表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白と黒の世界  作者: 永流
3/10

第3話 知里からの手紙

挿絵(By みてみん)

俺は、生前の自分の部屋の前に立っていた…。


本当は…、知里からの物が無ければ、自分の部屋に入る気なんて無かったんだ…。


そもそも…、自分の事を"俺"と言っているのも、自分自身に少し違和感がある…。


…男としての時間が圧倒的に長いが、それでも、直前まで"結衣"として過ごしたんだ…。


まぁ、転生はこれで3回目だがな…。前回以外は、男として過ごしていたし、今回…、起こされた瞬間に"全てを思い出した"からな…。


でも…、思い出したからこそ……、事実が残酷過ぎて…受け入れられなくて…、ここに来る直前に、父さんをこの手にかけたんだ…。


体が"男である"のと"雌の姿になることはできない"と言われなければ、俺は"女の心のまま"過ごすことができたし……、"戻りたかった"んだ…。


だが、こうなった以上、後戻りは出来ない…。進むしかないんだ…。恨まれてたって良い…、怖がられても良い…。


"孤独には慣れてる"…。


…だから…、今の俺に、"知里の物を見る義務"はないし、…実際、入らなくても良い…。


俺が一言、「この部屋のモノを全て処分しろ」と言えば、もう…、結衣の記憶に縛られることもない…。


ついさっき…、"冷酷な神"として、皆が見たはずだ…。

そんな奴が、"一緒のクラス"にいたら、嫌だろ?


…勿論、本当は皆の元に戻りたい…!


けど…な?…戻れる訳…ないじゃないか…!



俺は…自分の部屋の前で、立ったまま下を向き、手を震わせて泣いていた…。


1番楽しかった記憶だ…

そう簡単に捨てれる訳がない…!!

戻りたい…!戻りたいよ…!


俺は、自分の部屋に入れずにいたんだ…。



…カツッカツッカツッ…


足音が俺の方に近づいて来た。


「…入られないのですか?」

国王だった。俺は事情を説明した。


「…おそらく、本当の意味で戻れないことはないと思いますよ?貴方様がいたクラスの一部は、ただの秀智院の学生ではありません。」


「ん?…どういう…ことだ?」

俺は涙を拭った。


「貴方様に…もう、隠す必要はありませんが…せめて、知里の物を御覧になられてから、説明をさせて下さい。」

そう言うと、国王は俺の生前の部屋を開けた。


しっかりと掃除された部屋の…俺の机の上に、分厚めの封筒が置かれていた。


「あの封筒は、誰も開けて見てはいません。ですが、本人より何が入っているのかは聞きました。知里は…いえ、皆は…貴方様を"待っています"。」


「!!…っ…」


限界だった…。気づいたら、俺は右手で"元凶の顔を思いっきり殴っていた"んだ…。


だが、俺の力はほぼ底をついていたから、殺傷力なんて無い…。


こいつをKOにすら出来ない微力しか出せなかったが、国王はその場に倒れ込み、意識を朦朧とさせた。


「お前なあ!!!…"どの口が言ってんだよ"!!"母さんのせい"で!!こうなったんだろうがよ!!"」


「俺は!!…人を傷つけた“化け物”なんだぞ!?皆、さっきのを見てるだろ!!"母さんのせい"で!!俺は全てを捨てたんだぞ!!!」


俺は涙目になりながら、右手で大きく振り払うように、国王に怒りをぶつけたんだ…。…"母さん"って、言うつもりは無かったんだがな…。


「…私の責任である事は…、重々…理解しております…。ですが…だからこそ、知里の手紙を読んで頂きたいのです…。そして、その後…、この件について、詳しく説明をさせて下さい…。」


…"母さん"って言ってくれた…。でも…、そうだよね…。"分かってる"…。


"もう…、母親じゃないよね…"。


国王はゆっくりと起き上がり、その場で化け物に土下座をしながら、涙を流していた…。


「…私は此方で控えておりますので…、どうか…中で手紙を御読み下さい…。」


母さんの身体は小さく見え…、震えていた…。


…ああ…、やっぱりそうなんだ…。

もう…、"母さんじゃないんだ"…。



"これが…、俺達の関係なんだ"…。



俺は目を閉じ、鼻から小さく息を吸い、深く息を吐いたんだ…。そして、再び目を開け、足下の"奴隷"を冷たい目線で見つめたんだ…。


「…分かった…。"そのまま待っていろ"…。」



俺は視線を部屋に移し、中に入ったんだ…。

そして、部屋の奥にある机に向かい、封筒を開けた。


中には手紙と分厚い本が入っていた。

本は…、アルバムだった…。


ーー俺は手を震わせながら、手紙を開けた。



 結衣へ


良かった…。

この手紙を読んでいるって事は、本当に生きてるんだよね…?

結衣が居なくなったあの日から、私も、中学校の皆も、凄く心配していたんだよ…。


でもね…、結衣が居なくなって少ししてから、私を含む、ソフトボール部の2年生は全員凄い頭痛に襲われて、1週間気を失っていたの…。それで、目を覚ました時、皆…思い出したんだよ…。


生前、結衣に…いえ、ディオラ様に仕えていた事を…。

私は"一ノ宮 桜蓮(おうれん)"だったことを…。


約2000年前、ディオラ様が亡くなったあの日、零隊長以外の私達隊長は、貴方様の母君であるローラ様に、半分冗談で、”来世もディオラ様に仕えたいです”と言いました。そしたら、"本当に皆がそう思うなら、仕えられるように出来なくはないよ"と…。それから、今まで知らなかった”神の世界”や”魔神との決戦”、"竜王様とローラ様の関係" について教えてもらいました…。


そして…ディオラ様が生まれ変わった後、”この国が滅びるような大事件が起きる”ことも…。

その黒幕がローラ様であること、ディオラ様の来世の身に起こることも…、その時知らされました。


正直、私達隊長は、ローラ様はとても恐ろしい人だと思いました…。だけど、それと同時に、ローラ様が物凄い覚悟をしているのも解りました…。


ローラ様は私達に…

「全ては私の責任です。貴方達も、主を苦しめる私を怨むのなら、怨んでもらって構いません。」

「ですが、一つお願いがあります。来世で”我が子”とこの…”怪物”の居場所になってもらいたいのです。」

…と、言ってきたのです。


…私達は、ローラ様の"共犯者"です。

私達は貴方様が苦しむのを、貴方様が生まれる前から知っていたのです。


知っていて…、記憶を伏せられ、本能のまま…結衣と出会ったのです。


知里として、結衣は私の“親友”でした…。


過去を思い出した今の私は、“親友を苦しめた罪悪感”でいっぱいです。私達に力があれば、決戦にも一緒に出陣出来たはずなのに…、生前、ローラ様は“皆では力不足です”と…。私達は従うしかありませんでした…。


今、手紙の前の貴方様は混乱していると思います。

私達に怒る気持ちを持つかもしれないと…、覚悟しています。


今のソフト部の2年生は全員、当時の隊長達の生まれ変わりです。


そして、記憶が戻った今…、ローラ様の許可を得て、国王様・黄鱗龍輝校長と共に、中等部全員にこの事を伝えました。勿論、”他言無用”と付け加えて…。


今の貴方様は…、”余計なお世話だ”と…呆れるかも知れません…。ですが、これは”共犯者になってしまった私達の責任の取り方”なのです…。


…貴方様を決して!孤独には致しません。生前、私達は貴方様を”敬愛”しておりました。ずっと、一緒に居られたらと…どれ程思った事でしょう…。


貴方様は…もしかしたら、私達を許してはくれないかもしれません。

そして、貴方様自身もきっと、”怪物”となった自分自身を許せないでしょう…。


それでも…もし、叶うのなら、もう一度”親友(ともだち)”になっては頂けませんか…?

もう一度、”クラスメイト”として、”仲間”として、一緒に手を取り合ってくれませんか?


皆、待っています。

貴方様のタイミングで構いません…。

また…一緒に、通学しませんか?


一ノ宮知里より。


 

…お前ら…なんて事をしてくれたんだ…!!

俺は…、その場で泣き崩れたんだ…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ