたの?」

「⋯⋯」


 私はしばらく黙り込んだあと、ニッコリと笑ってウインクをした。


「秘密だよっ!」


 シエラちゃんは、不思議そうな顔をしながらも、少しだけ笑ってくれた。


(原作が、『灰かぶりお嬢様は隣国の皇子様に溺愛される』で、そういう内容だからなんて、絶対に言えないなぁ⋯⋯)

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