罰ゲーム
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
最初のババ抜きから、体感一時間くらい経った気がする。
二回戦、三回戦、四回戦……
勝負は、まさかの七回戦まで突入していた。
「うぃ~、また私の勝ち~」
「……強すぎだろ」
美香がぱちぱちと手を叩いて喜ぶ横で、俺は力なくカードを伏せて、ぐったりと天を仰ぐ。
運だけじゃない、あれは絶対何か読み取ってる。
表情とか、手の動きとか。
「累計、私の五勝。尚人の二勝。よって、勝者はこの私で~すっ!」
両手を高く掲げ、勝ち誇ったようにニカッと笑う美香。
「……」
「わかってるよね?」
「……何が?」
「罰ゲーム!」
いたずらっ子みたいに指を立てて言い放つ美香。
「……」
「尚人が言ったことだよ!それに、私は譲歩してあげたよね?二回戦で終わるはずだったのに、わざわざ延長してあげてさ!」
「……」
反論の余地もない正論に、俺は言葉を失う。
「じゃ、罰ゲームね!何にしようかな~」
腕を組んでうーんと唸る仕草まで、どこか楽しそうだった。
「思いついた!」
「はいはい……ご命令をどうぞ」
「尚人にはこれを着てもらいます」
「これって」
「そ、学校の制服!」
目を輝かせながら、美香は俺にブレザーとズボンを突き出した。
「なんでまた……」
俺は眉をひそめてそれを受け取る。手に触れた制服は、夢の中でも現実と変わらない、やけにリアルな感触だった。
「だって、私だけ制服って変じゃん!尚人も制服着るべき!」
「確かに……一理……あるのか?」
冷静に考えれば変な気もするが、美香の期待に満ちた目を見るとそれ以上何も言えなくなる。
「まぁまぁ、細かいこと気にせず!ほら、勝者の言うことは絶対だよ?」
「はいはい」
渋々受け取って、教室を出て受け取った制服に袖を通す。
袖を通した瞬間、少しだけ背筋が伸びた気がした。
鏡代わりの窓に映る自分の姿は、どこかあの頃に引き戻されたような、そんな不思議な気持ちにさせられる。
「着てみたけど、コスプレみたいになってない?もう、俺二十だぜ?」
気恥ずかしさからかごまかすように笑うと、美香は首を小さく横に振った。
「全然、あの頃のまま!」
断言するように、そして少し嬉しそうに言うその声が、やけに胸に残った。
「そうか?ならいいか……」
少し照れ隠しのように呟いて、俺は椅子に座り直す。
「よし、じゃあもっかい勝負しようか?次も罰ゲームありでね!」
美香はもう次のカードを混ぜながら、にやにやと笑っていた。
「あいあい。次は負けねぇぞ」
「こっちこそ!」
夢の中の遊びだとわかっていても、なんだか本気になってしまうのは、美香がいるからだ。
俺は新しい手札を受け取りながら、次こそ一矢報いようと、静かに気合を入れた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると幸いです。
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