第23話 怒気全開放(依代6)
ピッ
結斗は結月からのテレパシーを受信した。
「結斗様、"お待たせ致しました"。準備、万事整いました。」
!…
「分かった。"合図をしたら頼むな"。」
母さんの"本気の準備"か…。
ニッ…
思わず口角を上げてしまった。
"頼もし過ぎんだろ"…。
キラキラキラキラ…
俺は、"やっと辿り着いた"旧宇宙球結界の数多くの破片を見つめた。
さっき、母さんが「今のこの身体なら、全身で食べれる"」って言ってたよな…。
全身…な。
…出来なくはないが、正直、身体をそこまで変形させる余裕はない。
…"吸うか"。
俺は尻尾の先端を30cm程開き、先端に青色オーラを宿し、"吸引"を始めた。
そして次の瞬間……
ズズズズズズズッ!!
全ての破片が、俺に吸い寄せられ始め、次々と入り込んできた。その光景は、まさに“ブラックホール”だった。
人間1人の大きさで吸引してるから、それなりに時間は少しかかるが、"元々俺のオーラ"だから、吸った瞬間にエネルギーに変えられる。
正直、"最も効率の良い食材"だな…。
ま、味がしないのは難点だがな。
こうして、俺はひたすら結界の破片を食べまくり、段々"身体の中心から力が溢れて来た"んだ。
一方、その頃龍影は投影を見ながら、結月の行動に納得していた…。
そうか…結月の奴、それで張り替えたのか…。しかも、空腹で怒気をめいっぱい出すなら、理性を保つのは難しいが、"空腹でなければ"、怒気をめいっぱい出しても制御はある程度出来る…。
だ、だが……それはつまり、"より力を出せる"って事だろ…?一体…どれ程の
ピピッ…(通信機の着信音)
ビクゥッ!
龍影は、着信が少し予想外で思わずビクついてしまったが、息を少し整えてガレラからの着信に応答し、結界スクリーンに向けた。
ブゥン…。
画面は投影の右下に小さく表示され、ガレラが映し出された。
「龍影様、全宇連…"全宇宙連盟"に加入している星々の者は皆、"それぞれの核シェルター"への避難が完了したと報告が上がりました。」
……は?
「…核シェルターな…。"そんなもの"……、このビッグバン放熱の前では"無意味"だぞ?結月の"出来る出来ないに委ねられている"…、星次元の話ではなく、"世界次元"の話しなのだ…。」
ガレラだって、分かってるだろ…?
「"無意味なのは百も承知"です。ですが、宇宙球結界の出来事により、"民達は本能で恐れ、そして恐怖し、少しでもより安全な場所へと向かった結果"なのです。」
!……フッ
龍影は思わず軽く笑ってしまった。
「だったら…"その場で、無事に終わる事を祈ってろ"。それしか出来ないんだ。それと、"宇宙球からは許可なく出るな"。出た者は魂ごと消えると思え。」
「!?…りょ、了解!」
ブゥン…。
ガレラの表示が消えた。
…全く、何を今更…。まあ、おかげで少し肩が楽になったがな…。
それはそうと、主が再び中心でビッグバンをさせて、結月が9つの宇宙球の前で怒気を受け流す…。
…で?
そこで終わりなワケがないよな?
この世界は幅も有限……、この世界自体が"完全な球体"なんだ…。放熱が宇宙球を過ぎれば壁に当たる…。主のビッグバン放熱が、壁に当たらない程の"極小エネルギー"なワケがない…。
"絶対当たる"…。
結月…、あんたは"そんな事"、分かってんだろ?
星外の民達が怖がるのも分かる…。
"私だって怖いさ"…。
だが、主が理性を失くしたままブチ切れて暴れ回るより、理性を保ち、"少しでも被害が少ないようにできるのなら"、明らかこちらの方が良い…。
"私にとって、究極の選択"なんだ…。
【怒気解放99.5%】
結月は結斗の怒気を正確に把握していた。
だが、当の本人である結斗は、結界の破片を食べながら、結氷(氷婆)の蘇生用のヘム鉄の鉄を作っていたら、"本能がコレでは駄目だ"と言い張ってきていた。そして、改めて自身の身体をオーラで把握し、その結果、怒気を全開にして創造力を全力でぶち込めば、"今の身体に合った素材が出来る可能性が出てきていた"。
そのため、更に加圧と加熱をする必要があった。
俺は残りの結界の破片を一気に食べ終え、思いっきり歯を食いしばった。
うおおおおおあおおおあおおお!
俺は右手に青オーラを宿し、胸の真ん中で左回転をかけ、怒気封印を全開にした。これが、"化け物として生きる、俺の償いだ"。
「怒気封印、全開放(100%)!!!!」
「はああああああああああああああ!!!」
結斗の身体は青白い光から白光へと変わり、そのエネルギーを球体に流し込む。
……次の瞬間。
ボコボコボコボコボコボコ!!!
球体が内側から膨れ上がり、形がいびつになってきた。
「まだだっ…!!」
俺は球体を保とうと、5体の分身体を出して、俺を上の頂点として、下の頂点と球体の赤道部分の四隅に分身体を配置し、更に加圧を試みたんだ。
「ぐっ…!!」
分身体を5体出しても、これ以上の加圧は難しいかっ!!
だが!!ここまで来れば、もう一押しだ!!
球体の表面が、徐々に白く光出してきた。これは、中の圧が球体を内側から押してくるため、表面が圧迫され、球体の"膜そのもの"が薄くなってきている事を表していた。
俺はずっと…帰宅してから"自分が情けなかった"…。ふつふつと…自分への怒りを煮たぎらしていたんだ。その怒りも、今、解放しよう!!そして!創造力・最大限行使"だ!!!
「ぐっ…!!うおおおおおおおおおあおおお!」
結斗は怒気を101%へ突破させ、創造神として、今出せる最大限の創造力を球体の内部に行使し、ヘム鉄用の鉄を"依代と自身に適合する新たな物質の生成に成功"した。
だが…その瞬間、球体の白光は更に強くなり、球体の膜の厚さが5cm、3cm、2cm、1cm、と薄くなっていく。
ピッ
結斗が結月にテレパシーを繋げた。
「母さん…"頼むぞ"。」
カチャ…
結月は左手の親指で僅かに刀身を出し、右手で取っ手部分を強く握った。
「"お任せを"。」
結月は霊視で真剣に見つめ、耳をすませる。
投影を見守る者、天井を見上げ、その上を想う者、身体を寄せ合い、目を閉じて手を合わせて祈る者……、皆不安だった。
だが、結斗が治める龍華大国の者達だけは、平和に過ごしていた。これは"敢えてであり、当然の采配だった"のだ。日中、国が化け物(結斗)に滅ぼされても、自分達に"被害は無く"、テレビを付けながら家族で夕食を食べたり、入浴したり、早い者は安心して寝ていた。
"せっかく安堵した国民に、無駄な不安を煽る意味が無い"と判断していたのだ。ましてや、結斗と結月は龍華大国の神と国王であり、2人は"国民と共に過ごす平和"を選んでいる。
"国王が国に背を向けて刀を抜く"。
国民達は知らなくて良い。
ただ、今はこれが、龍華にとって最大限の防衛なのだ。
緊張は最高潮…だが、結月は落ち着いていた。
落ち着かなければ…、"斬れないと分かっていた"んだ。
ふぅぅ……
結月は僅かな肩の力を、息と一緒に静かに吐いた。
そして……結斗は球体の赤道面を支える分身体の両手を刃に変え、"横に斬らせた"。
その瞬間、結月が動く。
ピカァアアアアアアアアア……!!
球体から光が溢れ出し、その光は球体の圧により並の光速とは比べ物にならない加速を伴い、各宇宙球に向かっていた。
勿論、ただの光ではなく、"測定不能の高温を伴った爆風"だ。
ッッドゴゴゴゴゴオオオオオオオ……!!
あまりの衝撃に、宇宙球の外側の何もない"虚無の世界"でさえ空間が揺れ、宇宙船があれば瞬く間に灰になる。
そんな中、結月は"この光の波"を全方位見極め、各宇宙球の正面中央に用意した転移孔を予定通り開け、虹色の刀を抜いた。
合気流…"九連・彩光の閃"。
結月から九連撃の"特大の一閃"が放たれ、その斬撃は白い逆三日月となり、各転移孔を通り抜け、九方向から光の波を斬り、左右へと受け流し、光の波は各宇宙球に当たる事なく、宇宙球の隙間を一瞬で通り抜けた。
その間、"2秒"。
各宇宙球の内部は''熱を帯びる事無く"、ただ2秒間、空は"無音"の白い光に覆われ、建物の中はその間電気が通じず停電を起こしたが、"それだけ"で、2秒後には通常運転に戻っていた。
カチャン…。
ふぅ…。
結月は刀を納刀し、"光の波を見送っていた"。
あんまり時間は無いけど、"蘇生するぐらいの時間"は確保出来るかな…。結斗様もご無事だし、これで良いでしょう…。
ピッ
結月の脳内に、結斗からのテレパシーを受信した。
「"さすが、俺の母さんだ"…。ありがとう。」
「!…いえ、"殺意が無かった"ので、こちらも助かりました…。ですが、まだ"油断は出来ません"…。あれが"戻ってくる前に"、結氷様の…いえ、"御母さん"の蘇生を行わないと…。」
……
結月は少し目を泳がせてしまった。そして、結斗はフッと呆れたような笑いを静かにしてしまった。
「…"御母さん"…な。本当に良いのか?俺は別に命令しないし、氷華(前世)は母さんの養子…、"俺の妹"だぞ…?」
「…結斗様が改めて"祖母"と決められ、あの方も…"こんな私を娘として見て下さった"……。それが、私にとっては"決め手"であり、素直に…"嬉しかった"のです…。……"ずっと母が欲しかった"……これは、個人的な"小さな望み"でしたが、半ば諦めてましたから…。あ…こんな場ですいません…。」
結月は少しうつ向き、目を泳がせていた。
だが、俺も…正直、"少し複雑"で、目を泳がせてしまった。
母さんに、"本当の親が居ないのは知っていた"…。親を知らず、何も知らず…"何も分からず"、全てを模索しながらやっていた。これは事実だ…。
…胸が締め付けられるようで、"苦しい"…。
俺は、震える右手をほぼ無意識に、胸の真ん中に当てていた。俺はこの半年は特にだが…、結衣の時も、ずっと穴が空いたままで…、外に行く度…"父に会えないか"と探していた…。
「まぁ、蘇生が終わったら"直に言ってみたらどうだ"?」
やっと出た言葉だった。…まさか、"今日"…言われるとは思わなかった…。でも、"今日だからこそ"か…。
俺は静かに…ひっそりと、泣いていたんだ。
俺はもう、精神も身体も…正直ボロボロだった。
俺だって万能じゃない…。当然、疲れたら眠くなる。
そのせいかもしれない…。涙脆くなってるんだろ…。
うん…そういう事にしておこう…。
「!…"分かりました"。機会があれば…伝えてみます。」
結斗様が泣いている…。そう…だよね。結斗様に辛い思いをさせた私が…、結斗様の前で言って良い事じゃ…ないよね…。許可は貰えたけど…、"一番辛いのは私じゃない"…。私は元凶…元凶なのよ…。"立場を弁えないと"…。
「…ああ、それで良い…。」
コキッコキッ…
結斗が首を左右に傾け、首筋を鳴らした。
「さて、"怒気が戻ってくる前に蘇生させるぞ"。」
結斗は気を引き締めなおし、"本題"へ意識を向けた。




