第5話 結衣の婆ちゃん
"こいつなら有り得る"!!
聞きたくはないが…、聞かなければ……!!
俺は…、殆ど握力が残っていない手に、必死に力を込めていたんだ…。
「お前にとって…!!婆ちゃんは何だ!!…"婆ちゃんは何者なんだ"!!」
結衣の時はずっと…、血の繋がった婆ちゃんだと思ってた…。でも…、全てを思い出した今、"絶対に違うと確信してしまった"んだ。なんせ……
コイツは、"外の世界…神の国の初代国王"だ…。寿命という概念が無い……、殺さなければ、"不老不死"なんだ…。俺と魔神はコイツに造られたんだ…。コイツがどうやって生まれたかは知らん……。だが、俺がコイツから初めて生まれた時……
"他に何も無かったんだ"…。
何も無くて…無性に寂しくなって、"二人で沢山創った"んだ…。
国王の右手が、俺の左手に触れてきた。
「"龍影と一緒です"…。ですが、此処での私には、創る力は殆どありませんでした…。この事は、龍影以外は知りません…。もし…宜しければ、今からの食卓で皆に説明する際、この事も一緒に説明させて頂きます。」
国王は真っ直ぐ俺を見てきた。
「……毎週明けに行っていた"墓参り"……、当時は当たり前過ぎて思わなかったが…、"今思い出せば、全部不自然過ぎる"……。……今、"婆ちゃんの魂は何処にあるんだ"?」
……龍影…、お前も共犯なのか…?
「"メル"……、結衣がいつも参拝していた、本殿に繋がる階段の中央横の奥の部屋でございます…。」
「中央…横の奥…??」
……そんな場所あったか???下がったり曲がりくねってはいるが、上まで一本道だぞ??
「はい。…"隠し扉"の構造ですし、80年前から先代が死ぬまでは、使用していませんでしたから…。まぁ、この"ひ弱"な力だと長持ちしませんが、"居ないよはマシなので"…。」
国王の口角が少し上がったのを、俺は見逃さなかった。
俺は言葉が出せず、両手は震えていた。
嫌な予感しかしない……。今すぐ全部吐かしたいが、2度も聞く体力は残っていない…。
「…案内…、してくれるんだろうな?」
色々…覚悟を決めないとな…。
「はい…。"御命令とあらば"…、今直ぐにでも…。」
遂に、話す時が来てしまったわね…。でも…、今日はこれ以上…貴方様が無茶をすれば、昔みたいに、気絶寝は必須でしょうに…。こんな奴隷の前でも、まだ強がっているのですか?
「ッチ……。全く…、"命拾いしたな"……。」
俺は国王の襟を手放したんだ…。正直、本当に特に腕は疲労困憊なんだ…。この身体は人間のそれとは全く異なる…。詳しくは分からんが、"馴染み過ぎて"ちょっとイメージしただけで形が変わる…、まるで考えただけで、粘土細工が細かく作れてしまうような…そんな感覚だった。…はぁ…、聴きたい事が多過ぎる…。
それにしても、親父が言っていた"闇の場所"ってのは、墓と関係があるのかもな…。実際に行って、確かめて見るしかねぇよな…。奴隷とは言え、今更"コイツの言葉なんて信じたくはないしな"…。
「…は、離して頂き…、有難う御座います…。」
"眠気と空腹…そして、この怒り"…。爆発しないのが不思議なくらいなんだけど…。どうして…?
国王は再びその場で頭を下げた。
コンコン…
また、ドアのノック音が聞こえた。
扉は開いたままで、向こう側に雷虎が跪いていた。
「お風呂の準備が出来ましたので、ご報告に参りました。」
俺は知里の手紙を持ったまま、雷虎に近づき、その場にしゃがみ込んだ。
…雷虎は、俺と国王の赤い目を見て、驚いていた。
「雷虎、風呂の準備…ありがとう。後、食事の時に全部説明するから、この"知里からの手紙"を奴隷達皆ときぃ婆で読んどいてくれ。」
「読んだら、龍輝以外の奴隷達皆風呂に入れ。流石に血と砂で汚れてるだろ?あ…、その手紙の内容は俺達の説明が終わるまで、誰も龍輝を問い詰めるな。後、食卓の椅子をもう2つ、追加しといてくれ…。」
「かしこまりました。後、寝巻きは…」
「来客用の浴衣で構わない。150~160cm用の浴衣を頼む。後、こいつの浴衣も頼む。それと、風呂の後に"墓"に行ってくる…。」
「!…承知しました…。では、失礼致します。」
バチチッ…
雷虎は雷の如く、去っていった。
婆ちゃんの墓に行くんだ…。
…"このままで行けるかよ"…。
それに…、"少し落ち着きたい"…。
こうして、俺と国王は風呂に向かったんだ。




