☆混迷
見ていてあまり気持ちの良い内容では無いのと、本編上見なくてもストーリーは進行するので、パッパと読みたい!という人は十一話まで飛ばしてください!
堅牢な外壁を持ち、魔法で強化された武器や防具を大量に抱えた。デルタ王国最重要軍事拠点。それでいて山脈という天然の要塞、自然という最大の防御を携えた。我らが故郷サバト。
そんなサバトを治めるオースティン家次男。マハト・オースティン。それが僕の名前です。かなり恵まれている身分で生まれた僕は、はっきり言ってクソ野郎でした。
ニ元素使い、これでも10万人に1人の才覚だったらしいのですが...正直自分が恵まれてるなんて思えませんでしたが。
エースの弟、それが僕の蔑称です。兄であるミルト・オースティンは4大元素全てに才能がありました。
火 風 水 土、その全てを使える兄、まさに我がサバト城塞都市のエース。古い世代にはそう言われていました。
エースとは、戦争時代の古い表現です。城塞都市サバトも昔は戦争で使われた重要拠点の一つだった為、名残で戦争上がりの老兵が現在も残っています。父もその一人です。
父 ジーク・オースティンは軍人上がりで貴族階級を与えられた、成り上がり人間。僕と反りが合わなかったのか、特に会話する事はありませんでした。どんな人間かも知らないですし、今もあまり興味ないです。強いて興味がある事と言えば、心眼の加護を持っている事くらいでしょうか。
そんな彼ら戦争脳の人達が周りにいながら生まれ育った兄上は、規律を重んじる善良な人間に育ちました。
対して僕は、兄に対する劣等感や比較される事を言い訳に、自堕落な生活を送っていました。ただ金を貪り尽くし、剣の修練もせず、かといって恵まれた魔法の才を生かさず碌に勉学に励まない。
勉強もせず、才能も碌に生かさないドラ息子。当時の僕は大方そんな人物像でしょう。
そんな僕にも、兄と母は優しく接してくれました。
理想の兄でしたよ。当時の僕が何の文句を言えない程には、人格、能力ともに最高の人でした。尊敬していたし、恨めしかったです。
母であるアルグ・オースティンは自分にとって、唯一本音で話せる人でした。自分の愚痴に対して真っ向から否定せずひとしきり聞いてくれて、自分の意見を述べてくれる。
当時から、自分にとって心の支えでした。
そんな幼少期を過ごした僕に、転期が訪れます。
兄に対して王直々に複数国家で星の智慧派殲滅戦への戦役連絡が来たのです。
これでもサバトは周辺の街の中ではかなり大きい街で、かなり離れた王都でも名が知れている程度には有名な都市だったので、どうやら王にも兄の噂が知れ渡っていた様子。
兄は強いです。たださえ4属性使いという類稀なる才能に加え、兄は女神からも愛されていました。
兄には、勇者の加護がという力あります。兄には4属性の魔法が全て効きません。無属性やその他の属性で攻撃を仕掛けなければ、兄を倒すどころかダメージも与える事も出来ない。そんな力を持っていながら4大元素の魔法を全て使え、剣術もかなりのもの。
王にとっても、兄は絶対に欲しい手札のうちの一つだったのでしょう。
その頃報告を聞いた僕は、不貞腐れて自分の部屋にこもっていました。
当時の僕は、嫉妬でどうにかなりそうだったです。
そんな僕にあろう事か兄は扉を強引に開き、両親と領民を任せる。というのです。
バカにしているのか?と、当時の僕は感じました。
勇者の加護を持った兄から何を言われても、当時の僕は真っ直ぐに受け取れなかったのです。
僕は兄に感情のまま罵詈雑言を叫び続け、ひたすら罵倒し続けました。かなり酷い言葉を使ったと思います。それでも兄は全て受け止めてくれて、激励の言葉を僕に送りました。『お前なら出来る』と
違うんだよ兄さん。僕は兄さんと違って、大した人間じゃないんだよ。
あれから2ヶ月、ただ漠然と何かしなくてはいけない。動かなくては、という強迫観念が強く心に根付き、持った事もない剣を振り続け、魔導書を読み漁る日々を僕はおくっていました。
そんな時に訪れた兄の訃報は、当日の僕にはどう映ったのでしょう。
悲しい?苦しい?辛い?怒り?ほっとした?
一体どれを思って何を思わなかったのか...いや、もしかしたら全て自分の感情だったのかもしれませんが、今の自分でも分かりません。
以降僕は、ただ漠然とした不安感で兄の真似事をするように、最強を目指すようになったのです。
それから数年間、ただ鍛え続けました。何かをしていなくてはおかしくなりそうだったので、何も学習していない自分に反吐が出ます。
努力が報われたのか、自分はサバトの若手の中でいちばんの実力になれました。
こんな自分でも強くなれた!サバト最強、僕は堕落した人間では無い。兄と同じ天才になれる!本気で思っていた。
母が死ぬまでは
母は赤髪の転生者に殺されたらしい。それも家の中で...もうどうすればいいか分からなくなった。
誰が殺した?誰が母を殺した?僕だ。僕が殺したようなものだ。だが、お前を憎まない理由にはならない。
やっと見つけた。僕と戦え、どんな手段を使っても殺す。模擬戦で油断した所でもいい、殺す。惨たらしく殺してやる。
完膚なきまでに負けた。きっと不意打ちしたって殺される。もうどうすれば良いんだろう。
「弱い?弱がったら、何ざれてもいいのがよ!?があざんがごろされる理由になるのがよ!」
涙を垂らし、嗚咽を吐きながら泣き言を散らす。何とも惨めだ。
『なる。強くなければ、人は護れない。人は死ぬ』
弱者の気持ちを分かったような事を言うな。
「お前らには、分がらないんだろうな!俺達、奪われるものえのぎもちなんで!!!」
ふざけるな!僕は努力したんだ!少しくらい報われたって良いだろ!
「知っている。知っているからこそ、強くなるんだ。」
『ずよいのがぞんなにいいのがよ!!』
反論しながら、感情のままに俺の胸ぐらを掴む。
「違う」
『ならなんだよ!!!』
「"強くあれ" 君が人を助けたいなら、そうあればいい。そうすれば、自ずと強さは付いてくる」
それを...それを...
『ぞれを、お前が!!言うの』
勘違い?ふざけるな。どこまで人を侮辱すれば気が済むんだ!これで終わってたまるか!たまるかよ..."強くあれ"..."強くあれ"と、アイツが言ったんだ。...だったら。
「...勇者になりたいんです」




