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夢で君に会えるなら

新作です。

そこまで長くはならないので、また最後まで読んでいただけると幸いです。

 自宅に帰ったのは、いつもと変わらない時間だった。

 空はすっかり暗くなり、時刻はすでに十時を超えている。

 授業とバイトに追われて疲れた体を、ベッドに放り投げたら、すぐに意識は落ちていった。



 ――気づけば、そこは高校の教室だった。


 カーテンがふわりと風に揺れて、春の光が斜めに差し込んでいる。

 木の机、少しガタつく椅子、黒板に残る白いチョークの跡。

 全部が懐かしくて、胸が少し締め付けられる。


「……ここ、俺の席……」


 窓際の後ろから二列目の席。

 俺の席だった机に近づき、椅子を引いて座ってみる。

 確かにここは、かつての教室だった。

 紅葉谷高校三年二組。

 卒業してから、もう二年も経ってるはずなのに、記憶よりずっと鮮やかだった。


 ——そして、そのときだった。


「やっほー」


 聞き覚えのある声が、背中越しに届いた。


 振り返ると、そこに——美香(みか)がいた。


 やわらかい茶色の髪を、いつも側頭部で一つにまとめている。

 その髪が揺れるたびに、明るい笑顔がより引き立つようだった。

 目鼻立ちが整っていて、でも近寄りがたいわけじゃない。

 見る人みんなに安心をくれる、そんな優しさがにじむ顔立ちの女の子、遠野 美香(とおの みか)

 明るくて、元気で、誰とでもすぐに誰とでも打ち解けることができる。

 ちょっと天然で、でもそこがみんなから好かれていて、いつもクラスの中心にいる。

 ――誰よりも『光』みたいなやつだった。


「……美香?」

「え、なにその反応! ひさしぶりなんだから、もうちょっと感動してよー」


 俺の驚いた顔を見て、悪戯っぽく笑う。

 その笑顔も声も、まったく変わってない。

 手入れのされた綺麗な髪も、黒曜石みたいに輝く瞳も、誰よりも眩しい笑顔も、あのときのままだ。

 久しぶりに彼女の姿を見れたからなのか無性にうれしかった。


「まさか……夢か、これ」

「うん、たぶん夢。だから、なんでもありなんじゃない?」


 美香はそう言って、俺の席の後ろに座った。

 昔と同じ席順。

 昔は何とも無かった……いや、当時も割とドキドキしていたが、今はその時の比ではないくらい親族の鼓動が早くなる。

 ……ただ美香が後ろに座っただけなのに


「ねーねー、覚えてる? この机」

「……あー、あれ。みんなで彫刻刀で掘って、バレてめっちゃ怒られたやつ」

「そうそう!『学校の備品に何してんだー!』って」

「懐かしいな」

「ねー」


 くだらない話で笑って、少し昔話をして。

 時間はゆるやかに過ぎていった。


 夢の中ってわかってるのに、妙にリアルで、心地よくて。

 そして、隣にいる彼女が、あまりに自然で。

 高校を卒業して以来、もう会えないと思ってたのに、今こうして隣にいることが、ただただ信じられなかった。


「……なんでだろうな。こんな夢、見るなんて」

「……さあ。でも、会えてよかったよ」


 美香が、ふっとこっちを見て優しく笑う。


 ——ああ、そうだ。

 俺は、この笑顔がずっと好きだった。

 


 ――やっぱり、告白しておけば――



 朝の光に包まれて、俺は目を覚ました。


 いつもの天井。

 時計の針は、朝の7時を指している。

 今日は三限からの講義なので、まだ時間はたっぷりある。

 ベッドに寝転んだまま、さっきまでの夢をぼんやりと思い出す。


 ——また、会えるかな。


 次も夢の中で、同じ教室で。

 あの笑顔に、もう一度会えるといいな。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

また、改善点なども指摘していただけると、嬉しいです。

続きのお話はできるだけ早く、遅くとも一週間以内に上げたいと思います。



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― 新着の感想 ―
切ないお話の始まりに続きが気になりました。 楽しみに続きを読みせてくださいね。
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