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プロローグ
魔導都市アルハザートから遥か南にある森林地帯を、一つの異形の影が沈みゆく太陽を背に空を飛んでいた。
体全体が黒く、背中には大きな翼、爪は鋭く、その口か鋭い牙をのぞかせている。
異形の正体はデーモン。レッサ―デーモンなどの尖兵などではない、正真正銘の魔族。
だが、そんなデーモンの体にはいくつもの傷があった。傷からは付けられたばかりなのか、傷口から血を流している。
「くそっ、まさか奴らがいるとはっ!」
どこかから逃げてきたのか、息も絶え絶えなデーモンは悪態をつく。
「だが、目的の物は回収できた」
デーモンが視線を自らの手に向ける。そこには一抱えほどの大きさの黒い匣があった。
その黒い匣には剣と槍が交錯した紋章が描かれていた。
「後はこれを持って帰投すれば・・・・・・・くく、くはははははははッ!!」
夜の帳が降りようとしている空に、デーモンの薄気味悪い声が木霊する。