# 配信探偵 第一話 推し活殺人事件
ミステリーとワクワクの幕開けです! 推し活に捧げていた日常が、一変して血生臭い事件に染まります。 愛するアイドルのために生きていた田中義雄は、なぜ命を落としたのか? 謎が渦巻く舞台に、敏腕探偵の桐島剛と助手の水沢葵が立ち向かいます。 光と闇、そして欲望が交差する先に、一体どんな真実が待ち受けているのか? 全てはここから始まります。
## 一
七月の夜、田中義雄は死んでいた。
マンションの一室、テレビの前で。画面にはYouTubeの配信画面が映したまま——「古事記チャンネル」のライブ配信だった。派手なサムネイルに、再生数は三万を超えている。
発見したのは翌朝、職場の同僚だった。
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## 二
探偵の桐島剛は、自分のことを「動画編集者」と名乗るほうが多い。
実際、生活費の大半はYouTubeから来ている。チャンネル名は「桐島と葵の事件簿」。出演するのは助手の水沢葵——長い黒髪と、やたら鋭い観察眼を持つ二十代の女性だ。桐島が撮影・編集を担当し、葵が画面の前でしゃべる。チャンネル登録者数はそこそこ。食べていける、ギリギリのラインで。
そんな二人のもとに、今回の依頼が舞い込んできた。
依頼人は田中の姉。「弟は殺された。でも警察は事故死として処理しようとしている」という。
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## 三
現場を見た桐島は、ひとつのことが気になった。
田中の部屋には「古事記チャンネル」のグッズが並んでいた。ステッカー、アクリルスタンド、マグカップ。熱心なファンだったのは明らかだ。
「この配信、知ってる?」桐島は葵に聞いた。
「知らない。でも昨日もライブやってたみたいね。アーカイブが残ってる」
葵がスマートフォンを操作して、昨夜の配信アーカイブを再生した。配信者が古事記の神話を面白おかしく解説している。コメント欄はにぎやかだ。
そして、配信の途中——画面の端に、QRコードが映し出された。チャンネルのグッズ販売サイトへの誘導だった。数分間、画面に表示され続けている。
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## 四
容疑者は田中の同僚、村上という男だった。
だが村上には完璧なアリバイがあった。田中が死亡したとされる昨夜十時ごろのスマホ決済履歴を、村上は警察に提出していた。履歴には時刻と決済場所の情報が記載されており、現場から四十キロ離れた地点での決済となっていた。
「その時間、あそこにいたんです」と村上は言った。「スマホの履歴がある」
警察もそれ以上追えなかった。
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## 五
その夜、桐島と葵は事務所で配信のアーカイブを見直していた。
葵がノートパソコンを広げ、昨夜の配信を流している。桐島はコーヒーを飲みながら、ぼんやりと画面を眺めていた。
「ねえ」葵が言った。「このQRコード、ずっと映ってるね」
「そうだな」
「スキャンしたら、どこに飛ぶんだろ」葵はスマートフォンをかざした。「……グッズのサイトだ。かわいい。あ、ステッカー買おうかな」
「買うな」
「なんで」
「……待て」
桐島は立ち上がった。
「葵、その購入画面——スクリーンショット撮ってくれ」
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## 六
シンプルな話だった。気づいてしまえば。
村上は田中を衝動的に殺した後、田中の部屋で画面に映っていたQRコードに気づいた。「古事記チャンネル」のライブ配信——被害者がいつも見ていた、あの配信だ。
村上はスマートフォンで配信画面のQRコードをスキャンし、決済を完了させた。
QR決済の履歴には時刻と「決済場所」が記録される——だがその「場所」はQRコードを所持している側、つまり古事記チャンネルの配信者の情報だ。配信者は現場から四十キロ離れた場所にいた。だから決済履歴には、あたかも村上がその場所にいたかのような情報が残った。
村上はその履歴を警察に提出し、アリバイとした。タイムスタンプは「昨夜十時十五分」。田中の死亡推定時刻と完全に重なっていた。
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## 七
「どうやって気づいたんですか」と葵が聞いた。翌日、事件が解決した後で。
「お前がQRコードをスキャンしようとしたからだ」桐島は答えた。「田中は熱心なファンだった。ライブ中はずっとスマートフォンを手元に置いていたはずだ。なのに、購入履歴がなかった。毎回ライブを見ているのに、昨夜だけ購入していない——それは、昨夜は別の誰かがスキャンする前に、田中がすでに死んでいたからだ」
葵はしばらく黙っていた。
「……それ、動画にしよう」
「するな」
「なんで」
「村上がまだ捕まってないからだ」
葵は少し考えてから、ノートパソコンを閉じた。
「……じゃあ捕まったら」
「考える」
窓の外で、夏の夜が静かに過ぎていった。
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**了**
「配信探偵 第一話 推し活殺人事件」をお読みいただき、ありがとうございます。推しのYouTuberを巡る悲劇から始まった本作。一見単純に見えた事件は、QR決済に隠された謎、そして登場人物たちの思惑が複雑に絡み合い、予断を許さない展開へと続きます。
探偵役の桐島剛と水沢葵は、YouTuberとしての顔も持ち、彼らの推理劇は次なる事件へと導いていくことでしょう。第二話では、一体どんな真実が明らかになるのでしょうか?どうぞ、ご期待ください。




