徒党
『何読んでいるんだい?』
「魔導書、読むか?」
『興味はあるね。後で貸してくれるかい?』
酒場で文学少女のような顔をして魔導書を読んでいるのが、赤髪こと柴田である。
『おん?ああそれ学校で使ってたわ』
「さっさと本題に入れ」
彼女に声をかけているのは、この世界では奇抜な格好をしている二人だった。
『塩対応は辛いぜ口悪お嬢。もっと馴れ合おうぜ〜』
片や、アロハシャツを着たサングラスが特徴の金髪男。
「馴れ合いはしなくて良いって言ってただろうが」
殺し合い上等の世界で、これ以上他人と関係を深くしたくねぇ。
『まあ少女なりの関わり方なら、これ以上追求するのも野暮じゃないかい?それに口の割には、結構いい子だよ?朝起こしてくれたし』
「...集合時間に遅れそうになったから起こしただけだ。社不すぎだろ」
片や、三白眼が特徴的な白衣の女。
『酷くないかい?』
俺は昨日からコイツらと徒党を組んでいる。
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『お、強いなアンタ』
「誰だテメェ、」
赤髪の少女が人影を踏みつけいる。
そんな非日常的な光景であるのに、金髪の男は何事もないように声をかけた。
『ご"べ"ん"な"ざ"い"、も"う"じ"ま"ぜ"ん"が"ら"!』
「黙ってろ」
「そんな警戒なすんなって、誘いに来たんだよ」
踏みつけられている鮫っぽいぬいぐるみを被った気弱そうな女が叫びを上げるが、彼らはその咽びを無視つつ、会話を続ける。
「何に?」
『単刀直入に言っちまうが、組まないか?"俺達"と』
「...俺が入るメリットは?」
『あー..例えば、いい情報が手に入るぜ?転生者を殺す利点とか』
「利点?」
『だっておかしいだろ?殺す理由がなくちゃこの儀式はスムーズに進まない。なら、人を殺す事で得を得られるようなシステムになっている筈だ』
その返しに柴田は数秒考えるような仕草をする。数秒後口が開いた。
「お前らが俺をそこに入れるメリットは何だ?それに、何でそんな事をお前が知っている」
『前者に関しては、アンタの魔術ってヤツのうち、治癒ってのがあるだろ?アンタを入れるメリットなんてそれだけで十分だ』
「...何故俺の魔術を?」
『入ったら教えてやるぜぇ?今ならどっちもよ』
「目的を聞かせろ。それ次第だ」
『いいねぇ』
ニヤリと聞こえそうな程、分かりやすい表情をしていた男が喜色を滲ませる。
『俺ちゃん達の目的はただ一つ、ズバリ、この異世界人同士の殺し合いを終わらせる事』
「..詳細は?」
『あるよ〜ん。おっ!入る気なった〜?』
「ウルセェ、早く聞かせろ」
『っつてもな、あんまルールというルールなんか無いぜ?なるべく情報共有しろ〜とか、殺し合いの禁止とかくらいかな〜でどうよ?ウチ来る?』
飄々としている男の手前、彼女は溜め息を吐いた後答えを出した。
「行く。コイツは?」
『ついでに持ってくか』
『ちょっと待っ』
彼女の内心は、「集団行動した方が危険が少ない」程度のものだったが、確かに目の前の男の人間性を、彼女は"信じた"上で、交渉は成立した。
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「んで何の用だよ」
『顔合わせよ顔合わせ。お互いの強みとかを把握し合う為にな』
「俺ら以外にもまだ転生者を集めたのか?」
『そっ!つうわけでご紹介〜』
移動した先、宿屋の扉を彼女達は開ける。綺麗に整頓されたベットの上に腰掛けている者や、壁にもたれかかっている者、果てやタンスの上に深くしゃがみ込む者までいる。まるでマンガのような光景がそこに広がっていた。
「...帰っていいか?」
『ちょっと待って!俺ちゃんの"眼"を信じてくれよ!』
「マジで使える奴らなんだよな?お前含めて不安しかなねぇぞ…」
まあ、コイツの"眼"は信用している。確か
鑑定眼、対象の能力の詳細を一瞬にして理解する能力と、相手の大まかな強さを"オーラ"として見る能力だったか?本当だったとしたらチートどころの騒ぎじゃない気がするが…
『ちょっと聞いてれば失礼じゃないかい?まるで私達がバカみたいじゃないか!』
「先回りしてスタンバッて何言ってんだ?バカ女」
『ご"べ"ん"な"ざ"い"。生きててご"め"ん"な"ざ"い"!』
「...さっさと話進めんぞ」
『sorry』
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『んじゃ、各自事故紹介。そんで強み解説よろ!隠し事もOKだけどなるべく言ってくれると嬉しいわ』
「全部見えてるお前が言ってると嘘くせぇぞ」
『うっさい、んじゃ俺ちゃんから』
一泊置いて彼が口を開く。
『俺ちゃんの名前は...えーうん、ノアで職業は...学生...的な?』
絶対偽名だろコイツ。
『趣味は、クリケットとポーカー。強みは加護二つ持ち。以上!次!』
クリケットとポーカー...共に産業革命前からあるヨーロッパにあったゲーム...異世界と元の世界の文化はやはり近いのか?
『では次は私が行こう』
柴田が考えている間に白衣の女が声を上げる。
『私の名前は新倉 黒乃、転移系転生者で職業は医者って所かな。趣味は研究と物作り...強みは...見てもらった方が早いかな』
そう言った彼女はおもむろに謎のベルトを取り出す。
「んだそれ、おもちゃか?」
『さぁね。それじゃあ行くよ』
瞬間、けたたましい程の音声が鳴り響く。その体勢のまま、何かを持ってポーズを取った。
『変身──《アムド》』
叫びと共に、空気が震えた。
彼女の手元に現れた変身ベルトが、自動的に展開し、中心のコアが眩く脈動する。
ベルトにドライバーキーを挿入──同時に金属音が響いた瞬間、空間に異形の紋章が浮かび上がり、エネルギーの輪が身体を包み込む。
炎のような光が背後で爆ぜ、漆黒のアーマーが装着されていく。
頭部、胸部、四肢へと、一瞬のうちに装甲がスライドしながら形成され、最後に仮面が音を立てて顔に装着される。
音声が響く──
【RIDER NAME──BLACK──RISING ON!!】
一歩、前に踏み出したその姿は、闇をまとった黒の戦士。
「んだよ...それ...」
『驚いてくれたかな?』




