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白と黒の世界  作者: 永流
8/10

第8話 つかの間の温もり

挿絵(By みてみん)

俺は風呂場に入り、シャワーの蛇口を捻った。


ッシャァァァー!!


久しぶりに、シャワーのお湯を浴びた…。

暖かい…。だが、……その温もりを「心地よい」と感じている自分を、……どこか遠くで客観的に見ている自分がいる。…殺されて、無理やり起こされたもんな…。


…俺の目じりは、また熱くなった…。


さっき、もし母さんに触ることが出来たら…、

どれだけ”温もり”を感じることができたか…。


そう思いながら、身体を洗い、湯舟に浸かった。

以前は”潜るな”と言われたが…、今は俺専用の湯舟だ…。


ジャポン…。


俺は、仰向けになって潜った…。

水面に光か差し込み、揺れている…。


はぁ~…、気持ち良い…。最高だ…。

…やっと、"ちょっと帰れたかな"…。


でも…やっぱり、こんな俺を本当に受け入れてくれるのは、家族の皆でも、もうちょっとかかるよな…。


雷虎の耳も、虎耳と人間の耳が出てたし…。


あの時は、俺はそんなつもりは無かったけど…。

…あれ、絶対に怖がらせてしまったよな…。

…気をつけよ…。



俺は、右手の人差し指を浴槽の縁まで伸ばし、そこから呼吸をして、ゆっくり10分程浸かったんだ。


指呼吸…、まさか、結衣の時の潜水の夢を…こんな形で叶えるとはな…。正直、めちゃくちゃ便利な身体だが…それでもな…。


"俺はもう、結衣じゃない。…化け物なんだ"って、思い知らされるよ…。


俺の涙が、お湯に溶けていく…。


…本当に、不安で不安で堪らないんだ…。

でも、頑張って前を向こうとは思えてきたんだ…。


ガラガラガラガラ……


俺は浴室から出て、身体を拭き、浴衣に手を伸ばした…。


浴衣は150㎝用と160㎝用が準備されていた…。


あぁ…まさか、150㎝用を着る事になるとはな…。獣化の時はもう少し身長もあったから、国王を見下していたのに…、今ではコイツを見上げる事になるなんてな…。


俺は等身大の鏡で、自分の体を見た…。



テレビに映るような王子様系のイケメンではないが…

堀はやや深めで、二重で黒の短髪で…体は細マッチョ的な感じだ。



うん…、見た目は本当に”男子中学生”だ…。だが…、その目だけは、幼さなんて微塵もない…。化け物とディオラが混ざってる黒々とした目だ…。


「国王…、風呂に入って良いぞ…。俺は、お前が出るまでここで待ってるからよ。」

今度は俺が後ろを向いて、目を閉じた。


「…ありがとうございます。なるべく早く出ます。」

国王の声が聞こえた…。


…5分程で出てきて、浴衣に着替え、長い髪をドライヤーではなく、”能力”で一瞬で乾かした…。

「お待たせ致しました…。」


…もうちょっと、ゆっくり入っていても良かったのに…。まぁ、良いか…。


「さて、行こうか…」



 俺は脱衣所の扉を開けた。

「なんだ…、皆速いな…」


 実は皆、物凄い速さでお風呂に入っていたんだ。

”主を待たせたくない”という思いと、”人間の姿を見たい”という思いで…。


湯舟に入っていたのは”10秒”だけだったが、”一瞬の戦い”の時間を過ごした皆にとっては、十分過ぎる時間だった。


スタスタスタスタ…


龍輝がやってきて、俺の前で跪いた。

「食事の用意が出来ましたので、お呼びに参りました」


「分かった…、ありがとう。龍影と国王以外は、先にダイニングに行っといてくれ。俺達は"用事"を済ませてから行くからよ…。」


俺は龍影に目線を移した。


「龍影、"裏庭の婆ちゃんの墓に行くぞ"…。…婆ちゃんが何者だったのか、話してもらうからな?」


龍影は完全に味方だと思ってた…。

お前は…、何処まで知っていて、何処まで関わっているんだ?


龍影はその場で跪いてきた。

「承知致しました…。」


……ああ…、やっぱり"心当たりがあるのか"…。


俺は少し、ショックを受けたんだ…。

"家族でいてくれ"って言ったのに、コイツも頭を下げてきた…。


確かに、龍影だけは他の家族と関係は違う…。龍影は、その昔…俺が組手相手目的で造った、"人造人間"だ…。


でも…、結衣の時は、"育ての父親だった"んだ…。まぁ、当時は「龍影さん」って呼んでいたがな…。龍影に「私は本当の父親ではない」と、散々言われて育ったもんだ…。当時は…父さんの顔なんて、覚えてなかったのにな…。


もう…、結衣の時の関係には…、戻れないのかな…。

龍影の目も…表情も…、もう、「龍影さん」じゃない…。ディオラとしていて生きていた時の「零ノ宮龍影」だ…。


俺は…また、少しシュンと落ち込んだんだ…。

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