嵐の後
ロッドの誕生舞踏会は、大波乱で終わりを迎えた。
なにせこの舞踏会で、ロッドが魔術師を使い、王太子に呪いをかけていたことが、判明したのだ。この呪いをかけていた、ロッドが雇った魔術師は、クレメント辺境伯が捕まえていた。ここはもう、さすがクレメント辺境伯だ。そしてこの魔術師は、私の暗殺が秋の狩猟会で実行された時も、ロッドたちに協力していたと白状した。つまり毒矢ならぬ、呪いの矢を作ったのも、同一の魔術師だった。
その魔術師が王太子とルシアスにかけた呪いは、私が最果てに住む精霊使いマギアノスからもらったポーションにより、無事解くことができたわけだ。
まさか王太子が呪いにかけられていたなんて。しかもロッドから呪いをかけられていたなんて、本当に驚きだった。何よりも彼の元に、ポーションが届いていたことにもビックリ!
我が家によく来てもらい、家族全員がお世話になっていた占い師ミーシャは、実は王族御用達でもあったのだ。本当は王族専属の占い師になることを、何度も請われていた。だが本人は、幅広い人物を占わないと、能力が落ちると、それを辞退していたという。
今回、王太子にポーションを届けてくれたのもミーシャであり、その呪いが解けるタイミングは、完璧だった。
よってこの件は、これでよかったと思うけれど……。
とにかくあのロッドの誕生を祝う舞踏会は、もう大嵐が吹き荒れ、大変!
なにせ北方の領地から、クレメント辺境伯が、乗り込んできたのだ。その彼の息子であるルシアスは、目覚め、ロッドとサラミスの茶番を暴いた。しかもロッドとサラミスは、何の罪もない私のことを、毒殺未遂事件の犯人に、仕立てようとしていたのだから……。
まさに大嵐の中の船のように、関係者は上を下への大騒ぎ。
宮殿と王室の混乱がひとまず落ち着いたのは、それから一週間後のことだ。
これからすべての裁判が始まるが、王太子に呪いをかけ、自らが王位に就くことを目論んだロッドは、国家反逆罪に問われる可能性が濃厚。その国家反逆罪、それすなわち死刑だ。無論、ロッドに金を積まれて王太子を呪った魔術師も、同罪だろう。ロッドは他にもルシアスに呪いをかけ、私を害そうとし、貶めようとしていた。こちらの罪は、記録として刑と共に残るだろうが……。死刑となれば、もはやそれがすべてだ。
王太子の呪いには関わっていなかったが、ルシアスの呪いに加担し、ワインに毒を盛られたと、自作自演で私を貶めようとしたサラミスは……既に両親から絶縁され、男爵令嬢の地位から追われている。政治犯や軽犯罪の貴族に科される幽閉ではなく、何らかの実刑が科されると思う。
サラミスの取り巻き令嬢達は、自分達は何も知らない、何もしていない、と言っているが。こちらは幽閉か、修道院送りか。両親である貴族が奔走しているが、クレメント辺境伯に睨まれたら大変と、どの貴族も助け船は出さない。よって罪に問われることは……間違いない。
ともかくまだ裁判は始まっていないので、刑は何も確定していないが、彼らの未来が暗いことは、確かだろう。
そして当然だけれど、私とロッドの婚約は解消される。かつ王族からは我が家に対し、多大なお金が賠償金やら違約金やらという形で、支払われることになる。それは婚約契約書に定められていた。
「お嬢様、クレメント辺境伯のご令息が、いらっしゃいました」
あの夜の出来事を国王陛下に直接話したり、王室保安庁から聴取を受けたり、婚約解消の手続きをしたり。この一週間は、何かとバタバタしていた。でも今日の午後は、何の予定もなかった。
すると午前中にルシアスから連絡があり、午後、私と話したいとなったのだ。
よくよく思い出すと、ルシアスと会う時の私は、いつも服装がボロボロだった。狩猟会の時しかり、あのロッドの誕生を祝う舞踏会の時しかり。
今日は公爵家の令嬢に相応しい、ちゃんとしたドレスで出迎えよう。
選んだドレスは、ロイヤルパープル。身頃からスカートにかけ、透け感のある白のチュールが重なることで、全体の色味がミルキーになっている。そのチュールには、立体的な小花が飾られ、全体的にグリッターが散りばめられていた。ウエストには、シルクサテンの純白のリボンを結わく。
ハーフアップした髪には、ドレスとお揃いの小花の髪飾り。お化粧は眉を描き、ルージュを薄く乗せ、チークはほんのり控えめに。
素敵な公爵令嬢になれたと思う。
こうして屋敷のエントランスホールまでルシアスを迎えに行き、その姿を見た瞬間。
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明るい悪役令嬢は、今日も悪女を演じます!