第15話 自分の墓
第15話 自分の墓
――細胞の中にはDNAがある――
ーーすべては、ここからはじまるーー
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俺達は6畳の部屋を出て、上に向かったんだ。
全方位、星々が光るプラネタリウムは変わらない。
緩やかなカーブ階段を上り、やたら角度の急な直線の階段を登れば、本殿の最奥…"俺の墓がある場所"だ…。
そーいや…元々、2000年前にはこの神殿は無かったよな…。祀ってあるのだって俺だし…。氷婆なんてさっきの部屋だし…。
俺は歩きながら国王の方に振り向いた。
「なぁ、この神殿って国王と龍影で造ったのか?」
改めて思うけど、これ…すっごい技術だよな…?
国王と龍影が顔を見合わし、龍影が頷いた。
「"はい"…。私が持っている全ての知識と、龍影が持っている技術を合わせ、総動員致しました…。このメルは、この星の技術だけではありません…。ですが、それでも、"まだもう一押し足りません"…。後は、貴方様の"御力次第"に御座います。」
……は?
俺は目を見開き、キョトンとしてしまったんだ…。
氷華は「どおしたの?」と言う感じで見てくる。
「いやいやいやいや…!2人の科学の結晶に、俺なんか足しても一緒だろ…。2人の方がよっぽど詳しいだろうがよ…!」
確かに俺は創造神だが、技術レベルなんて原始だぞ!?よっぽど、この2人の方が造れるだろ!!
国王と龍影がまた顔を見合わせ、今度は龍影が口を開いた。
「主よ…、"確かに"技術は日々進歩しております…。ですので、どうか、"今の私達の技術を御覧頂き、主の閃の糧にしてもらいたい"のです。上に行き、私達の技術が完璧であれば、そのまま使用して頂き、"もし、足らなければ…その時は、主の出番でございます"…。」
龍影は微笑んでいたが、目はこれ以上無いくらい本気の目をしていた。
…はぁ……。
「"わーかったよ"…。見るだけ見てやる…。…お前らに言われたら、仕方ないしな…。」
1本取られたな…。ま、別に勝負する気はなかったんだが…、超技術オタクにここまで言われたらな…。
俺は再び前を向き、階段を登り始めたんだ。
そして、3人も再び登り始めたが、龍影は国王の方を向いた。
龍影は頭を少し主の方に振り、にやけた。
そして、小さく口を開いた。
「"どうだ"?」
結月はチラッと龍影の方に目を向けただけで、再び前に向けた。
「…"流石…、お見事でございます"…。」
…結月、めっちゃ"ツーン"ってしてるな…。普段の"氷の女王"じゃない…。あ〜…あれか…、"シナリオが無くなったから"か…。
こいつ…、"実は相当感情に蓋をしていたな"?
…"面白そうだ"…。
!
主が立ち止まった…。
「……"着いたけど"…、翌々見たらコレって……"絶対普通じゃねぇよな"…。結衣として幼少からずっとここに来てて、"当たり前で普通だと思っていた"けど、"あの景色の模倣"じゃねぇか…。しかも、ここから先…、"この半透過性の結界を超えたら、時間の概念がない無重力の異空間"じゃないか…。」
結衣のバカ…。…いやいやいやいや…、そもそも結衣の時は"結界や異空間"って概念は、テレビや漫画にしかないと思って…いや、"思わされていた"しな…。現実世界にあるとか、"考えられない"って…。
……"どんだけ、固定概念を植え付けられていたんだ"?
俺は右手で膜に触れ、そのまま右手を通し、5m程上にある白色の大きめの棺を見詰め、両足に力を入れて軽くジャンプしたんだ。
スゥーーー
俺は棺に向かった。ここはまるで抵抗を感じない、呼吸や会話が出来る"水中"のような感覚だ…。水中…というより、塩味がするから"海の中"に近いか…。
…俺は結衣だった時、国王から"この水中は初代様の墓そのものだから、普段は他の家族や親族も入口までしか来れない。けれど、国王と次期国王なら入れる"と聞いていた…。
だが、氷婆の反応を見る限り…、滅多に来なかったんじゃないか?…まぁ、年1回正月の時には、此処に皆で来ていたけどな…。
俺は皆の方を見るのに速度を止め、振り返り、下を向いた。
「なぁ、氷婆はこの中に来た事があるのか?」
素朴な疑問だが、一応な…。
すると、氷婆は頭を思いっきり、何度も横に振ったんだ。
「この結界の入口までなら、毎年正月の恒例参拝で来てたけど、"結界の中までは入った事ないよ"…。許可も貰ってないし、貰ったとしても、今までは恐れ多過ぎて入らないと思うし…。」
…ん?
「…そーいや…、"前回はどーしたんだよ"?年末前に結衣が誘拐され、正月前に国王を問いただしたんだろ?」
俺はチラッと国王と龍影を見て、龍影が先に口を開いたんだ。
「当時、結月は決して、口を割ろうとしませんでした…。そして、問い詰めた直ぐ後、全員でここまでは来ましたが、理由はどうであれ、"初代であるディオラ様の墓を荒らす事は出来ない"と言う事と、結界に触れた我々は、"先代国王含め、全員が凄まじい吐き気に襲われ、物理的に入れなかった"のです……。その為…我々は、ただ、主の帰還を待つ他ありませんでした…。」
……
俺は両手それぞれを強く握り締め、その手を少し震わせてしまっていたんだ…。
「…そうか…、皆……、"本当にやる事をやってくれていたんだな"……。」
俺の目じりは熱くなったが、涙は水中に溶け込んだ…。
はぁ…。
「3人とも"入ってこい"。主として、入室の許可をしよう…。」
俺は微笑み、軽く…力強く頷いたんだ。そして…再び、俺は自分の棺の方にしっかりと向い合ったんだ。




