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転生探索者のすべき事  作者: 寿司
第一章

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36/50

人域

「...知らない」

『相手を人間を思わない事....それと、死への恐怖が無くなる事だ。都市長が言ってたかがく?ってやつと、宗教の背景込みで考えてみてくれ』


『引き合いに出すのはジャンヌつう聖女様と、ナ...戦争ってヤツ。この二つの例だ』


ジャンヌ?とナチス?とてもじゃないが、同じ話題に出てくる訳が無い...と感じた。


『まずジャンヌ、彼女は旗を振って味方を鼓舞した。死への恐怖を無くした。きっとフランスにとっては、もっとも身近で尊敬される聖女様だったんだろうな?だが

イングランド...敵から見たら彼女程恐ろしい存在もいないだろう。何せ魔法が無い世界で...ただ旗を振って兵士を鼓舞すれば、その兵士は死へを恐れない狂戦士へと変身する。人間は情が無い方が戦う者(戦士)として強い。だからこそ、それを容易に量産出来るジャンヌという少女が、魔女って蔑称で恐れられて...火刑で処刑された。彼女には、確かに死への恐怖を無くす程のカリスマがあったからだ』


受け売りとは言え、何故異世界人である彼がここまで世界史を知っているんだ?

やはり、裏に異世界人がいるのだろう。


『そしてもう一つ、戦争...プロパガンダだな。これは宗教とも絡めると分かりやすいと思うぜ?』


サングラスを上げながら、ノアが語る。


『彼らは、兵士の一人一人は、等身大の人間。家庭を持った男達、未来を夢見る学生。二度の世界大戦を生きた老兵。皆平時なら、殺しなんて事なんてやらない。なら何故やったと思う?』


質問を投げかけられる。少し驚いた。


「...守るべき家族が居たから?」

『正解、俺も受け売りなんだが、護べき者がいる人間は恐ろしい。そんでプロパガンダ...どっちかにでも影響されれば、より凶悪な兵士が出来上がる。つまり、相手を人間と思わない。命を賭けてでも守りたい相手がいる者。追い詰められすぎた者は、圧倒的に..."強い"』


"強い"きっと単純な戦闘力の話じゃない。それだけは実感出来た。


――強くあれ


頭が痛い。まるで内側から脳を食い破ろうとしているように、頭がジクジクと痛む。


まただ、これは一体...この体の記憶なのか...前世の記憶なのか...分からない。


『お嬢にとって、"強さ"って何だ?』


視界が暗転する。


『お嬢?』

「【...強くあれ――そうすれば、自ずと強さは付いて来る】」


続けて何かを語ろうとした直前、口を挟まれる。


『俺が悪かった。お嬢』

「...??ああ」

『話を戻すぜ?俺ちゃんが思うに、強さってのは頭《脳》と心《心臓》だ。覚悟と応用、その二つが揃えば、人間の理論値の動きが出来る』

「理論値?」

『ああ、要は心にどーぴんぐして、戦闘IQを上げたら最強って言う、まあ当然の理屈だ』


心にドーピングは何となく分かる。話の繋がり的に、プロパガンダとジャンヌの話だろう。応用?戦闘IQ?


『今から話す』


読心で相手の心を読み取り、先手を打つ会話。何度やっても慣れない感覚だ。


『まあ応用....お嬢は自然にやってるが、相手の技を自分力で使えるよに改変する力。お嬢の世界で言う、兵器化ってやつ?だいなまいと〜とかだな』


口調とは裏腹に、真剣な顔つきで語る。


『曰く、アルフレッド・ノーベルは本来は土木工事の安全性向上を目的としてダイナマイトを発明したのであり、それが戦争に用いられたのはその意志に反していた...と言われているが、実際にはノーベルにとってダイナマイトが戦争目的で使われることは想定内であった。むしろ彼は破壊力の大きな兵器が使われることで、それが戦争抑止力として働くことを期待した。が、実態は戦争の激化を招き、彼の名は【死の商人】として世に知られる事となった...まあ何が言いたいのかと言うと、自分の全てを戦闘、殺しに応用するんだ』


四節風刃乱撃魔法エアド


応用...ね。確かノアも風魔法で見えざる刃もどきみたいな技打ってたな。


『そうそう。お嬢は脳の容量全部応用にぶち込め、相手の事なんか考えるな...あーまだ無理そう?』

「...ああ」


困惑、いや引いていると言った方が正しいだろう。溜め息を吐いた後、口を開く。


『.....お嬢はさ、優しいよな』

「...え?」


急に褒められか、少しだけ表情を変わる。髪を触りながら困惑する。


『鮫ちゃんをこのチームに入れるよう誘導したのも、多分優しさだろ?』

「急に...なんだよ」

子供マハトを庇ったり、口調がわざと荒くしてるのだって、人間相手だと弱くなるのだって、お嬢の不器用な優しさだ...ほんと良い子ちゃんだよお嬢は』


目を逸らす。だが、構わずノアが肩を掴んだ。


『それじゃ駄目なんだよ。"優しさ"だけじゃ生き残れねぇ、勿論残虐になれって言ってんじゃねぇ。冷酷になれって言ってんだ!お嬢なら出来る。助ける人間の選択を、倒すべき敵の選別を!このままじゃお嬢はイスに心壊されんぞ!何迷ってる。生きたきゃ捨てろ!.....悪いこたぁ言わねぇ、お嬢...本当の意味で合理的になるんだ』


...きっとノアは、見ず知らずの俺の事を心配してくれているのだろう。感情的になって、自分の意見をぶちまけているが、ノアだって相手を思い遣ってくれている。異世界の人間だって死生観が違うだけで、皆人間なんだ。怒るし、悲しむ...それだけの事だったんだ。ノアだって、"何かに迷ってる人間”なんだ。それだけは、何となく分かった。直感か邪推かもしれないけど。俺がマハトを子供扱いしたように、ノアも俺の事を子供扱いしている。


郷に入っては郷に従え、異世界の生き方は異世界の価値観を見習って考える。それだけの事だったんだ...なのに、俺は...こんなに親身なノアを疑っている。










――自分の疑心暗鬼さに殺意が湧いた

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