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SNSに疲れた人に送るエッセイ.mp3

作者: さつまんま

 どこからとも無く涙が出たり、何処かへ思いの丈を叫びたくなる時がある。


 知らない自分が自分を殺してしまえと言う時さえもある。


 人間感情の出所なんか、案外分からないものだ。




 全てを知っているはずの自分が、得体の知れないものならば。


 怪訝な顔せず機嫌を測って、心の針が狂ったならば。


 ノーリスクなんて響きに騙され、底無し沼に嵌ったならば。


 答えの無い問題への答えを、現実には吐き出せないならば。



 もういっそ、別の世界に呑まれよう。



 そう思い、誰もが本音と共に、アイコンを押し込むのである。



 ♢



 何事も、中々思い通りにはいかない。


 現実逃避も当然、その中に含まれている。


 自分の世界は幾ばくも無く他人の空似へと自然と向かっていくのだ。



 何処も彼処も始まらないままの○×ゲームの盤面(##########)が浮いている。


 漫画、イラスト、新作ゲーム。それ自体は無機物だ。


 けれど、それを描いて、遊んで、写真を撮り、瓶詰めして、この電子の海に放り投げるのは生身の人間なのだ。



 青い鳥。虹色のカメラ。現実にありもしない物に縋っている。


 そう思った瞬間に、桃源郷は消えていくのだ。


 本当の自分が出せなくなったと最初に気付くのは、いつだって自分なのだ。




 だったら目を痛める前に、手を使って何か書こう。


 インクはどうやっても消せないのだし。


 バックスペースを長押ししたら心の叫びは丸々消えてしまうのだから、こっちの方がずっと良いじゃないか。


 ……この考え方は賢明なように見えて、その実暗愚である。




 別の物に置き換えてみればよく分かるはずだ。



 文字通り、吐いて(・・・)しまったとしよう。


 それが道端ならば、誰もが身を引くが、仕事としてそれを掃除する人がいるだろう。


 それが病院ならば、看護師が駆けつけ、医者に薬を出すよう言ってくれるだろう。


 それが教室ならば、悲鳴は上がれども、友人だったり教師だったり、誰かしら慰めてくれる人がいるだろう。



 一人暮らしの部屋ならば、どうだ。



 面倒な後処理をしてくれる人は居ない。


 即座に再発防止の処置をしてくれる人も居ない。


 悲しみを薄れさせてくれる人も居ない。



 ♢



 そういうことだ。全部一人でやらなければならないし、一人じゃ出来ないこともある。



『お悩み相談所』も、『対鬱療法』も、『前向きな思考回路』も無いのなら、きついのは当たり前である。


 紙に書いてストレスを発散する作業を続けるのは、多くの人にとっては至難の技だろう。




 そもそも、スマホをずっと持っていた人間が、今更自分の感情をペンで書き出せるだろうか。


 腱鞘炎で痛む手首に余計な負担をかけたくないのでは?


 摩擦熱で消えるインクなら消してしまえるし、そんな事しなくてもビリビリに破いてゴミ箱に捨てて仕舞える。


 それならネットで下書きを消すのと一体何の違いがある?




 じゃあ、どうすれば良いんだよ。




 ……夢に逃げては如何だろうか?




 適度じゃなくていい。


 昼夜逆転するほど眠りこけろ。




 そして、現実に帰ってくるのだ。




 日を浴びろ。


 大きくあくびをし、涙を流せ。




 ポイントは、物理的に現実逃避することである。


 頭を使って逃げるんじゃなくて、頭を休めて逃げるのだ。




 ……実は、もっと良い方法がある。




 それは、アナログ・デジタル関係ない。



 そもそも文字に起こさなくて良いのだ。



 その前提を覆せ。



 日本では老若男女、誰もが発話することができるのだから。



 最悪、相手すら要らない。



 確かに『自分』が聞いているから。



 そうだ。



 得体の知れない『そいつ』が聞いている。







 さあ、声に出せ。








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