第2話 さっきの魔物なんなの?てか空飛ぶの凄い
カナメは背中から振り下ろされないよう必死にしがみつく。
アギトはガントレットから風を出し、高く高く飛びたつ。
あっという間に森の木々の高さを超え、カナメは森の全体像と遠くに見える街を見つけることができた。
アギトは体の向きを空中で変え、街の方向へ一気に進む。
カナメは目を閉じ、必死にしがみつくだけだった。
「おい。カナメ!いい加減起きろ!」
アギトに頬を軽く叩かれて、目をあけると、
彼の手にガントレットは無かった。
周辺を見渡すとヨーロッパのような綺麗な街並みがそこにあった。
僕は空を飛んでいる際中に気を失ったみたいだった。情けない…
「綺麗な街だなぁ…なんていう街なんですか?」
カナメはアギトに問う。
「この街はアルード。俺は最近この街で仕事をしてる。とりあえずカナメ、お前を知り合いの医者んとこ連れてくからな。記憶、無いんだろ?」
そう言いながらアギトはカナメの肩をポンポンっと叩いた。
「ありがとうございます。お願いします。」
カナメはそう言うと少しうつむいた。
あぁ、人に親切にされたのなんて何年ぶりだろう。
2人は医者に会うため、歩き出す。
聞いたことも、見たこともない街だ。
歩きながらカナメは気になっていることを聞いてみた。
「あの悪魔…魔物っていうんですか?あと…
その…、風を操れるんですか?ガントレット。今はどこに?」
アギトはその質問に驚愕した。
「お前、契約も知らないのか!?」
あまりの驚きっぷりにカナメは困惑する。
「けっ、契約?一体なにと…?」
「着いたぞ。まぁ…ジジィも交えて、話してやるよ。」
真っ赤な十字が描かれたドアを開けると、そこには
簡易的なシングルベッドが置いてある6畳程の小さな部屋だった。
「ここが、病院?」
カナメは疑問を口に出す。
部屋の奥のドアが開き立派な白髭を蓄えた老人が出てきた。
「アギト!この前の治療代は持ってきたのか?
…ん?そいつは誰だい?」
老人は威勢よくアギトに詰め寄ったが、カナメの存在に気づき、少し距離を取る。
「わりぃわりぃ。魔物狩りの報酬、まだ貰ってないのよ。それよりこいつ診てくれないか?記憶が無いんだよ。」
アギトは頭をポリポリ掻きながら、老人をなだめるように話す。
「こいつはカナメっていう名前らしいんだが、魔物の事も知らないし契約についても知らないみたいなんだよね。」
アギト君は僕のことを親指で指差しながら老人に話している。
「ったく、いつになったら治療代を払うんじゃ…
しかしそいつは珍しいのぉ。一度診せてもらおうかの。」
そう言うと老人は腕まくりをした。
そしてカナメは驚く。
老人の両腕には不思議な模様のタトゥーがビッシリと彫られていた。
「出でよ!スレイ!」
老人がそう叫ぶとタトゥーがうっすらと青白く発光し
彼の右手に白銀のタクトが現れた。
「スレイよ、彼の頭の状態を私に見せておくれ。」
そういうと老人は白銀のタクトをカナメの額に当てた。
静かに老人が口を開く。
「アギトよ、この者と何処で出会った?」
アギトは街の外の森で黒い光を発見しその方向に歩いて行くとカナメを見つけた事を話した。
老人は納得した顔をし、また静かに口を開く
「アギトよ。この者は記憶を無くしてはいない。そしてこの世界の人間ではない。信じがたいがのぉ…」
カナメはこの世界に来る前の事を細かく話した。
コンビニやアルバイト、自転車やトラックといった言葉は理解してもらえなかったけど気付いたら森の中に居たところまで、全てを伝えた。
アギトは眉をひそめながら、カナメに話しかける。
「あー…まだちょっと理解ができないんだが、カナメの居た世界と俺たちの居るこの世界ってのは全く違うわけだな?…んーむ。」
アギトは腕を組みながら考え込む。
カナメは老人とアギトに質問をする
「その…お医者さんのタクトとかアギト君のガントレットって超能力みたいなものですか?風を出したり…」
アギトと老人は顔を見合わせた。
「はぁ…これ、何から説明したらいいんだ?」