第14話 氷華と婆ちゃん
結衣の墓参りの意味は、"身体を馴染ませるため"…。
「…なるほどな…。なら、"ついでに上まで行くか"……。国王、問題ねぇよな?」
馴染ませる為って事は、今は馴染んだ後だから、そんなに体力も使わないだろうしな…。
「はい、問題ございません。今は使用していませんので、辿り着いた後の"大幅な体力減少"もありません…。」
国王は淡々と説明してきた。
「はぁ…。だろうな…。」
俺の墓だしな…。
そんな事を思っていると、婆ちゃんがソワソワし始めたんだ。
「婆ちゃん、どーした?」
何か、めっちゃ頬が赤くないか?霊体だぞ?
「あっ…ええっと…その…私も…、着いて行っても宜しいですか?」
!?
潤目のまま、すっごい照れくさそうに言って来るなんて!
「婆ちゃん!?…どーした?!」
ダメだ…。俺より背の小さい婆ちゃんが、目を潤まして指先をモジモジしてるとか…、さっき氷華と重なったばっかなのもあって、"可愛過ぎる"んだが!?いや、反則だろ!!
俺は、婆ちゃんの余りにも素の反応に、心を射抜かれてしまったんだ…。
ちなみに、婆ちゃんは俺のツッコミに戸惑い、軽くテンパり、国王をチラッと見て「どうしたら良いですか!?」って感じで目で助けを求めてるんだ。
そして、国王は俺の方に向いてきた。
「主様、先に"改めて"、結陽様の御立場や接し方をお決めになられては、如何ですか?その方が、主様も結陽様もやり易いと思いますが…。」
俺は、右手で自分の顎に触れたんだ。
「ん〜まぁ、俺的にはタメ語で"婆ちゃん"で居てくれた方が接しやすいけど…、でも、"ありのままで良いかな"…。面白いし…、なんなら"氷婆"でも良い…。……さっき、氷華の名前出した時、何か素っぽかったし…。」
俺はチラッと婆ちゃんを見たんだ。
ビクッ…!
……(指先モジモジ…)、…(頬赤くして下を向く)。
あ、これはあれか?
泣き叫んで、殻が破けたか…?
「婆ちゃん…、大分素が出てるだろ?」
これが素なら、大分皮被ってたな?
「う、うん…。氷華は素の名前だしね…。……ねぇ…、本当にタメ語で良いの?本当に…、貴方の祖母として居て良いの?」
婆ちゃんが目を少し泳がせ、指先をモジモジしながら聞いてきた。
俺はニッと口角を上げた。
「"当然だろ"?別に黒くねぇし。寧ろ、黒いのは"俺達"だったからな…。……婆ちゃん、"償いとしては足らないかもしれないが、俺が叶えられそうな望みがあれば、何時でも言ってくれ"…。」
本当は、普段は権力なんて振りかざしたくないんだが、こういう時は仕方ないよな…。
婆ちゃんは右手を顎に当て、本気でめちゃくちゃ悩んでるし…。
「……"空き時間は好きなように過ごして良い"って言ってくれたけど、…"外出や人に会ったりしても良いの"?」
本気で悩んだ割には、結構基礎的な部分だな…。
「"勿論良いぞ"。…てか、生前もやっていたろ?」
敢えて聞いてみるか…。
婆ちゃんは、国王達の方をチラッと見て、言い辛そうに口を開けた。
「…"5歳で城に入ってから、公務以外、城と此処から出た事が無いのよ"…。禁止されてたからね…。まぁ、外の事は家族から聞いたり、テレビや新聞で見てたけど……。」
婆ちゃんは下を向き、シュンっとした。
俺は2人の方を見ると、国王が口を開けた。
「傀儡として居させる為の、"管理と情報操作を目的"としていましたので…。ちなみに、結衣の外出の制限については、今日の事を目的として、"外の人々になるべく情を持たさない為"です…。ただ、通学と外出の一部を許可したのは、"誘拐と桜蓮達との接点を再び持たせる事"を目的としてのものです。」
はぁ…。なるほど……。
俺は婆ちゃんの方に振り向いた。
「婆ちゃん、"合法範囲内の外出と対談なら、無制限許可"な。但し、泊まりや外食の時は龍影に一声かけてくれ…。」
………
「…後、夕食の時は出来たら…週1でも良いから、なるべく帰って来てくれ…。」
強制はしたくない…。
したくはないけど…、"せめてな"…。
婆ちゃんの口角が少し…優しく上がった。
「フフ…、"分かってる。ちゃんと帰ってくるわよ"…。」
最初は、ディオラ様は手の届かない……歳が凄く離れた兄という感じだったけど、祖母として結衣に接して、今こうしていると…、"凄い親近感が湧くわね"…。
「!…"うん"…。」
俺はちょっと…いや、かなり嬉しかったんだ…。
…あ、そうそう…。
「で?呼び方…、"氷婆"で良いか?それに、折角"転生"なんだから、名前も"結氷"でどうだ?」
俺は嬉しくて、ニッと口角を上げながら言った。
ま、名前は合体させただけなんだがな…。でも、氷華で…、俺の婆ちゃんだ。
婆ちゃんは一瞬目を見開き、そして、目元が緩み、優しく微笑んでくれた。
「ええ…、"勿論良いわよ"…。ありがとうね。」
!!…婆ちゃんが…氷婆として、"落ち着いた"…。
はぁ……。
「さて…3人とも、"俺の墓に行くぞ"…。階段を登れば直ぐに着く…。まぁ…もう、普通の墓じゃないけどな…。」
俺は両手をそれぞれ強く握り締めたんだ。
"ずっと…普通だと思ってた"…。当たり前だと……本気で思っていたんだ…。
毎週…真面目に、先祖の墓参りに行っていたつもりだったし、マジで初代は眠っていたけど…、"墓じゃなかったんだ"…。




