ポテト
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
ショッピングモールのフードコートも、他に誰もいない。
天井の照明は少しだけ落ち着いた光を落としていて、空気ごと時間が止まっているようだった。
テーブルも椅子も整然と並んでいて、どこを選んでも貸し切り状態。
俺たちはその中の一角に、自然と向かい合って座っていた。
パッと机に、フライドポテトの山が現れる。
あまりに多くて、ちょっとしたギャグみたいな光景になっている。
「え、ちょっと待て、これ何人分だよ」
目を見開いた俺に、美香がまるで悪戯を仕掛けた子供みたいな顔で笑う。
「うーん、四人分くらい?」
「多すぎるだろ!」
「お腹空いちゃってさー、しょうがないしょうがない!」
ハハハと笑ってごまかす美香。
いつもこうだ。
「……ったく。まぁ、余ったら俺が全部食うよ」
「ありがと!じゃ、いただきま~す」
笑いながら、美香はポテトを一本つまみ、器用にケチャップをちょこんと付けて口に運ぶ。
「おいし~!!」
その顔がやけに嬉しそうで、俺も思わず笑ってしまった。
「そういえばさ。高校のときもこんな感じで皆でポテト山作ったよね?」
「ああ、あった。」
美香の言葉にうなずきながら、俺の頭の中にもあのときの情景がぼんやり浮かんでくる。
ある日の放課後。
友達の寛人ってやつの誕生日で、そいつのお祝いに皆でファストフード店に行き、みんなでポテトの山を作ったのを思い出す。
「そうそう。確か、一人Lサイズを二つ。みんなで合わせて何個頼んだんだっけ……?」
「俺と、美香と、寛人と、由美と……」
「あと、大和くんと栞ちゃんも!」
「そうそう!合計六人か!だから、十二個か!」
「十二個!すごいね、一個一人前だとしたら、十二人前?」
「十二人前かぁ、半端ねぇな。で、途中できつくなって、無理やりジャンケンで押しつけあったりしたっけ」
「尚人、結構頑張って食べてたよね。ひょっとしたら、半分くらいは食べたんじゃない?」
「そうだったっけ? ……あ、でも腹壊した記憶あるわ」
「ふふっ、かわいそう~」
美香は口元を押さえながら、くすくすと笑った。
俺もつられて笑いながら、テーブルのポテトを一本取り、なんとなく昔の気持ちがよみがえってくるのを感じていた。
──あの頃。
あんなふうに、ふざけながら皆で笑って、気づけば時間が過ぎていて。
それが終わるなんて、誰も思ってなかったんだよな。
「……けど、なんか、いいな。こういうの」
ふと、そんな言葉が漏れた。
美香が少し驚いたように俺の顔を見たあと、柔らかく微笑んでうなずく。
「うん。……なつかしいね」
誰もいないフードコート。
でも、テーブル越しに見える美香の笑顔があれば、こんな場所も、世界で一番心地いい場所になるんだと思った。
ポテトを一本ずつつまみながら、くだらない話をして、また笑って。
こういう何気ない時間が、何よりも嬉しいんだと思った。
目が覚めるまで、できる限りこのままでいたい――そんな気持ちが、ふと胸に湧いた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると幸いです。
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