第1話 出会い
「帰るか。今日も疲れたなぁ。」
「まぁいつもより早いから…でも19時半かぁ…」
明は帰り支度をしながらブツブツ呟く。
「夜飯何食おうかなぁ」
「あ、あいつの分も買っとかないとな。」
「昨日と一緒で牛丼でいいか。」
明は少し微笑む。
「いらっしゃいませ〜」
「牛丼の大盛りと特盛を1つずつお願いします。」
「かしこまりました〜。少々お待ちくださいね〜。」
「まぁ、あいつは特盛でいいか」
「牛丼、大盛りと特盛のお客様〜、お待たせいたしました!1560円になります!」
「2000円でお願いします。」
「440円のお釣りになります〜、ありがとうございました〜!」
さて、牛丼も買えたし帰るか。
帰り道を歩いていると女性が倒れていた。
「飲みすぎたのかな?飲み過ぎにしては早い時間だけど。」
女性一人でいるのも危ないなと思い声をかけようとする。
「主様よ〜、ワシという女がおりながら何をしようとしていたんじゃ?」
「普通に声かけて安全な場所まで連れていこうとしてただけだよ?特に何も無いよ?」
明は少し焦りながら答えた。
「そうやって誰彼構わず助けておるから変なやつに取り憑かれるんじゃぞ〜」
少女はニヤニヤした口調でそう言った。
数日前…
「はぁ、疲れた。今日も残業かよ。」
「もう21時じゃねえか。今日はコンビニで済まして帰ってエロ漫画漁りたいなぁ。」
もう暗くなった会社のオフィス、明は1人で愚痴をボソボソこぼしながら帰る支度をしていた。
「相変わらず毎日毎日ロクなことねえし、会社も上司も全てクソだし、時間もねえから生き甲斐もねえし、何か面白ぇことねぇかなぁ。」
会社の喫煙所で一服してから帰ればよかったなと思いつつ、コンビニまで愚痴をこぼしながら向かう。
「いらっしゃいませ〜」
「お兄さんお疲れですねぇ〜、いつもお仕事お疲れ様です!」
いつも元気な学生バイトちゃん。
残業帰りに寄る程度だけど覚えててくれたんだな。
「ありがとうございます。店員さんも遅くまでお疲れ様ですねぇ。あ、タバコ…」
番号を言いかけた時、
「今日も買うかなと思って持ってきてありますよ〜」
「ありがとうございます、終わりまで頑張ってね。」
「ありがとうございました〜、またお待ちしてますね〜」
もうこの時間に来たくないけどなと思いながら、帰る前にコンビニの喫煙所でとりあえず無心で1本吸う。
1本目が吸い終わり、2本目に火をつけながらさっきの店員さんを思い出す。
「今日も相変わらずクソだったけど少しはいい事あったなぁ、そろそろ帰るか。」
今日は何故か新鮮さを求めていつもとは違う道から帰った。
「コンビニ店員ものもありだな…よし、帰ってやること終わったら探すか。」
「この道こんなに暗かったっけな」
家まであと数メートルの街灯の近くに誰かが倒れていた。
「大丈夫ですか?」
「おぉ、お主、すまないのぅ」
「どうかしたんですか?」
「まぁちと貧血気味でのぅ、よかったら血をくれぬかお主。」
「まぁ、血くらいなら別にいいですよ。血の気多いんで。」
少女がニヤリと笑っているような気がした。でも暗くてはっきり見えない。
「じゃあちといただくとするかの。」
少女は俺の首に噛み付いた。
最初は針で刺されたようなチクッとした痛みだったが、血を吸われている間はなぜか今までにない気持ちよさがあった。
「非常に美味な血じゃな、感謝するぞ、お主様」
ガチャ…
「ふぅ…今日も疲れたな」
家に着き荷物を置いてから、うがいと手洗いをしに洗面所へ向かう。
「ガラガラ、ぺっ。ん…?」
「さっき俺噛まれたよな?傷がないな。ま、いいか。」
シャワーを浴び、コンビニで買った弁当を食べ終えて、寝るまでの自由時間だ。
「さてと、今日はコンビニ店員もの調べるか〜」
うつ伏せでスマホをポチポチしながらコンビニ店員が出てくるエロ漫画を漁る。
「ほほぅ、主様はこういうのがお好きなんじゃな?」
ニヤニヤした口調で聞き覚えのある声が聞こえた。
「え?どこから入ったの?」
「玄関からじゃが?」
「毎日ちゃんと鍵閉めてるはずなんだけど…」
「何を言っておるんじゃ?ワシは吸血鬼じゃぞ?鍵が閉まってようと閉まってなかろうと侵入なんぞ容易いことよ。」
少女は当たり前のように答えた。
「てかなんでいるんだ?」
「そんなの決まっておるだろ。さっき噛み付いた時もう既に主従関係ができておるのじゃ。そうなったらもう近くにおるしかないじゃろうが。」
少女はまた当たり前のように答えた。
「今日はもう疲れたからエロ漫画漁って寝るから、明日詳しく教えてくれ」
そして現在ーー
「交番連れてくか」
「なんじゃ?ホテルとかではないのか?」
この吸血鬼は相変わらずニヤニヤした口調で煽ってくる。
「牛丼買ってあるけど食わないのか?」
「早く帰るぞ主様よ。」
この吸血鬼、なぜか俺よりも先に女性を抱えて動き出している。
「さっきまでの煽りはどうしたんだ?」
「牛丼が冷めてしまうではないか!早く帰るぞ主様よ!」
「もちろんキングサイズにしてくれたんじゃろうな!」
「昨日食いきれなかったんだから特盛だよ」
明は少し笑い混じりに言う。
「なんじゃと!!」
こいつと出会う前の生活よりも楽しいな。




