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転生探索者のすべき事  作者: 寿司
第零章 知らない人

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9/35

違和感

『弟子にしてください!!!』

「は?」


サバト城塞都市、郊外 時刻 17時頃、二名の少年少女が問答を繰り返していた。


コイツは何を言っている?弟子?色々飛躍しすぎだ。一体どんな心境の変化があったんだ?


「嫌です。一人が好きですし、それに弟子はもう取るつもりはないんですよ」


後半は本気だ。弟子はもう取りたくない。記憶はないが、強く拒否している。


『貴方から得られるものは多いんです!どうか!』


縋り付く勢いで懇願する。放っておけば、異世界人は知っているは知らないが、土下座でもしそうな勢いだ。


押しが強い...どうしたものか。

確かに俺から得られる物は、実際多いだろう。...それは事実だ。まずは聞くべき事を聞こう。


「何故そこまでして、私に師を仰ぐのです?教えられる事は少ないですよ?」

『強さ、思想。二つに感銘を受けました。貴方は人として、戦士として、勇気あるものとして、学べる考えが多いと感じました」

「私の考えなんて真似するべきべきものではありませんよ。もっと、貴方の身近に敬うべき人はいるでしょう」


心の底から思う。探索者《俺達》の真似なんかするな。


『...勇者になりたいんです』

「余計に私に拘るのはやめなさい。聴いたでしょう?話を聞けば分かる筈です。私が勇者を嫌っていると」


ここは突き放すべきだ。勇者を目指すのは勝手だが、俺は勇者なんてもの好きじゃない。むしろ苦手だ。分かってる筈だろ?勇者を目指すのは勝手だが、俺の持論には勇者なんていないんだよ。


『それでも!僕は貴方に師事したい!勇者の誕生を見てもらいたい!』

「まだ言いますか?思い上がりもいい加減にして」

『貴方は勇者を理解している』


空気が変わる。今まで幼女が維持していた笑顔が、初めて崩れた。


「...お前、良くそこまで人の地雷を踏めるな?」


赤髪の幼女が少年向ける視線に殺意が宿る。訓練では見られない本能的な恐怖、龍の尾を踏んでしまったような感覚を、少年は覚えた。


だが、それは少年が引く理由にならない。


『貴方は勇者に憧れていない。憧れは理解から最も遠い感情だ。つまり、逆に考えれば貴方は勇者を客観的に見れているという事だ』

「...つまりは?」


無表情のまま、幼女に少年が問いかける。


『貴方の側、それも弟子になれば、勇者になる近道になるかもしれない。そう貴方を利用してやる事にしました。"強くあれ"と言った責任、取ってください』


したり顔が笑っている餓鬼。憎たらしいくらいに...

俺に対して良い答えだよ。


【忘れないで】


【せいぜい利用してやるわ!感謝なさい!】


透き通るような、一度聴いたら忘れない声。脳内に知らない人物の声なのに、何処か懐かしさを感じる音色。その矛盾に、目を見開いたまま一瞬思考が止まる。



はっきり聞こえた。今の声は一体何処の記憶なんだ?俺は、餓鬼に誰を重ねたんだ?


俺の野望は記憶を取り戻し、自分を知る事。なら...いや?何故このタジミングで都合良く記憶が蘇っ


―――繧オ繧、繝溘Φ


「(子供にキレすぎたしな、精神が引っ張られてるのか知らないが短期すぎたと思うし...)」



幼女は表情を変えなかったが、先程までの殺気は消え失せる。その思考を見る事は叶わないが、少しは目の前の少年を認めたのだろう。



「いいでしょう。貴方の師の役目、承りました。せいぜい盗んでみなさい」


見定めるてやるよ、お前がお前にとっての勇者になれるかどうか。それが"責任"でいいんだよな?


『はい!』



奇妙だ。異常だ。不自然だ。都合が良すぎる。何だ?一体何が起きて...






















『ようこそ。我が邸宅へ』


どうして、こうなったんだろうな。


宮殿のような豪邸。

第一印象はこれだった。どうやらこいつはただの餓鬼ではなく、かなりのボンボンの坊っちゃんだったらしい。確かに身なりからただの平民とは思ってなかったが、どうやら結構高名な貴族の息子だったそうだ。


流石に想定外だ。貴族は転生者の事嫌いじゃないのかよ!と移動中にマハトに聞いてみたが


『いえ、そんな習慣。少なくともうちの国にはありません。特に彼らから屈辱をあじあわされていないのに、何故彼らを嫌う必要があるのです?』


と不思議そうに返された。どうやら国ごとにも転生者《俺達》に対するスタンスが違うらしい。ますます異世界への謎が深まった。


そうして現在、俺は領主でありマハト・オースティンの父であるペルギウス・オースティン。彼の希望で今夜会合を行う。知らない顔の女、それも幼女に急に息子の師匠をやられても、不安なのだろう。親として当たり前の事だ。マハトから『本音で喋ってください』と言われたが、何かしら癖がある人物なのだろうか?


そこは上手くやっておけよマハト。とも思ったが、恐らく相手の押しが強かったんだろう。まあ親子だしな。



扉の前に至れば、緊張し冷や汗が滴る感覚を覚える。扉の前から感じる威圧感。異世界人である彼らとの交流は、お世辞にも良いものではなかった。対応を間違えたら、恐らく待っているのは碌な結末じゃないだろう。


"怖い"そう感じるのは、この肉体に精神が引っ張られているからだろうか。記憶の中では、少なくとも交渉は慣れっこだった筈、この程度のストレスに恐怖を感じる自分に苛立ちを覚える。こんなにも自分は弱かったのだろうか。


違和感、ずっと感じているこの感覚、一体何なんだ?考えれば考える程思考が外されて、考えられなくなく...まあ、いいか。


僅かな恐怖と苛立ちを持ちながら、幼女は扉を開けた。

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