腸を掻っ捌いて
あの日から書庫にある本を参考に、少し優しく接っする事を覚えました。
奴隷を調教するのと同じです。
あれから、私に妙に懐くようになったので、上手くできたようです。
ただ、ここまでになるとは思わず、未だに少し慣れませんが。
極限まで追い詰められた人は、大体こうなるんですかね?。
人ではないですけど。
−ガチャッ ギィィ...
「おはようございます!。今日も元気に過ごせましたか?」
檻の中には、ある意味目に光を宿していない少女がいました。
「はい!。だいじょうぶでしたよママ!。」
「.....そうですか。それは良かったです。」
...ええそうです。彼女は私の事をお母さんと認識するようになりました。
最初にこれを言われた時は、前に眼球をとった後遺症でも残ったかと心配になりましたね。
まあ、普通に思い込みと幻覚のようでしたが。
いや、普通はこんな事になりませんか。
「ママ!。今日は運動を頑張ってしたんだよ。腕立て伏せてで、手がプルプルしちゃったけど、キチンと五十回やったの!」
「それは頑張ったわね、えらいえらい。」
頭を埋めて、撫でてと言いたいようにグリグリと私に押し付けてきます。しっかりと私は頭に手を回し、よしよしと撫でてあげました。
今の所使う予定はありませんが、肉が増えるのは良いことです。
ただ、結婚もしていないのにお母さんになるとは、人生どうなるか誰にも分かりませんね。
養子にもなっていないけど。
それにしても、この子って、こんなにも積極的な少女だったんですね。
いつも怯えたりして、まともに会話していなかったから分かりませんでした。
「それでママ、今日もするの…?」
そんな事を、上目遣いで問い掛けられます。
…これが計算ずくなら大したものですね。
「ええ、その為の貴方ですから。」
…とはいえ自分でも、相当酷い事を言ってる自覚はありますが、そこで頬を赤らめるのはおかしいと思いますよ?。
やっぱり、血の抜き過ぎで頭に欠陥でも生じましたか。
吸血鬼の医者なんて知らないので、人間の医者に連れて行かないといけないんですけどね。
そんな事を、おくびにも出さず話を続けます。
「今日は内臓を使ってソーセージを作りたいと思います。貴方も食べた事がありますよね?。」
彼女は黙って頷きます。
「腸を主に使うので、お腹を切開します。なのでかなりの痛みと喪失感が襲いますが、耐えられますか?」
今度は、なかなか首を縦に振りません。
「大丈夫。これまでやってきた貴方ならきっと耐えられますよ。」
そう安心させるように言い、頭とお腹を擦ってあげます。
それが効果あったのか、少し不安の色は残っていますが、顔色は大分良くなりました。
「それじゃあ、これから何をすればいいか分かるよね?。」
そんな私の質問に、
「はい!」
と、少し瞳を潤ませて返しました。
万が一にも暴れないように体を拘束すると、赤いペンでお腹の辺りに印をつけます。
自分の右手には、事前に煮沸消毒した銀のメスを用意して軽く構えます。
銀は吸血鬼の弱点なので、普通の武器より簡単に傷をつける事が出来るのです。
恐らく退魔の力でしょう。
少女は怖い物から目を逸らすが如く、固く瞼を閉ざしていました。
そんな少女の頭を、不安を無くすようにもう一度撫でてあげました。
「それじゃあ、歯を食いしばって頑張ってね。」
−ザシュ ジュ〜…
「ギィッ…!」
…教えた通り、ちゃんと耐えれているようです。
特に身じろぐ事もしない、偉いですね〜。
銀のメスは、少女の表面を焼き溶かすように裂いていきます。
血がかなり吹き出ますが、後で使うので取っておきます。
多少、雑にやったくらいでは死なないので、ドンドン奥へ進めていきます。
すると少し艶やな、長い腸が見えてきました。
今回はソーセージにするので、この小腸が必要です。
「変な感触、本で分かっていましたが。予想以上にグロテスクな外見ですね。」
そう言うと、直接腸を掴みズルっと一気に引き抜きます。
「ひゃっ!」
体の中身が外に出た衝撃で、少女が驚いた声をあげたようです。
腸は、使う分だけ外に出し、メスで切り取り元に戻します。
ふと、ついでとばかりにもう一度少女のお腹に手を突っ込むと、他の内臓も取り出します。
まずは肝臓、そして腎臓。
特に腎臓は傷つかないように、丁寧に取り出します。
大体の作業が終わると、糸で縫い付けて傷を繋げて完了です。
「ふ~、これで終わりっと。」
−パチン
鋏で糸を切り取ると、ようやく緊張の糸も解けました。
少女の内臓を取ったお腹は、いつもより凹んで見えます。
水で血などを洗い落とした後、彼女の頭を優しく撫でてあげます。
今日は内臓を取ったので、かなりの激痛が奔ったでしょうに、ちゃんと意識を保ち…
「それでいて、特に悲鳴をあげることも無く良く耐えました。」
「はい…。」
そんな私の言葉に安心したのか、静かに眠りに就きました。
…手術中は眠らなかったんですけどね。
まあ、再生するのに体力を使うんでしょう。明日には治ってると楽なんですけどね。
取り敢えずベットに運んであげましょうか。
…抱き上げた体が軽く感じるのは、気の所為ではありませんね。
一旦、分けます。