第13話 墓参りの意味
"依代"……?
「依代って……、えっ……、そ、そうか……。結衣として過ごしていたとは言え、ディオラの魂だもんな…… 。"魂の衣ころも"であり、人偏は…結衣の身体そのもの…。だから…"依代"って事か…。」
そうか…、そうだよな……。"母さんは、ずっと計画を組んでいた"んだ…。
手が…、身体が……、小刻みに震える…。
ギュッ……。
婆ちゃんが優しく…それでいて、力強く包んでくれる……。
「"隠していて…、助けられなくて、ごめんなさい"…。私は…"結衣が産まれる前に…、ローラ様を結月様として迎える時に、結衣に起こる事を全て聞いていたの"…。……私も、"加害者側だって分かってる"…。」
婆ちゃんが…ゆっくり、俺の腕を解いてきた…。
そして、婆ちゃんが両手で俺の両手を優しく握り、目を潤ませながら、その手を離した……。
婆ちゃんは、1歩下がり、正座をして、頭を1番下まで下げてきた……。
「"私は、加害者の一人であり、大罪人である春野結月の傀儡奴隷です"……。どうか…何なりと、厳罰を施行して下さい…。」
婆ちゃんの身体は震えていなかった…。
声も…、落ち着いている…。
婆ちゃんは…いや、"歴代の国王を務めたこの人は、全てを受け入れる覚悟を、ずっとしていた人"なんだ…。
俺は両手をそれぞれ強く握った。
「俺は、"春華大国を滅ぼし、国王結月と龍影、他の獣王全員を奴隷にした"んだ……。つまり、"俺は主の主"だ…。」
俺は入口の方を振り返り、結界に触れる事無く解除したんだ。
「2人とも、入って来い。」
俺がそう言うと、2人とも入室して来て、入口の直ぐ前で揃って土下座をしてきた。
「国王、"婆ちゃんがお前の傀儡奴隷で、自分は加害者の一人だから厳罰にして欲しい"って言ってきてるんだが……、"本当に加害者なのか?"遺伝子を提供したって話も、別に"祖母"なんだから問題無いし……、まぁ、誘拐からの半年の計画を知っていて、行動に移さなかったとは言ってるが……、"俺はそれで、婆ちゃんを怒る気になんてなれない"しな……。国王、答えろ。」
ギロッ…
俺は国王を睨みつけたんだ。
「はい…。その件以外でしたら、特に罰する理由は御座いません…。それに、''奴隷の行動の責任は主"ですので、裁くのでしたら、"私に罰をお与え下さい"…。」
国王の身体も震えていない。
覚悟が出来ているな…。
「龍影、"お前から見ても"、特にねぇよな?」
法律関係は、コイツに全部任せてるしな…。
「はい、"ありません"。法律的にも全く問題ございません。それに、"既に新法も適応済み"ですので、主が気になるのであれば、"好きなようにして下さい"。」
ニヤッ…
俺の口角は少し上がり、再び婆ちゃんの方に振り向き、婆ちゃんの前でしゃがみ込んだんだ。
「婆ちゃん…。俺がこの国を滅ぼした時、"俺の言葉が法律になるようにした"んだ…。」
俺は右手で婆ちゃんの左肩に触れた。
「3人とも、よく聞け。俺は龍華の神として、"国王結月に対し、結陽との傀儡奴隷契約の破棄を命じる"。そして、結陽に対し、"永遠に、この俺の直属の奴隷になる事を命じる"。また、他の奴隷達や国民達に正体を明かし、"龍華大国の副国王"に無期限で就いてもらう。俺は、これからこの二人を含め皆を振り回すから、今までの経験を活かし、"助けて欲しいんだ"。」
婆ちゃんがハッとした表情で顔を上げてきて、俺は優しく微笑んだんだ…。
「"歴代の国王を何回も経験している"とか、頼りになり過ぎるだろ…。"副国王に、これ以上の適任者は居ない"…。それと……、"ずっと、俺の婆ちゃんで居てくれ"…。」
婆ちゃんの目が、無言のまま…更にゆっくり開いてきた…。
そして、涙を溢れさせながら、もう一度頭を下げ、身体を小刻みに震わしながら、声を出してくれた。
「"ありがとう…ございます"……。御心…御望み通りに全て従います…。何なりと、お申し付け下さい…。」
俺は口角を少し上げ、左手も婆ちゃんの右肩に触れ、無言のまま、婆ちゃんの上半身を起こしたんだ。
そして…もう一度、俺は婆ちゃんに抱き着いたんだ…。
「婆ちゃん…、"迷惑をかけてごめんなさい"…。それと、ちょっと強引だったけど…、多分、これが一番無難に過ごせると思うしさ…。奴隷とは言ったけど、勿論閉じ込めるつもりもないし、"空いた時間があれば、好きに過ごしてもらって構わないよ"……。」
俺は少し、目を泳がしてしまった…。
「婆ちゃんはもう…、"この部屋に来なくて良いんだ"…。」
俺は…つい、目頭が熱くなってしまった…。
半年間…俺も、辛かった…。
息が詰まる…。胸の奥が潰れそうで…"苦しい"…。
"こんな場所で、婆ちゃんも独りだった"んだ…。
婆ちゃんも…"限界だった"…。
両手が震え、身体に力が入る…。
「うっ…うあああああああああああああああああああああ……!」
"大号泣"…。
婆ちゃんはずっと…、感情に蓋をしていたんだ。
ギュ……
俺は、少しだけ両手に力を入れた。
養子とは言え…桜蓮の孫なら、俺が死んで3代目になるまで100年も経ってないよな…。
ほぼ2000年じゃないか…。
……ん?というか、おかしくね…??
噛み合ってる様で、噛み合ってない…。
世襲制だったとしても、初代が俺、二代目が母さん、三代目が転生前の初期の婆ちゃん…。
これ、二代目の期間かなり短いぞ??
俺は、顔だけ国王の方に向いたんだ。
「なぁ…国王、二代目をやっていた"期間"って、実際何年だ?」
「……っ…」
国王は土下座のまま、言い辛そうにしていた。
そして、次第に身体を震わし、両手の指先に力が入り始めた。
国王は静かに、大きく息を吸った…。
「…"15年です"…。当時、初代が亡くなられた際、彼女は5歳でした…。正直、私は初代の転生に向け、国政をするどころではありませんでしたが、桜蓮以外の宮家出身者で、国王候補を考えた際、"最も教育がし易いのが子供でした"ので、彼女を三代目が候補にし、"育て、利用した"のです…。」
教育…。いわゆる、"傀儡としての洗脳"だ…。
…ん?というか…
「俺が死んだ時に…5歳…?一ノ宮の…桜蓮の孫?………あれ?ひょっとして…"氷華"か…!?」
俺は2000年前を思い出していたんだ…。桜蓮の孫だろ?生まれた頃に何回か会ってるぞ?!良くずり這いやハイハイで膝元に来て懐いてくれていた子だ…。
俺はチラッと婆ちゃんの方を見ると、婆ちゃんも顔を上げ、俺を見てくれた…。
婆ちゃんと氷華の顔が、重なって見える…。
ああ…、マジか…。
めっちゃ面影あるじゃねぇか…。
婆ちゃんが涙目でまた大きく見開いて来た。
「私を…"知っているの"?」
!
俺はちょっと頬を赤くしながら、軽くそっぽを向いた…。
「まぁ…な。桜蓮の家には、2000年前も"時々出入りしていたからな"…。赤ちゃんが居たら、見るだろ…。"国にとって、赤ちゃんは掛け替えの無い宝"だ…。」
ハッ……!!
言ってから気づいた…。
俺はまた、国王に振り向いた。
「おい……国王…??"この神殿"……、いや、"結衣の毎週の墓参りの本当の意味って何だ"??」
結衣の身体が依代で、国王代々の墓だと思っていた"あの墓"も、自分の墓だ…。しかも、婆ちゃんでさえ、物置きに入れられていたし、出現方法も独特だ…。…"本来の用途がちゃんとあるんだろ"…?
国王は強く目を閉じていたが、口はようやく開いた。
「結衣の身体と、その今の御身体を"馴染ませる為"にございます…。」
国王はずっと震えていたが、俺達三人は"納得してしまった"んだ…。




