表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

尚人の夢

読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。



「で、尚人の夢は?」

「俺?」

「うん。私の夢は言ったんだから、尚人も言うのが筋ってもんでしょ」

「筋って……ヤクザみてぇ」

「いいからいいから。で、尚人の夢?」

「……夢、か……」


 ふいに視線が宙をさまよう。

 美香の問いは何気ないようでいて、背中に銃を突き付けられた……は言い過ぎだとしても、急に現実に戻されるくらいの衝撃を受けた。


「うん。あるの?」


 俺は少し黙ってから、ゆっくりと首を横に振った。


「正直、まだないんだよな。大学入る時も、俺の学力で入れるところをなんとなくで選んじゃったし。何がやりたいのか、まだ全然わからない」


 言ってしまったあと、自分の言葉がどこか逃げみたいに聞こえて、ふと目をそらした。

 けど、美香はふっと笑った。


「そっか。まぁ、しょうがないんじゃない」

「え、そんなあっさり?」

「うん。だって、もう夢が決まってる、私の方が特殊だと思うし。まだ、決まってない人もいると思うし」

「……そうか。……でも、焦りはあるよ」

「焦り?」

「あぁ。周りの奴らは次々に自分の夢に向かって努力している。美香も、自分の夢に向かって努力している。それに引き換え、俺はやりたいことがわからず、ずっと立ち止まったまま。それが取り残されてる気がして、焦る……というかなんというか……」

「……」


 言いながら、自分でも思っていた以上に、その『立ち止まっている』という感覚が苦しかったことに気づく。

 でも美香は、まっすぐな目で俺を見た。


「ま、尚人なら大丈夫でしょ!」

「え」

「うん。私だって、小学校、中学、高校、いろんなことが積み重なって、『なりたい』って思えたんだよ。尚人だって、これからだよ!まだたくさん時間は残ってるんだし!」


 その声は軽くて、でもまっすぐで。

 不思議とすっと胸に届いた。


「……ありがとな」

「ううん。私は、尚人が何を選んでも応援するから」


 その笑顔が、胸の奥がふわりとあたたかくなる。


(……夢の中で話す将来のことなのに、不思議と現実よりもまっすぐに向き合えてしまうな)


 そんなことを思ったら、自然と口元が緩んだ。


「なに、笑ってるの?」

「……いや、なんでもない」

「え~、何それ~?教えてよ」


 身を乗り出してくる美香に、思わず目をそらす。

 でも、顔が勝手に笑ってしまうのは止められなかった。


「だから、ほんとになんでもないって」

「ふーん……まぁ、いいけど」


 ぷいっとそっぽを向くふりをしながらも、美香の口元は緩んでいた。

 そんな顔を見て、俺もつられて笑ってしまう。


 ――理由なんて、きっとどうでもよかった。

 こうして笑い合えるだけで、今は十分すぎるくらいだった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。

コメント・誤字脱字報告・改善点の指摘など、頂けると励みになります。

続きのお話はできるだけ、一週間以内に上げたいと思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ