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彼女の色の独白  作者: 睦月紗江
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彼女の独白:人間は何色か

 私は直感的にこの人は何色っぽい、ということを感じることがあります。オーラのように色が見えるわけではなく、ただただ色が思い浮かぶのです。世間の感覚ではイメージカラーと言った方が近いかもしれません。しかし、実際のイメージカラーと違うのはその人が着ている服や見た目には関係がない事もあるというところです。水色の服をよく着る人に水色のイメージをそのまま感じることもあれば、赤色を良く着る人に青色のイメージを感じることもあります。そのため似合う色を教えてと言われても答えることはできません。私が感じている色がその人の着る服に合うかはわからないからです。では、これはいったい何なのでしょうか。私としては、そういった服のような外面的な色というよりは、その人の性格であったり、本人の持つ雰囲気であったりといった内面の色に近いように思います。そしてそれは本人が自分の事をどのように思っているかとは全く関係なくその色を感じるのです。おそらくこの感じている色は、その人自身がどういう人なのかというものではなく私がその人に対して思っているものが色として思い浮かんでいる気がします。もちろん相手に対して思っている性格や特徴は一つではないのですが、感じる色は主に一番最初に感じた正確に深くかかわっています。一つの曲を聴いて感じる色が人によって変わることがあるように、私のこの感覚と同じものを持っている人がいたとしても同じ人に同じ色を感じることはあまりないでしょう。まさしく十人十色です。そもそもこういった、人に対して共感覚のように色を見るでもなく、ただ漠然と色を感じ取るという人がどれほどいるのか、私には皆目見当がつきません。この感覚が世間一般的に果たして当たり前の物なのかそれとも少し変わったように見られるのか。どこかでそれを知りたいと思っています。

 同じ感覚を持つ人が一般的にもいるとして、他の人がどのような人にどのような色を見るかは知りませんが、私の感じる色は何となくそれぞれの色の系統が決まっています。優しい人には水色や緑色などの自然と聞いて思い浮かぶものに近い色。ミステリアスな人には紫や群青などの深い色。恐怖を感じる人には真っ赤な色。知的な人には黒色や灰色などの少し暗めの色。それぞれの色に少し他の色が混じって感じることも多いですが、主に感じる色はだいたいこんな感じです。この色の感覚に関しては特にきっかけがあったわけではありません。ふと気が付いた時には勝手に人に対して色を感じるようになっていたのです。常にそういう色を感じるというわけではなく、おおよそ知り合いに対してのみです。たまにテレビの中の有名人などにも感じますが基本的にはあまりありません。そしてこの感覚についてはっきりと意識をしだしたのは高校生の頃でしょうか。友達と似合う服の話をしていた時に気づいたのです。皆が言う似合う色と、私が思っている色が違うぞと。そして私のそれは着ている服と関係がない事も分かりました。それから知り合いごとに考えだした時に、これは外見ではなく私がそれぞれの人たちに対して感じている内面だと気づいたのです。それ以来イメージカラーのような話をする時はかなり意識をしてその人の普段の服装などを想いうかべて周りと合わせるようにしています。しかして、皆は人の内面の色はどう感じているのでしょうか。正直気になってはいるのですが他の人が人に対してそういう見方をするのかがわからず、万が一でもそれが否定的にとらえられたら自分のメンタルが持つ自信がなかったので今でも聞けずじまいです。

 私が不思議だなあと思った人がいます。感じた色に対してなのですが、それは先述したミステリアスな色という意味ではありません。色があるのはわかるのにはっきりとこの色、ということがわからなかったのです。その人は私の知り合いで一番優しい人です。漫画かアニメから出てきたんじゃないかと疑いたくなるくらいの善良な人で、しかもすごく賢い。優しいというなら水色、もしくは知的な色の黒などを感じるのではないかと思ったのだがなんだかそれも違う気がしました。不明な色というのは初めてで、さすがに本人に言いこそしなかったがことあるごとに観察をしたものです。今更ながらよくぞ怪しまれなかったと思います。観察してわかったことは、その人は私と真逆のような人だということです。運動以外は割と何でも卒なくこなすわりに天然であったり、それでいてどんな人にも好かれる性格という点は私にはないものでした。私がどんなに欲しくても手に入れられないものでもあります。きっとその人の色は私が想像もできない色をしているのでしょう。ここまできて私は気づきました。私がその人の色がわからないのは、私の反対側の人であるからではないかと。私が相手をどう思っているかによって感じている色が左右されるということは、少なからず相手の事を理解しなければいけません。全部理解できることはなくとも少しでも何か相手に自分が理解できるようなものがあれば、それをベースに色を思い浮かぶからです。しかし私と反対の位置にいるような人ならどうでしょう。私が欲してはいても手にできないものを実際に持っている人を理解するというのはかなり難しいものです。想像しかできないから。想像だけでその人を理解しようとするのは私にとって理解したとは言えません。だから色もはっきりとわからなかったわけです。私が知らない色を私が断定できるはずもないのですから。

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