美冬編
【解説に繋がる裏ストーリー】
―事件の数日前―
「…あと3ヶ月の命です。」
突然の余命宣告。
この1年、ずっと体調が悪かった。
大学やサークル、バイトなどで忙しく、症状を軽視し続けた結果が、まさかの余命3ヶ月だなんて…。
その日はどうやって帰ったのかさえ記憶にない。
部屋でぼーっとしていると、夏樹からメールが届いた。
『体調どう?看病しに行こうか?前に俺ん所に来てくれたみたいにプリンとポカリを見舞いにしてさ(笑)』
夏樹の優しいメールがぼやけて見える。
私は涙を拭いながら返信メールを打った。
『大丈夫☆一応バイト休んだけど、熱とかないし(^-^)
あとゴメンけど、当分忙しくて会えない(泣)また連絡するね』
『そっか。会えないなら今言っとくけど俺、やっぱり医者はやめて漫画家目指すことにしたよ。おかげで親父と絶交中だけどなf^_^;』
『漫画家に進むんだ☆やっぱやりたいことしないとね☆じゃあ、今日はもう寝るよ。おやすみ』
いつも通りの優しい夏樹。
…夏樹とずっと一緒にいたいけど、これからがある夏樹には、きっと普通の彼女の方がいいよね…
一方的に別れれば、きっと私のことは忘れてくれるよね―…
それからの私はバイトを辞め、大学にも退学届けを出し、実家に帰ることに決めて引っ越しの準備を着々と進めていた。
あとは夏樹に言うだけ―…。
…そうだ、春香には伝えておこう。皆には内緒にしてたけど春香は親友だし、夏樹とも仲がいいからきっと夏樹のこと見守ってくれるよね…
そして、私は2人をあの公園に呼び出した―…
「…―俺は美冬のことが好きだよ?!」
嘘でも嫌いになったなんて言えない私の言葉は夏樹にはなかなか届かなかった。
…もうすぐ春香が来るわ。早く夏樹との話を終わらせなきゃ。
そして、私は人生最大の演技をした―…
でも、夏樹の目を見て演技をするなんて無理だった私は、夏樹に背を向け、溢れそうな涙を隠した。
そして―…
ドンッ!
「えっ―…」
ドサッ!!
…―なんだろ、体中が痛くて動かない…
薄れゆく意識の中で聞こえた叫ぶ声。
「…―公園です!!急いで下さい!!」
「…は、る…か…?」
「!!」
最後の力を振り絞って春香の声のする方を意識していたぼんやりとした視界の中で、春香の顔が憎悪に満ちていたなんて、今の私には到底気付けるはずもなかった―…
「…夏樹君をあんなに傷つけるなんて許さない…お前なんて死ねばいいのよ…!」
ガンッ!!
―完―