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白と黒の世界  作者: 永流
21/28

第18話 依代(第1章最終編突入)

挿絵(By みてみん)

※本作は、複数の転生・神話的設定・血縁関係が絡む物語です。混乱を防ぐため、主要登場人物を先に記載します。


⚫️登場人物

★主

(主人公)

・春華大国を滅ぼした存在

・王家である自分の家族を奴隷にした

・春華大国を「龍華大国」と改名

・龍華大国の神/創造神

・龍華大国の法律を自由に変更可能。

・罪人を直接自由に裁ける。

・罪人に刑罰を自由に施行出来る。

・母: 国王

・父: 名前不明(作中明記なし)、現在死亡。


【前世】春野結衣 (はるのゆい)

【前前世】ディオラ(春華大国初代国王)

【前前前世】ディオラ(神の国2代目国王)


龍影りゅうえい

(主人公の側近)

・主が修行の組手相手用に造った人造人間

・他家族のまとめ役兼パイプ役

・城の元2代目料理長(現在は3代目に継いでいる)

・旧春華大国、現龍華大国の守護神

・春華大国の法律を取り扱う権限を持つ。

・現在の国王に対し、命令出来る。


★国王

(主人公の母親/主人公の絶対的奴隷)

【旧名】ローラ

【現名】春野結月はるのゆづき

・神の国の世界を創った人

・神の国の初代国王

・春華の偶数国王

・龍輝を奴隷にした。

・夫: 龍輝の息子(名前は作中では明かされていない)

・大罪人

(夫に対し、娘(主人公)の誘拐・監禁・大量虐殺誘

導・国家及び全宇宙転覆誘導)

・息子(主人公)の事を、「化け物」と呼んだ。

・息子と戦い敗北し、息子の絶対的奴隷となる。

・息子より、龍華大国国王を任命される。


結氷ゆひよ

(主人公の祖母/主人公の奴隷)

【改名前】春野結陽はるのゆうひ

【前世】春野氷華はるのひよか

・一ノ宮家から5歳の時にローラの養子となる。

・氷華時代の祖母は一ノ宮桜蓮

・父は二ノ宮から一ノ宮に養子に入る。

・母は一ノ宮の分家の血統

・春華の3代目と奇数国王

(結月と交互に国王をしていた)

・結月の傀儡奴隷


黄鱗龍輝きうろりゅうき

(主人公の実の祖父)

・元龍大国国王

・ローラの奴隷

・国営一貫学校の校長

・家庭科料理担当教師代表


黄鱗陽毬きうろひまり

(主人公の実の祖母)

・龍輝の妻

・城の3代目料理長


黒鳴雷虎くなりらとら

(主人公の家族/主人公の奴隷)

・元虎猫大国国王

・龍輝の次に強い

・2000年前から城に同居中

・ボール競技が超得意


★その他家族(八獣国の各国の元国王達6人)


★主人公の父

(龍輝と陽毬の息子)(現在は死亡している)

・結月の夫。

・結月の命令により、結衣を誘拐し、酷い事をし、

主人公に自分を殺し、国を滅ぼすように仕向けた実

行犯。


★一ノ宮知里いちのみやちさと

(主人公の前世時代の親友であり、同級生)

【前世】一ノ宮桜蓮いちのみやおうれん

・2000年前、主人公ディオラの従者だった。

・誰とも結婚していない。

・家を残す為に、二ノ宮から養子(男の子)を貰う

(この養子が、後に氷華の父となる。)


魔神ましん

(神の国の襲撃者/主人公の敵)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は"自分のひつぎを喰らい、真剣に味わった"んだ。



…ん?あれ…?意外と美味い…。強いて言うなら、めっちゃ弾力のある"鳥のささみ"みたいな感じか…。まぁ、タンパク質の繊維で出来てるしな…。


でも…、"やっぱり普通の食事が良いな"…。喰えるけど、"そういう問題じゃないし"…。まぁ、こっちの喰らうってのは、味よりも"分析特化型"としよう…。


さて…喰らってみて改めて思ったけど、"この棺の材質に今の俺の細胞を足せば、俺の意思で変異・制御出来る分身体が出来る"って事だよな…。しかも、氷婆の魂を突っ込んで、俺と氷婆のオーラを混ぜて身体に流せば、その身体に接続出来るしな…。


これ、結構サクッと造れるんじゃないか?


俺は、自分の脳内で、氷婆の依代よりしろとなる"分身体の構造"を考えたんだ…。コレが造れれば、後々色々応用が出来そうだし、"ちょっと凝ってみるか"…。


頭使うから少し疲れるけど、コレが出来ればリビングに行ける…。やっっっっっと"まともに"ご飯が食べられる…。


俺は内心ガッツポーズをしつつ、実際は両手で頭を抱え、目を閉じて、めちゃくちゃ集中したんだ…。


"今までの全ての経験"を素に、必要なもの、役立ちそうなものを選び出し、身体構造に入れれるように変形し、組み込む…。そして、無限コアは3箇所。記憶を保持する海馬・心臓上部と肺動静脈・ヘソ裏の小腸だ…。


龍影で立証済みだが、コアを3箇所にする事で比較的安定したしな…。ちなみに、心臓の下側は無限コアじゃない。ただの循環補助装置だ…。後は…脳の神経構造な…。これ、テレビでは難しくやっていたけど、実際は宇宙ネットワークと一緒だ…。それが一番無駄が無いしな…。


後は…色々栄養素とかいるけど、それは今から食べるからほぼ問題無しだし、ここに鉄があれば言う事無しだが……、


俺はキョロキョロ見渡したんだ…。


流石に、装置に囲まれていても、壊すわけにはいかないしな…。



…仕方がない…。2000年振り…いや、55億年振りくらいだから、腕が鈍ってないと良いが…まぁ、"この水で"やってみるか…。あと、次いでに"この身体の実験も兼ねてみるか"…。


あ…、でも一応確認はしとかないとな…。


俺は龍影の方に振り向いたんだ。


「龍影、この墓の壁って"何度までなら耐えられるんだ"?」

それによるよな…。


「宇宙一の耐熱鉱石であるタングステンを使用しているため、"安全耐熱温度は2000℃"に設定しております。」


龍影は鼻高々にドヤッっていたが、俺は少し違和感があったんだ……。



俺は左人差し指を顎に当て、深く考えたんだ。


2000℃…?2000℃ってかなり熱いんだろうけど……、あれってそんなもんだったか?


…絶対、違うよな…。



俺は左手を下げ、龍影の方に振り向いた。


「龍影、"鉄をここの水を使って核融合して作りたい"んだが、この場合って、2000℃じゃ足らないよな?」


俺はサラッと聞いたつもりだった。


…ん?

龍影と国王の顔がみるみる青くなっているんだが?


「2人とも、どうした?」

龍影なんて、左手で顔を覆って上向いてるし…。



「主よ…、本気なのですか…?鉄なら、"既に出来ている物を御用意出来ます"が………!!?」


あ、ヤバい……、既に主の目が細目になって、"嫌だ"と言っている…。


はぁ…。


「…コホン…。主よ、"創造したい御気持ちになられた"のは分かりました…。ですが、水の核融合で鉄にするのなら、"最低60億℃必要"です。そんな熱に耐性ある鉱石や壁は存在致しません…。下手したら、この惑星"クレン"でさえ、被害が出る可能性がゼロではありません…。…そんな高温…、それこそ星外で……はっ…!」


龍影の目は大きく見開き、一瞬息が止まった。



"ここなら"…もしかして…。



龍影わたしは走馬灯のように、一瞬で主の状態と主の希望、そして"滅びのリスク"を考えたんだ…。


小さい異空間で超高エネルギーが発生すれば、空間が歪み、下手したら"この宇宙ごと滅びる爆発"が生じる可能性があるが、"本当のこの場所なら"!!全て丸く治まるんじゃないか!?



"ここしかない"!!



あぁ……ついさっき、"国が滅びたばっかり"なんだけどな…。今度は"この宇宙の危機どころじゃないぞ"…。


だが、主の怒りのエネルギーも、このままでは“また直ぐにまってしまう”だろうな…。ガス抜きをしないと、“予期せぬ爆発を産む事になる”…。だから、ある意味、“今が一番良いタイミング”だろう…。


それに、今…主を止めるという事は、“主が家族として大好きな結氷様の復活を、私の立場で拒んでしまう行為”だ…。結衣を助けられなかった私に、“そんな権利は無い”…。



止めた瞬間に、主の激怒は必須だし…何より、“これ以上…、主の心に傷を付けたくはないんだ”!!


だからこそ……!"本当にここしか思い付かないんだ"…!



龍影わたしの手は震えていたんだ。

“今、主に意見を言えるのは私だけなんだ”…。


出そうとする声が震えてしまう。

だが…、出さなければ…。


私が声を止めてから、5秒程だろうか…。主は「どうした?」という感じで、私の意見をまだ聞こうとして下さっている…。


…私は、震えを止めるために、両手と腹に力を入れたんだ…。


そして、主を真っ直ぐ見つめ直した。



「主よ、このプラネタリウムの光景がある、“実際の全宇宙の中心なら、60億℃の高熱と、それを冷やす温度の確保、そして、全ての安全確保が可能”でございます。」


言った…。本当にこれしかないんだ…。


この世界は…主が魔神と戦うために設計された空間だ。9つの宇宙があり、それぞれが“球”の状態で、円の縁に時計のように等間隔で並んでおり、中心には“何も無い”…。


つまり、各星や各宇宙から発せられる熱源から一番遠く、一番寒い…“絶対零度地点”なのだ。そして、“主と結月、龍影わたしなら、この地点でも行動が可能”なのだ。


しかも、各宇宙が球形なのは、主自身が決戦に向かわれた際の“衝撃波を逸らす為”だ…。まぁ、おかげで宇宙間を行き来するのは少し大変だが、実際はなんとかなっているしな…。問題ない…。


だから、“ここしかないんだ”…!!



「主よ、いかがでしょうか?」

逆に、これ以外の場所があれば知りたいぐらいだが…。


主もまた、真っ直ぐ龍影わたしを見つめ返してくるが、左手を顎に当て、少し深く考え始めたようだ。


そして、主の口角が再び上がり、にやけ顔になった。


ゾクッッ…!!

私達の背中は凍ったが、“耐えるしかない”…。


「なるほどな…。“良い案”だ…、そうするか。…“流石にお腹が空いてきたしな”…。」

……

「そうだ、龍影。お前だけ先にダイニングに転移で戻って、龍輝を含むダイニングに居る皆に軽く説明して、料理が乗った保温テーブルと一緒に皆を連れて、墓の入り口に転移で戻ってこい。で、俺が作業している間、これまでの経緯を、龍影と国王と氷婆から説明してくれ。まぁ、“開始前に俺からも少し言うけどな“…。」


どうせ、皆には説明するつもりだったしな…。


「!…"皆の前で"転移しても宜しいのですね?」

この星、クレンの歴史が動くぞ…。


「ああ…"もう、良いだろ"…。そうじゃないと、説明し辛いしな…。行ってくれ。」


龍影は深く頭を下げた。

「"承知致しました"。少しお待ち下さいませ。」


俺は頷き、龍影は墓の出入口の膜から出て、転移して行ったんだ。


俺は龍影を見送るように、また迎えるように入口の方を向いていた。


「2人とも…"覚悟しておけ"…。特に国王な…。」


俺は目だけ国王の方に向け、軽くにらみつけた。


「はい…。承知しております…。」



こうして、俺達は皆を待ったんだ…。



ーーーーーーダイニングーーーーーー


龍影わたしは、ダイニング入口とテーブルの間に転移したんだ。


そこには、丁度足元に龍輝がいて、テーブル方向に向かって土下座をし、他の皆はテーブルに沿って置かれた椅子に座って待っていてくれていた。


龍輝が震えながら頭を勢いよく上げて、私の方を向いてきた。


「!?…龍、龍影様……"だけ"……?」


……ブッチンッ…


つい、龍影わたしがブチ切れてしまった…。耐えれると思ったが、元凶の一人である龍輝こいつに地雷を踏まれると…、流石に少し我慢出来なかったんだ…。


私は無言のまま、右手で龍輝の頭を床スレスレまで押さえ込んだんだ。


「貴様…良くも、"この半年間"…のうのうと、共に過ごしてくれたな…。貴様を裁くのは私ではなく主だが、"この私もブチ切れている事を忘れるな"……。それと、今お前に"返事は求めていない"…。私も今は"手一杯"なのだ…。だから、"発言を許すまでは黙って従え"…。」


私は龍輝の頭から右手を離したが、龍輝は頭を上げる事無く、震えていたんだ…。


龍輝は、結衣が家族の中でも特に懐いていた"実の祖父"だ……。結氷様は、結陽だった際、誘拐事件直後から精神的ストレスで食事が一切取らず、治療も拒み、結果亡くなったが、龍輝こいつは他の家族と同じように心配している感じはあったが、それでも、"私が知る中では何も変わらなかった"んだ…。


私は他の皆の方に振り向いたんだ…。


…しまったな……。全員顔面蒼白だ…。まるで、"自分も声を出してはいけない"と、本能のまま固まってるみたいだ…。


「…皆、"驚かせてすまない"……。…皆は声を出して良いぞ…。」

まぁ…こうは言うが、元獣王の皆でもガッチガチだ…。


そんな中、少し奥に座っていた雷虎が恐る恐る手を挙げた。


「りゅ、龍影よ……、メルで何があったんだ?」


皆が頷き、私をジッと見つめてくる。


「……"主が、結陽を蘇生させると言い出したんだ"…。しかも、さっきの奴隷軍みたいな事ではなく、"墓の水を核融合させて鉄を創り"、それを材料として肉体形成をして、蘇生させるんだと…。この核融合には60億℃必要で、墓では正直耐えられないし、下手すれば、この国に甚大な被害が出る…。だが、"結衣を助け出せなかった私には、主に対し、それを強く否定し止める権利はない"…。」


「だが…、"最適な場所があったんだ"…。それで、主に提案し、"採用された"……。」


私は皆を改めて見渡したんだ…。


「皆に…、"色々秘密にしてきた事を言う時が来た"…。主は今回の行為後に、一度気絶寝をするだろう…。だから…その前に、"主の作業を見ながら、説明させてほしいのだ"…。そして…、もし必要になったら、"手伝って欲しい"……。皆、"一緒に来てくれないか"?」


私は皆に向かって、立ったまま…深く深く頭を下げた。



「はぁ…。」

雷虎がため息を付いてきた…。



「龍影よ、"主からは何と命令されているんだ"?いくら龍影の頼みでも、それを聞きたくても、"今の我々は主の奴隷"だ…。筋を通せ。"主の命令は何だ"?」


皆は優しく、力強く頷いてくれた。


龍影わたしは少し、口角を上げてしまったんだ…。



雷虎…皆、"ありがとう"…。


私は顔を上げ、皆を見渡したんだ。


「受けた命令はこうだ。「お前だけ先にダイニングに転移で戻って、龍輝を含むダイニングに居る皆に軽く説明して、料理が乗った保温テーブルと一緒に皆を連れて、墓の入り口に転移で戻ってこい。」私はこれによって、ここに来たんだ…。」


雷虎も少し口角を上げた。


「"主の命令は、奴隷として絶対"だ…。行かないわけにはいかんだろ…。それと、"お前達が本当は何者なのか"、私達が納得するまでちゃんと説明してもらうからな。」


龍影わたしは雷虎を真っ直ぐ見つめたんだ。


「"勿論だ"。それに、結月も主の命令を受け、"やっと話してくれるしな"…。私にとっても、"好機"だ…。」


私は足下の龍輝を見たんだ。


「龍輝よ…、"貴様にも話してもらうと思うから、覚悟しておけ"。」


龍輝は頭を下げて震えたまま、頷いたんだ。


そして、龍影わたしは龍輝の妻であり、城の料理長を務める陽毬ひまりの方に向いたんだ。ちなみに、結衣は「きぃ婆」と呼んでいたな…。


「陽毬……、"今回の事件"は、お前の夫と息子が多いに関与している事件だ…。私は、"警察のトップとして"、本来は中立の立場でいる必要があるが、"今回ばかりは"、私は主に付かせてもらう。」


……っ…。

私は両手をそれぞれ握り締め、拳を震わせた。


「陽毬……、味方をするつもりはないが、主は"現在まで"、お前の事を共犯者扱いにはしていない…。それ故に、"重要参考人"扱いとする。"言い訳があるなら、主の前で言え"。」


陽毬は涙目で頭を下げてきた。


「分かりました…。」


陽毬は震えていたが、今はそれに構っている暇はない…。


龍影わたしは、改めて皆を見渡したんだ。


「今から"転移"をかける。いわゆる瞬間移動だ。1秒で行けるからな。」


皆は頷き、私は足元から10人と保温長テーブルの範囲に、転移の黒穴を開けたんだ。


ブゥン!!!



「"転移"!」


シュッッッッ


皆、黒穴に吸い込まれ、メルの主の墓の入口前に転移したんだ。




ーーーーーーー主の墓の入口前ーーーーーーー


ブゥンッッッ!!


ダイニングに居た一同と、大量の料理が乗った保温テーブルが転移の穴から出てきた。


そして、龍影が俺の方に向き、口を開けた。


「主よ、お待たせしてすみませんでした。」


…ん?龍影の表情、何かさっきより真面目な堅い感じになってるな…。


俺達3人は入口に向かい、下降したんだ。


「それは良い…。それより、皆も待たせて悪かったな…。俺もあの時は結構直ぐに戻るつもりだったんだが、"婆ちゃんの身体を俺の細胞で凝って蘇生させたくてな"…。婆ちゃんも、"国王のシナリオの被害者"だしな……。記憶が戻り、国を滅ぼしてしまった今だからこそ、やりたかったかんだ…。」


俺はチラッと氷婆を見て、氷婆は頷いてくれたんだ。だが、それを割って、雷虎が口を開いた。


「主…、主の体力が少なくて、気絶寝が近いのは皆分かってる…。だからこそ、先に"主と結月が本当は何者なのか"……、あの知里からの手紙の内容込みで、"主の口から直接聞かせてくれないか"?」


雷虎の目は真剣だった。そして、知里からの手紙を、"このタイミング"で返そうと差し出してきた。


"どういうつもりだ"?


俺は手紙の方をチラッとみて、右手で優しく押し返した。


「雷虎…皆、"話はちゃんとするし、暴走もしない"…。俺はただ…、"家族と一緒に、平和に過ごしたいだけ"なんだ…。結衣として、皆と過ごした"普通の日々"が、今では1番楽しい思い出で、"宝"なのは事実であり、"今の俺の本音である事"は、先に伝えておく…。」


……

俺の視野に、保温テーブルと皆が座っていた椅子が目に止まった。



そして…つい、無意識に少しだけ口角を上げてしまったんだ…。



全く…。先にこの料理を食べて、蘇生のエネルギーにして、後々皆に狩りをさせようと思っていたんだがな……。


"これじゃ出来ないじゃないか"…。


「皆、一旦椅子に座ってくれ…。…“こんな話をするのにすまないが、食事をしながら説明させて欲しい”…。」


補給が必要なのは事実だしな…。


雷虎はチラっと皆の方を見て、皆は頷いてくれた。

そして、雷虎も優しく微笑みながら頷いてくれた。


「勿論だ。“久しぶりに、一緒に食べよう”。」


!…っ…。


俺は一瞬頭の中が白くなり、目尻が少し熱くなったんだ…。

でも…、“我慢”したんだ。


「ああ…、“元凶達以外でな”…。」


敢えて言った言葉だった…。

今は浮かれてなんていられない…。“これが現実なんだ”…。


俺の言葉に、雷虎も龍影も…皆ゾッとしていたが、俺拳の震えを見て、敢えて、そこには触れようとしなかったんだ。



そして、俺達は席に着いたんだ。



俺は上座に、国王と龍輝は下座に座り、きぃ婆は龍輝の横に、他の皆はいつもの席に座った。


超大型保温テーブルの上には、大量の料理が並び、全て違う料理だが、香り同士が邪魔をする事なく、一つ一つが輝いていた。


そして、背景は全方位プラネタリウムだ…。


食べる面子(めんつ)は、元八獣王ときぃ婆、そして、メル内のメンバー合わせて"13人"だ。まぁ、今は国王と龍輝に食わせるつもりはないがな…。



俺は深呼吸をし、皆を見渡した。



「では改めて…、食事を食べながらですまないが、全てを話そう…。皆も食べながら聞いてくれ。」


全員が俺に注目した…。





「まず、この話しは全く…気分の良い話じゃない。」


「それに、先に言っておくが、国王は今回の件の"元凶"であり"黒幕"で、皆の中には国王を恨んだり、怒ったりする者がいるだろうが、かなりの"訳あり"だ。だから…あまり、怒らないで欲しい…。そして、龍輝はこの"訳あり"のために、国王の命令で、2000年前…、俺と会う1ヶ月ぐらい前から現在に至るまで、裏で動かざる負えなかったんだ…。」


「だから、俺は婆ちゃんの蘇生が終わったら、2人にそれなりの"刑罰"を与えるつもりだ。どんな訳でも…、"刑罰"が終わるまでは俺は2人を許さないが、皆にはこの"刑罰"をもって、2人を許して欲しい…。」


皆は、覚悟を持って真っすぐ俺を見て、耳を傾けてくれた。


いやいやいや…、食べながら聞いて良いって言ったんだけど…。

まぁ、こんな話を聞きながら食べる気にはならないか…。


…保温テーブルで良かった。


これで、この長い話が終わっても、料理は暖かいままだ…。

まぁ、俺は食べながら話すけどな…。

そうじゃないと、今にも倒れそうだし、氷婆の蘇生もあるし…。



俺は目を閉じ、深く深呼吸をしたんだ。


そして、ゆっくりと目を開けた。

「さて…、雷虎からの質問だったな…。」



「俺と国王はこの星の生まれじゃない。俺はこの世界の外側にある、千里からの手紙に記載されていた”神々の世界”の生まれだ。そして、国王は…いや、ローラは、その”神々の世界”を創造した人物だ。ローラが”神々の世界”を創造し、最初に生まれた生命体が俺と、後に”魔神”となる男だったんだ…。俺は平和を求め、”神の国”を作り、初代国王として国を治めていたが、奴は虐殺を楽しみ、殺しまわっていた。…当時、俺には寿命があり、奴には寿命の制限はなかったんだ。俺は奴を倒そうと挑んだが、負けて殺されてしまったんだ。」


「…そして5000年後、ローラは奴を止める為、俺の最初の父となる”神王ルドラ”と結婚し、再び俺を生んだ。これが、お前達が知る”ディオラ”だ。そして、10歳になった時、奴が”魔神”となって国を襲って来てな…。父は奴と戦いながら、俺とローラが逃げる隙を作ってくれたんだ。だから、俺は”時間を早回しした別の世界”を創って、ローラと共に逃げ込んだんだ…。その世界こそ、今の”この世界”だ…。


「この世界に入る直前、父に「必ず戻ってこい!」と言われてな…。それに、当時俺には6歳の弟がいたんだが、この弟は向こうの世界に置きっぱなしなんだ…。」



俺は再び目を閉じて深呼吸をしたが、両手は震え、箸を落とさないのがやっとだったんだ…。


それでも、なんとか手に力を入れ、目を開けた…。



「父は…、俺が弟を溺愛していたことを知っていた。…知っていたからこそ、“俺とローラが必ず戻るように“…弟を人質として、向こう側に置くように仕向けたんだ…。」


「だから、俺は誰が何と言おうと、向こうの世界に戻りたいんだが…俺は、俺達だけでは”魔神”に勝てないと思って、再び挑むため、戦力を増やすために、”9つの宇宙”と、組手相手として”龍影”を造ったんだ。」


「ちなみに、龍影には”魔神との決戦”については話したが、“皆が知るように“、ローラの共犯者ではない…。むしろ、9つの宇宙を管理するのに手伝ってもらっていたんだ。そして、この星は俺の”特別訓練用惑星”…通称『クレン』として、”神の世界”の重力の”1億倍”に設定して、造ったんだ。まぁ、重力は徐々に強くしていったんだが、最初の俺がこの星の重力に来たら、俺は体を起こすどころか、指1本動かすことは出来なかっただろうな…。」


「そして、この”並外れた超重力下”で、生命体が誕生し、進化し、お前達が生まれたんだ…。」


「俺は”平和的”に、お前達の協力が得られれば…と思っていたんだ…。だが、俺もさっき知ったんだが…、この時、ローラは”強制的”に協力を得ようと、俺が”八獣界”に入る前に、”八獣界最強”であった、龍輝に勝負を挑み、勝って、”ローラの奴隷”にし、”俺への絶対的協力”を取り付けたんだ。その後、俺は何も知らずに”八獣界”に入り、お前達と”平和交渉を成立”させ、”家族”となって…、お前達と一緒に決戦に挑めばと思っていたんだ…。」


「だけど、ローラは俺の寿命の期限が近いのと、自分の能力で俺達の力が、まだまだ”魔神”に敵わないことを悟ったんだ。そこで、ローラは龍輝に”後の世で子供を作り、その子供と自分を結婚させ、再び俺を生むことを計画したんだ…。」


「だけど、外では想像以上に深刻さが増しているとローラは悟ってな…。最悪の計画を立てたんだ。」


「それが、龍輝に自分の子の人生を闇に染まるように子育てをし、この”怪物の体”を造りだし、”春野結衣”を誘拐させ、”万物を喰らう化け物”に無理やり転生させた、今回の事件の元となった出来事だ…。」


「俺が結衣として、国王が黒幕だと気づいたのは、殺される直前だった…。…誘拐されてから、半年間は親父にレイプされ、暴行され…両手足を焼き削がれ、その自分の体だった肉片を料理として出され続けたんだ…。そして、殺される直前に”お前の母親がいなければ、こんなことをせずに済んだんだ”と言われ、その後ろには国王がいたんだ…。」


「”結衣”として死に、”化け物”として生まれた時、親父が俺に「この国と、王家を滅ぼせ」「もうこりごりだ…、お前の手で俺を殺せ」と命令し、俺は怒り…この身体もそれに逆らう事が出来ずに、それを実行したんだ…。」


「国王は、俺にこの身体で全てを喰らわせ、”魔神との決戦”に挑ませるつもりだったんだ…。それが、この星を…“この世界を創った理由だから“…。」


「だけどな…俺も国王も、お前達と過ごすうちに…、この星の人々に情がいてしまったんだ…。ずっと一緒にいたいと思っていたし、守りたいとも思った…。いつの間にか…、俺達はこの星が”大好き”になっていたんだ…。」


「だから、国王は全ての責任を取って、”自分が俺の奴隷”になるように、俺を怒らしたんだ…。だけど…、俺にとって国王は”俺の唯一の母親”だ…。」


「どんなに嫌な事をされても…、俺は子供として、結局、母さんのことは大好きなんだ…。まぁ…理由はどうであれ、子供に手を挙げた”最悪な母親”だけど…、それでも、”母親が全部の責任を取って俺の奴隷になる”と言ったんだ…。だから…俺はそれを受け入れ、”俺の奴隷”にしたんだ…。そして、この”春華大国を滅ぼした化け物”を世間に受け入れさせるために、反抗をさせないために、皆を”奴隷”にしたんだ…。」



俺は箸を置き、改めて皆を見渡してから、額をテーブルスレスレ

まで近づけ、頭を深く下げたんだ。


「皆…、皆を傷つけ奴隷にしたこと…、隠し事をしていたこと…、本当にごめんなさい…!…それと…」


俺は立ち上がり、国王と共に、きぃ婆と龍輝の側で土下座した。

「きぃ婆!龍輝!“俺の力不足“によって、黄鱗家を巻き込んでしまう結果になってしまったこと…、本当に!申し訳ありませんでした!!」


俺と国王は泣いていた…。


俺達は、”家族”を…”大好きな人達”を巻き込んだんだ…。

これが、俺達が背負う”業”だ…。



「それと…、今この場で、主として!黄鱗龍輝に対し!”ローラの奴隷”からの”解放”を宣言する!!」

俺達はずっと、二人に頭を下げていた…。


座っていた全員も泣いていた…。

きぃ婆は泣きながら、俺達に聞いてきた…。


「…ディオラ様には恨みはありません…。ローラ様に対しても、”夫を奴隷にした事について”とがめるつもりはありません。…ですが、”我が子と孫を死に追いやった事は、結月あなたがディオラ様の奴隷になるのと、刑罰で終わらせるつもりですか?“」


きぃ婆も…龍輝も、“親として“、子供を失っているんだ…。


「…"殺したのは俺だ"。…だから、それは俺にも責任がある…。」


俺はきぃ婆の方に真っ直ぐ見つめ直したんだ。


「父さんは"後々俺の奴隷として蘇生させる"…。これは"誰が何と言おうと、俺の中で絶対的な決定だ"…。」


きぃ婆は大粒の涙を流し、言葉を出せずにいたんだ。そして、ちらっと皆を見ると、皆が「どう言う事だ?」という感じで、不思議そうな顔をしてこっちを向いていた。


はぁ……。


「皆、よく聞け…。父さんは俺にとって、“悪の父親”だが…、それは本当の“父親の姿”じゃなかったんだ…。少なくとも、結衣に出された“あの料理の数々”は、今思うと…本気だった…。本当の“愛情”だったんだと思う…。多分…あれは唯一、父さんが“父親として”結衣に出来る事だったんだと思う…。」


…俺は、少し目を泳がしてしまったんだ…。


「確かに、食べさせられたのは“自肉料理”だったけど、少しでも食べやすいように、色々工夫してくれていたんだ…。本当に…“それだけだったけど”…、あの時、誰も来てくれなかった時は…、結衣にとっては“救いだった”んだ…。だから、“その時の礼なんだ”…。」



反論する者はいなかったが、きぃ婆は口や身体を震わせながら聞いてきた。


「“今直ぐ“ではなく…“後々”と言うのは…、どう言う事ですか?今から…、“先に”…結陽を蘇生させるんですよね…?」


きぃ婆が発言した瞬間、俺の周り全員の背筋が凍った。

龍影なんて、きぃ婆に半分睨みを効かせている程だ…。


うん…、こればっかりは仕方がない…。一応、表向きの序列で言えば、“年功序列”だし、きぃ婆からしたら、氷婆なんて“国王側の敵”だよな……。



「そうだ…。悪いが“これは譲れない”んだ…。まず、皆が知らない大前提として、“婆ちゃんもシナリオの被害者”なんだ。俺が春華の初代として死んだ後、一ノ宮家から“5歳の女の子“が養子に連れてこられて、3代目になっただろ?婆ちゃんはその転生者で、3代目の時からずっと…“結衣が生まれてくるまでの時間稼ぎとして“、2代目の傀儡奴隷として、2代目と交互に国王をさせられていたんだ…。」


「勿論、結衣に起こる事は、“千里達と同じように知っていた”し、結衣として一緒に過ごしている間も、“その事実は覚えていた”んだ…。でも、龍影や皆に伝える事は、“立場上出来なかった”…。そして、3代目の使い回しについては、国王だけでなく、龍影も3代目を傀儡として扱い、表で活動していない時はこのメルの別室で隔離されていたんだ…。」


「で、本来なら即自由にしたいところなんだが、俺は今のこの国の神として、“婆ちゃんは副国王に適任”と判断してな…。それで、先にしようと思ったんだ…。」


俺はチラっと国王の方に向いたんだ。


「それに…しばらく、国王の業務は爆上がりだろうしな…。皆に迷惑をかけた俺としては、“これ以上迷惑をかけたくないんだ”…。…あ、ちなみにだけど、“婆ちゃんも俺の奴隷になったから、皆宜しくな”。で、氷華(ひよか)の転生者だから、氷婆(ひよばあ)って基本的には呼ぶ事にしたからな。ちなみに、名前は"結氷ゆひよ"な。」


俺はつい、ニッとしてしまったんだ…。きぃ婆にとっては、少し不謹慎だったかもしれない……。けど、氷婆も、俺の大切な家族なんだ…。


きぃ婆がちょっと…、難しい顔をしてる…。



陽毬(ひまり)さん…。」


ビクゥッ…!!


びっくりした〜…。氷婆が少し低めに一声発しただけで、今、全員がビクついたぞ…!?


俺達はつい、恐る恐る氷婆の方を見たんだ。

氷…婆だよな?こんな声、聞いた事がないんだが…?


「皆、驚かせてごめんなさい…。」


氷婆はそう言いつつ、きぃ婆の方にスーーっと寄って行ったんだ。


「陽毬さん、良く聞いて下さい。…結衣が正論過ぎて、反論出来ない気持ちでいる事は分かっています…。ですから、それを踏まえて、言わせて下さい…。まず、結衣の前で少し言い辛いのですが、私自身…、"ずっとローラ様の実験体だった"のです…。」


えっ…!?


きぃ婆を含み…龍影も……、国王以外…皆言葉を詰まらせ、どよめいた。


「私は…、ローラ様の命令により、"結衣が最期に過ごす人生のパターン"を…転生しながら、生活環境を少しづつ変えながら、データを集めておりました…。結衣を隔離しつつ…、如何に"幸せに暮らせるか"を…。これは、ローラ様の母としての素直な願いであり、同時に、"シナリオ時の激怒発生の条件"でもありました……。」


「私は…"それを3代目の時から聞かされて、動いていたのです"…。そして…、ただ過ごすだけではなく、転生時の肉体は"毎回"……、"ローラ様が、結衣の肉体を作る為の練習用の肉体"だったのです…。その為、皆の前では"ずっと養子の国王または姫として過ごしていましたが"、裏では常に…"監視され、記録されていました"…。」


結氷わたしは改めて、陽毬さんの目をジッと見つめた。


「陽毬さん、結衣は半年間辛い思いをしてもなお…、"父親を認めています"…。必ず蘇生してくれます…。ですから…少しでも安全に蘇生出来るよう…、"結衣の実験と練習を兼ねて"、先に私にさせて下さい。」


つい、目を泳がしてしまった。


「それに…、ローラ様は私の当時の主ですが、"結月は私の娘です"……。まぁ、結月としては"そんな気は全く無いのでしょうが"、これは、"皆が知っている事"ですよね…。そして、"子が犯した責任は、親にもあるのは当然です"…。これは、法律的には"子供が成人するまで"ですが、今回の件は、国王の親として"これ以上黙って見過ごすわけにはいきません"…。」


私は、陽毬さんを優しく見つめなおした。


「陽毬さん、私の個人的な理由は"こんな理由"ですが、納得してくれますか?」



陽毬さんの目は大きく見開き、両手は小刻みに震え、その口元も震えていた。


!!……っ……


陽毬さんは、涙を静かに溢れさせながら、目をゆっくりと…そして力強く閉じた。


そして静かに深呼吸を1回して、再び目を開けた。



「…ここまで言われては、"納得せざるを得ません"…。結氷ゆひよさん……、"お願い致します"。」


陽毬さんは、真剣な眼差しで私を見つめてきた。



私はわずかに微笑みながら力強く頷き、主の方に振り返ったの。


スーー…


氷婆が俺の方に静かに寄ってきて、食事をしている左側の床部分で姿勢を低くし、跪いてきた。


俺は食事の手を"敢えて止めず"、氷婆をチラッと見たんだ。


「氷婆…、"心の準備は出来たのか"?」


「"はい"。宜しくお願い致します。」



短い会話だった。だが、さっきまで陽毬を含め皆を圧倒していた人が、今はその気配を消し、俺の足元に静かに跪いている"この光景"は、皆から見たら当然の光景のはずが、"異様に見えた"んだ。


この一瞬で…皆の脳は、"完全なる主従関係と強者の存在"を再認識させられたんだ。



俺の食事をする手は止まらなかった…。


「俺が食事を終えるまで待っていろ。」

じゃないと、今からのエネルギー足んねぇしな…。


この瞬間…他の家族は全員、取り分の皿をさらえて、箸を揃えて置いていたんだ。


氷婆は跪いたまま、静かに口を開いた。

「はい…。"気にせずにお召し上がり下さい"。」


氷婆は見えてはいるものの、殆ど存在感を消していたんだ。そして、俺は黙々と…、保温テーブル上の料理を全て食べ尽くそうと箸と口を動かしたんだ…。別に触手を使えば直ぐなんだが、"久しぶりのまともな料理"……口から味わって食べたいんだ…。


他の家族は、俺の食事をただ黙って見ていたんだ。


………ふぅ……。


美味しかった…。流石、料理長きぃ婆が作った料理だ…。



俺は胸の前で手を合わせたんだ。

「ご馳走様でした。…きぃ婆、“作ってくれてありがとうな”…。」


いったい…きぃ婆は“どんな気持ちで”…、この料理の数々を作ってくれたんだろうな…。


ぎゅっ……。

俺はつい、両手をそれぞれ強く握り締めたんだ…。


きぃ婆は椅子に座ったまま、額をテーブルスレスレに近づけ、頭を下げてきた。


「いえ…。“料理長として当然ですから”…。」

きぃ婆は震えていて、声を出すのがやっとだったんだ。


……俺は少し返答に迷ってしまった…。


「…きぃ婆、“俺を恨んでくれて構わない”し、俺を許せる時が来るまで、料理は作ってもらわなくても構わない…。…それに、“料理人ならいくらでも居るしな”……。」


…俺は目を閉じ、ゆっくり…深く、深呼吸をしたんだ。


そして、再び目を開けた。

「だが…、“3代目料理長黄鱗陽毬”の名義を消すつもりは無い。…本音を言えば…今でも、“きぃ婆の料理が好きなのは変わらない“…。でも、“強制はしないし、出来ないし…したくない”…。判断は任せる…。」

…言える事は言ったと思う…。正直、どんな返答が来るか、不安で不安で仕方が無い…。けど、こんな状態だしな…。


俺はきぃ婆を見つめたんだ。


きぃ婆は顔を上げ、涙目になりながら真っ直ぐ見つめ返してきた。


「“結氷さんと息子の蘇生を見届けさせてもらってから“、考えさせて下さい…。それまでは、“休暇扱いでお願いします”。それと…、“夫に対しての制裁には一切口出しは致しませんので、思う存分して下さい“。」


ん!!?


俺も皆も、ついまゆをピクッとさせてしまったんだ。


「っ……擁護ようごしないのか?」

え、普通…妻なら擁護したり、減刑を望んだりするもんだよな?


「はい。2000年前に、夫がローラ様に敗北した時点で生きる事を諦めていましたし、当時から、夫が“全ての責任はワシが背負う”と言っていましたので、“夫を立てさせて頂きます”。それと、私は事件については、“息子に結衣を手にかけさせなければいけない”と言う核心情報だけは聞いていましたので、情報を黙っていて、“出来る事があったのに私はしなかったので、共犯扱いにして頂いて構いません“…。」


……陽毬わたしは一瞬…、二人の小さな手を思い出したの…。


「私の行為が罪だと言うのなら、“是非一緒に裁いて下さい”…。」

きぃ婆は深く頭を下げ、龍輝の身体は震えていた。


……

俺はチラっと龍影を見ると、腕を組み、眉間にシワを寄せ、目を閉じていた…。


マジか…。そのレベルか…。


俺が龍影にドン引きしていると、龍影は口を重たそうに開いた。



「主よ…今回の件、“法律的には完璧に、かなり重い幇助ほうじょ罪”が適応されます…。主が裁いても、全く問題はありません…。ですが…、私は陽毬を擁護するつもりはありませんが、法務大臣として言わせていただくと、“あまりにも不自然に完璧な幇助ほうじょ”です…。」


龍影はきぃ婆に近づいて行ったが、俺は龍影が法務大臣である事にかなり驚いていたんだ…。確かに法律は任せてたけど、大臣って…知らなかったな…。


…ん?てか、法務大臣って、"死刑執行許可"を出せる権限あったよな…。


俺が言葉を発せられずにいると、龍影がきぃ婆の直ぐ側に立って、にらみを効かせたんだ。この睨み…、他の家族でさえ顔色を悪くするのに、陽毬は真っ直ぐ龍影の目を見て、見つめていたんだ。そして、見つめ合ったまま…


龍影は両手をそれぞれ強く握り締め、力を込めたんだ。

「主よ…陽毬に対し、“オーラを使用した読み取りの許可を申請します”。」




挿絵(By みてみん)

※龍輝と陽毬です。

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