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白と黒の世界  作者: 永流
7/11

第7話 肌の温度

挿絵(By みてみん)

更衣室に入ると、床の上の服入れ用のカゴに、国王用の浴衣がセットされており、棚の最も取りやすい位置に俺用の浴衣が用意されていた。


さて…

「国王、お前は後ろを向いてろ。…人間の姿ってどうやってなるんだ??」


やり方はなんとなく想像できるけど…


国王は俺に対し反対方向に向き、その場で正座した。


「人間のイメージをしつつ、人間の体には無い大きめの部分は折りたたんでしまい込み、小さい部分は、そのまま身体にしまい込むイメージです」


…ざっくりだな…。

つまり、折りたたみながら、生え方に沿って凹ましていくイメージか…?

とりあえずやってみるか…。


…!!


イメージ通りに、身体が変化していく感じがした…。

これ、なんか気持ち悪いな…。


尻尾はちゃんと尾てい骨に沿って凹んで行った。

なるほど…、"理にかなってるな"…。


背骨の神経が、そのまま尻尾まで来てたのか…。

そら〜コレで吸収したものは、直ぐにこの身体に還元されるわな…。


…だが、待てよ?

コレって考え方によっては、かなり応用が効くんじゃないか??さっきの腕の変化もそうだったしな…。


「なぁ国王、尻尾の役割って他の部分でも出来るのか?」

出来たら便利だよな?


「…できます。貴方様の体の部位は、それぞれが体全ての役割を担っています。つまり、どの場所からでも、尻尾の役割をするモノは出せます。例えば指でも可能です。」


国王は淡々と説明してくれた。


えっ…?…???!…凄くね……!?


俺は、目をパチクリしてしまっていたんだ。


奴隷兵を造るのに使ったこの尻尾が、全身で使えるだと…!?…マジか…。これ、相当凄いぞ…?


…後で、使う練習をしよう。というか、全身操作の練習をしよう。多分、これはかなり役立つぞ…。



「なぁ、頭の部分のそれぞれの“毛”っていうのは、“出す”イメージか?」

もはや、確信犯的な感じで国王に聞いた。


「…その通りでございます。」


俺は目を閉じ、イメージしながら出したんだ。


…人間の“男”の姿になれた…と思う。



俺は自分の体を見るより前に、後ろ向きで立っている国王を見た。


!!…これ、絶対国王より身長低いよな…。


国王って160㎝だったよな?っていうことは…この目線的に、150㎝…だよな…?せめて160は欲しけど…、理想言えば170㎝は欲しい…。


「なぁ、国王。この人間の姿って、身長伸びるのか?」


…これで止まりとかだったら、かなりショックなんだが?


「年齢に応じて、伸びるようになっております。今の貴方様は、成長期真っ盛りなので…。」


でた!男子中学生の成長期!!


これは、あれか!卒業までにめっちゃ伸びるやつか?!そうであればかなり嬉しいけど…今は、こいつより、身長が低いっていうのが…


やっぱり結構凹むんだが…?



「…なるほど…成長期か。まぁ…なら、とりあえずこれで過ごすか…。」


…仕方ない…。これは妥協しよう…。


久しぶりに人間の…、自分の手足を見た…。

…生えてるよな…?動くよな?


俺は両手を見つめながら、掌を握ったり開いたりしたんだ…。



…動いた。



そうそう…、この感覚。この肌触り…。

人間の肌だ…。戻った…!!!


俺はかなり…いや、めちゃくちゃ嬉しくて、両手に力を入れ、下を向いて涙目になっていた。



さて…、この姿で、国王を…他の人達を見ることが出来るのか…?目を合わせ…、触れられるのか…?



…俺の脳裏に、闇の世界で過ごした日々が蘇る…。


…怖い…。怖かったんだ…。



目の前に、求めていた”最強の母さん”がいるのに…、”黒幕で…元凶”だった…。


そんな人を…俺は、触れられるだろうか…。



「国王…目を閉じて、こっちを向いてくれ…。何も…”力”を使うなよ…。」


心臓の音が高鳴る…。高鳴るのに…、血の気が下がりそうだ…。


「…はい…。」

国王は俺の方を向いた。


国王の姿は見えている…。見えているが、国王は目を閉じ、そこに居ないと思ってしまうぐらい、気配を抑えてくれていた…。


"俺に対し、一切刺激をしない為の判断"だ…。



…助かる…。…けど…、やっぱり…怖い。


さっきまでは”怪物の体”だったから良かったものを…。”人間の体”になったとたんこれだ…。


俺に”ディオラの記憶”が戻っても…、今の俺は”結衣の記憶”の延長にいる…。結衣の記憶や人格が無くなったわけじゃない…。


俺は…俺の記憶では、昨日殺されて、今朝生まれた状態だ…。…まだ、1日も経っていないんだ…。


…怖すぎる…。

けど…、"母さん"だ…。



俺は、頑張って母さんに近づいた…。

目の前にいるのに、かなり遠くに感じる…。


…俺は、母さんの体に手を伸ばした…。


…触れない…。さっきは、思いっきり風穴を開けたのに…。今は…、無理だ…。



「"ごめん"、国王…。やっぱり、一人で風呂に入るわ…。お前は、俺の後に入れ。俺が浴衣を着るまでは、後ろを向いて目を閉じていろ。」


…この姿では…、近くにさえ、いられない…。

俺は、風呂場に入ったんだ。

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