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第1話 目覚め

 宗鏡玄心は困惑していた。

 ただ仕事中に少し居眠りをしただけなのに、なぜ目が覚めると外はすっかり暗くなっているのか。

 全身もまるで誰かに殴られたように、全ての関節がだるく痛む。

 目を開けるという単純な動作さえ、冷たい空気を二度吸い込んでようやくこなせたほどだった。


 視界に入ってきたのは、傾いた堂柱、半分壊れた仏像、そして穴の空いた屋根だった。

 瓦礫の散乱する地面の上では、耳から雑草が生えている泥の菩薩だけが、彼よりもなお見すぼらしい様子で横たわっていた。

 その折れた腕が指し示す先には、香煙は立ちのぼっておらず、ただぱちぱちと音を立てる焚き火の炎があるだけだった。

 火の周りには七、八人の人影が座り込んでいた。

 中心にいるのは、半ば古びた武士の鎧を身にまとった大柄な男で、彼は焦りに駆られた様子で、声をひそめて早口に話していた。


「宗鏡君は城まで持たないだろう。彼を連れて行けば、我々全員が道連れにされてしまう!」

 彼は腕を上げ、宗鏡玄心が横たわる隅を指さした。

「隊長が死ぬ前に、全員を連れて帰れと頼んだのは分かっている。だが、諸君も自分の家族のことを考えてみろ。もし後ろから追ってくる“アレ”に捕まれば、我々は一人も生き残れない!」

「では……野村殿、お前の意見は?」

 焚き火のそばで、頭に包帯を巻いたもう一人の武士が低く問いかけた。

「……諸君、決断すべき時だ……」

 その言葉を最後に、誰も声を上げる者はなかった。


 泥の菩薩の傍らに横たわる宗鏡玄心は、人々の言葉を聞き、全身が冷たくなるのを感じた。

 さっき、脳裏に散らばった記憶によって、彼は自分が置かれた状況を理解していた。

 ここは日本の江戸時代に似ているが、大きく異なる世界だった。

 妖魔が跋扈し、人は草のごとく切り捨てられる。

 この体の元の持ち主は、島原藩の下級武士だった。

 日中、妖魔討伐隊に従って城を出たが、情報の誤りにより魔物の実力を読み違え、部隊に甚大な被害が出た。

 最後には隊長が命懸けで後詰めとなり、かろうじて逃げ延びた者はわずかだった。

 本来の持ち主は重傷を負い、皆と共にここまで逃げてきたところで意識を失った。

 こうして、この下級武士である自分は今……皆の目には重荷と映っているのだ。


 彼らは自分を置き去りにしようとしている……


(違う!彼らは自分がもう目を覚ましていることを知らない!)

(まだ動ける!)

 そう思うと、宗鏡玄心は歯を食いしばり、もがきながら起き上がろうとした。

 しかし、しばらく力を入れても、四肢は鉛を流し込まれたように重く、指一本さえ動かせない。

 喉からはがらがらという音がするだけで、一言も発することができない。

(この体、いったいどうなっているんだ?!)


 ちょうどその時、焚き火のそばの人々は話し合いを終えたようだった。

 彼らは次々に立ち上がり、うつむいたまま寺の外へと歩き出した。

 誰も話さず、誰も振り返らない。

 まるで自分はすでに全員から忘れ去られたかのようだ。

 しばらくすると、この廃寺には次第に遠ざかっていく足音だけが響くようになった。


 野村という名の大柄な男が、最後に立ち去る者だった。

 彼は火を踏み消そうとし、ちょうど振り返って去ろうとしたその瞬間、突然動きを止めた。

 ゆっくりと振り返り、隅の宗鏡玄心を見つめた。

 屋根の穴から漏れる月明かりが、ちょうど互いの顔を照らし出した。

 二人の視線がまともにぶつかった……


(待て、待て!)

(行くな!)

(もう目を覚ましている!私も連れて行ってくれ!)

 相手が自分に気づいたのを見て、強い生存本能が心に湧き上がった。

 しかし今の彼は口がきけず、ただ目を大きく見開き、切実なまなざしで相手を見つめるしかなかった。


 野村は眉をひそめ、宗鏡玄心がすでに目を覚ましているとは明らかに予想していなかった。

 彼は口をゆがめ、ゆっくりと近づくと、やがて軽蔑的に笑った。

「宗鏡君よ……」

 身をかがめて近づき、声は低くしわがれていた。

「わしがお前に仕込んだ麻薬の味はどうだい?まあ、仮に早く目を覚ましたとしても無駄だぞ」

「“アレ”が来たら、そう長くはかからん、お前はこの世からきれいさっぱり消え失せるからな」


 その言葉を聞いて、宗鏡玄心は瞬時に全てを理解した。

 自分が口をきけず、身動きがとれない原因は、なんと目の前の野村が麻薬を仕込んだからだった!

 彼はぼう然と相手を見つめ、目には信じられないという感情が満ちていた。

 相手の情報がさらに直接、脳裏に浮かび上がった。


 野村賀力(のむら かりき)

 彼も島原藩の「妖魔祓い方(ようまばらいかた)」に属す。

 両者の父親の代に因縁があり、普段からそりが合わず、ついには手を出すことさえあった。

 今、妖魔の襲撃と部隊の崩壊に乗じて、彼を暗算し死に追いやろうとしているとは!

 なんと陰険な心根だろう!


「そんな目で見るなよ、安心して死ね、お前の妹はいい値で売ってやるからな」

 そう言い残すと、彼は振り返って去ろうとした。

 立ち去る前に、ブーツのつま先が宗鏡玄心の腹に容赦なく蹴り込まれた。


「ぐっ……」

 宗鏡玄心は胃が痙攣するのを感じ、激しい窒息感が突然襲ってきた。

 彼は相手が暮れなずむ景色の中に消えていく後ろ姿を睨みつけ、歯をきしませた……


 どれほどの時間が経っただろうか。月明かりがゆっくりと敷居から菩薩の折れた腕へと這い上がってきた時、彼はようやく体への支配を取り戻した。

 まず指がわずかに動き、次に腕が上がるようになり、最後には歯を食いしばり、ようやく上半身を起こすことができた。

 彼は壊れた仏壇の傍らにもたれかかり、深く息を吸い込もうとしたその時、言いようのない獣のような獣臭が突然鼻腔を襲った。

(待て!何か忘れていたことではなかったか?!)

 全身の血が一瞬で冷えたかのようだった。


 はあっ……はあっ……

 寺の外から突然、荒々しい呼吸の音が響いてきた。

 重苦しい足音と混ざり合い、その生臭い獣臭はますます鼻をつき、ほとんど実体を帯びるほどだった。


 宗鏡玄心は首がこわばり、少しずつ振り返って見た。

 すると、黒い毛に覆われた鋭い爪がひとつ、戸口の框に掛かっているのが見えた。

 続いて、壁の陰から巨大な影が一つ現れ、寺の入り口を完全に塞いだ。

 おそらく入口が狭すぎると感じたのか、その影は両方の爪で戸口の框の両側を掴み、さっと力を入れた。

 大した力も入れていないように見えるのに、両側に押しやる。

 がしゃん!ざあっ——

 半分のレンガ壁が框もろとも外側に轟音と共に崩れ落ちた。


 月明かりに遮るものがなくなり、冷たく寺内に差し込んだ。

 舞い上がる土煙の中、大きな鼠の頭を持ち、全身を艶やかな黒毛で覆った人型の怪物が、寺の中へと一歩を踏み入れた。

 それはまず空気を嗅ぎながら上を向き、地面に落ちている幾つかの血まみれの衣服を拾い上げ、鼻先で匂いを嗅ぐと、不満そうに傍らへと放り投げた。

 最後に、ゆっくりと首を回し、その真っ赤な眼玉がついに宗鏡玄心を捉えた。


「キー……不愉快……」

 その喉が動き、ぎこちない人間の言葉を一言発した。

「騙された……キー……肉は一つしかない……」


 この光景を見て、宗鏡玄心の背筋は瞬間的に緊張した。

 突然思い出した。目の前の怪物はまさしく彼らの討伐隊が今回標的にしていたものではないか!

 昼間、この鼠妖は小隊の包囲攻撃を受けても傷一つ負わず、毛が数本折れただけだった。

 しかし相手が反撃に転じたとき、彼らはほとんど全滅状態に追い込まれたのだ。

 最も武芸に長けていた隊長でさえ、相手に片腕を生々しくもぎ取られてしまった……


(こんな怪物を前にして、本当に生き残る道はあるのか?)

 宗鏡玄心の心に絶望が湧き上がった。

 新しい世界にタイムスリップしてきたばかりなのに、一言も話す間もなく、人に陥れられて死ぬとは。

 それも、畜生に食われるというのか!

(本当に無念だ!……)


 鼠妖は一歩一歩近づいてくる。

 透き通ったよだれがその牙の隙間から流れ落ち、輝く糸を引いていた。

 宗鏡玄心の目前まで来ると、それは身をかがめ、鋭い爪の一つで彼の襟首をがっちり掴み、彼を地面から持ち上げ、揺さぶった。

「痩せている……つまらない……」

 鼠妖がつぶやくと、吐き出す熱気は生臭く鼻をついた。


 宙にぶら下げられた宗鏡玄心の眼前には、まさしくあの森然と並んだ白い牙の列があった。

(ここで死ぬのか?)

(この忌々しい場所に来たばかりなのに、鼠の餌食になるのか?)

(あまりに醜悪だ!)

(無念だ!あまりに無念だ!)


 彼は絶望的に身の周りを手探りした。

 突然、右手の掌が何か硬いものに触れた。

 指先に伝わるなじみ深い凹凸を感じると、彼は無意識にそれを握りしめた……

 下を見下ろす。

 冷たい月明かりの下、一振りの打刀が彼の手にしっかりと握られていた。

 鮫皮で巻かれ、目貫は錆びつき、柄巻の糸の端がほつれ出ている。

 これはまさしく記憶の中で彼が日常的に佩用していた武士刀ではないか?!


 ちょうどその時、眼前に光のスクリーンがポップアップした。

【名前:宗鏡玄心】

【剣術流派】

【神玄無反流】

【剣技1:青嵐(入門)】

【剣技2:逆巻(熟練)】

【剣技3:隠貫(入門)】

【説明:妖魔の寿命を剣技に注入し、迅速に修練可能】

【現在利用可能な妖魔寿命:0年】

【借用可能な妖魔寿命:50年(一ヶ月後、60年を返済する必要があります)】

【注:期限までに返済しない場合、破産即死亡】


  「キー……何を見ている……キー……もう抵抗するな、すぐに終わるぞ!」

  光のスクリーン越しに、鼠妖の血盆大口が完全に開かれていた。

  牙の隙間にはまだ血のついた肉片がかすかに見え、生臭さが面を圧した。

  自分の筋肉と骨がこれから相手に引き裂かれることを想像すると、宗鏡玄心の目の中の狂気はますます激しくなっていった。

  (よかろう!お前が俺を食おうというなら、どちらがより凶悪か、比べてみようじゃないか!)


  【妖魔寿命を借用しますか?】

  「もちろんだ!」

  【妖魔寿命50年を借用しました……】


  【剣技を修練しますか?】

  「もちろんだ!“逆巻”を選択する!」

  「全てを注入してくれ!」


  「これに……感謝する!」

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