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04 何年何月何日?

 500年経った現在の状況は一体どうなっているのか?それを知る為にエルフィアナことエルは、ライアン、アイリ、オリビエの三人から情報を引き出すために質問をすることにした。


「私の事を話す前に聞きたいことがある」


「聞きたいこと?何かな?答えられることなら何でも聞いてくれ」


 そう言って微笑むライアンにエルは聞きたいことを質問していく。


「まず聞きたいのは今何年の何月何日だ?」


「ん?日付かい?」


「そうだ」


 エルの最初の質問は日付。なぜ日付なのかと言うと、それは自分が封印から解かれたことに関係する。


 そもそも、魔王封印はエル、もといエルフィアナの命すら懸けた封印術式だ。本来ならば魔王を500年間幽世(かくりよ)に封印すると言ったもので、封印した本人、この場合ならエルフィアナだが、封印が解かれた時にエルフィアナが現世に戻ることは無い。


 しかし、現実にはこうして戻っている。まあ、少女の姿をしているが。


 だからこれが作為的なものでこうなったかもしれないと考え、まずは正常に術が効果を発揮したのかを確認する必要があった。そのための質問だ。


「今はジスタル歴436年の3月26日だけど。それがどうかしたのかい?」


「ジスタル歴、だと?」


 ライアンの答えにエルは首を傾げる。そんな歴は聞いたことがないと。


「質問を質問で返して悪いが、アスフェル歴ではないのか?」


「アスフェル歴?アスフェル歴は216年で終わってるよ。今はジスタル歴。おかしなことを聞くね、ははっ」


 そう言って笑うライアン。残り二人も釣られたように笑う。が、エルは笑えない。


(500年経っていない?では、封印術式は不完全だったと言う事か?)


 いや、そんなはずはないとエルはその考えを否定する。何故なら現に封印術式は確かに生きていると感じ取れるからだ。それは術者本人であるエルには確定している事実だ。


(ならばなぜ?やはり何者かが術に干渉したのか?)


 しかし、それもほぼ不可能な事だと言う事は術式を組み上げた本人であるエルが一番よく知っている。


 ならばなぜだと考えるが、情報が少なすぎて答えに辿り着けない。


「では、もう一つ。魔王はどうなっている?」


 エルは答えが出ない問題を一旦脇に置き、別の質問をぶつける。それは魔王に関して。


「魔王って、魔王ベストラーテの事かい?それはもちろん封印されてるよ」


 ライアンの答えはエルが既に分かっている答えだった。なのでエルは更に問いを重ねる。


「魔王が封印されたのはアスフェル歴163年。そして今はジスタル歴436。魔王が封印されてから489年の時が経った。魔王の封印期間は500年のはず。つまり、後11年で魔王の封印は解かれる。合っているか?」


「ああ、合っているよ。伝えられた話が正しければ、後11年で魔王は現世に復活する」


 そう言ったライアン含め、アイリとオリビエの三人は真剣な表情を浮かべる。


「魔王が復活すれば世界は滅びる。それをさせない為に、魔導学園の生徒である俺達は魔王を倒すためにこの学園に通っている、て言うのが世間一般の常識なんだが・・・・・もしかして、知らない?」


「え?あ、あぁ~それは・・・・・そ、そうだ!さっき伝えられた話と言ったな?他にも何か伝わっていることは無いか?例えば魔王の倒し方とか!」


 知らん!とは言えず、どうにか話題を逸らすことにするエル。


「魔王の倒し方、か・・・・・・残念だけど、伝わってないね」


「そうか・・・・・・」


 ライアンのその答えにエルの表情に陰が差す。


(・・・・・あいつ等でも、答えは見つからなかったか)


 そんな暗い表情を浮かべるエルに何かを感じ取ったのか、アイリがわざとらしく明るい声を上げる。


「で、でも噂だと七英雄が悪用されない様に、魔王を倒す術をどこかに隠したって話も聞くし、まだ希望はあるよ!」


「ああ~アレね。けどアレって単なる噂でしょ?信憑性なんて皆無じゃない」


「けど、煙が無いところにって言うじゃない?」


「まあ、七英雄が魔王を倒すための研究をしていたって話は聞くし、あながち噂話って訳でもないかもしれないけどさ、それなら隠す意味ある?悪用されない様にって言っても限度があるんじゃない?肝心な時に倒す方法が分からなかったら意味ないし」


「それは・・・・・そうかもしれないけど」


 などと二人でああだこうだと話している中で、エルは一つの聞きなれない単語に反応する。


「なあ、さっきから話に出ている七英雄とは何のことだ?」


 首を傾げて聞いてくるエルに、三人はとんでもないものを見るような眼で驚愕する。


『七英雄を知らないの!?』


 三人仲良く大声が合わさる。


「うるさい、大声を出すなっ」


 思わずと言った感じで両耳を押さえるエル。そんなエルにお構いなく三人はエルに詰め寄る。


「七英雄よ!?あの救世の七英雄!!」


「この世界を救うために立ち上がったあの英雄たちの事を知らないのかい!?」


「この大陸に住んでるなら誰でも知ってるあの七英雄だよ!?」


 三人による矢継ぎ早な質問に何処かうんざりしたような顔をしながらエルは答える。


「知らん!それと近いっ!!」


 三人を押し返しながらそう叫ぶエルに、三人は信じられないと言った様にエルを見る。


「嘘でしょ?七英雄を知らないとか、アンタどんな生活してんのよ」


「本当に知らないの?」


「何度も言わせるな、知らんもんは知らん」


 そう言って不貞腐れるエル。


「アンタどんな田舎に住んでたらそんな風になるのよ」


 呆れたと言わんばかりにため息をつくオリビエの肩をアイリが叩いて慰める。


 そこで何かを考えていたライアンが口を開いた。


「・・・・・・エル、君は一体何者なんだ?七英雄の事もだけど、さっきの質問の事も。それに・・・・どうして、つい最近地震の影響で発見された場所のあの洞窟に居たんだい?」


「地震?」


 ライアンの代わりにアイリが答える。


「あの洞窟は、つい一週間前に起きた地震の影響で崩れた山の中で見つかった洞窟なの」


 アイリの話を捕捉するように、今度はオリビエが口を開く。


「私達はギルドの掲示板に張られていた洞窟調査の依頼を引き受けてあの洞窟に行った。そしたらレッサーデーモンに襲われて、そして・・・・・アンタに会った」


「話を戻すけど、エル。君は何処から来たんだい?あんな格好で、しかも、レッサーデーモンを倒した魔術の腕前・・・・・君は一体何者なんだい?」


 ライアンの言葉にアイリとオリビエも真剣な瞳でエルを見る。見られているエル本人はそんな真剣な三人の視線に晒されながら内心大いに焦る。


(しまった・・・・つい要らん事まで口走ってしまったか?・・・・どうする?なんと言って誤魔化す?)


 特にこれと言って答えを用意していなかったエルはあれこれと考えていると、昔の記憶がふと頭を過った。


(今もあの場所があるかは分からないが、上手い話も浮かばんし・・・・・ええいっ、こうなればどうとでもなれ!)


 若干やけくそ気味に頭に浮かんだ話を三人に話す為、意を決してエルは口を開いた。

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